■注目のBEVが抱えるいくつかの大きな懸念
そして今回、三菱がPHEVを開発し、投入している事にはBEVが抱えるいくつかの懸念事項が解決されていないからである。
まず発電インフラについてであるが、火力発電が主流である日本においては、CO2の排出がクルマ本体からか、発電所からか、の違いだけともいえる。当然事ながらBEVは「CO2を一切出さないで走れる」ということにはならない。
今後は再生可能エネルギーの技術的開発が進むことによって、火力に頼る発電割合は減ることも確かだ。
しかし、今世界中が当面の目標としてあげている「アジェンタ2030」までに火力に取って代わることは、まず考えられない。再生可能エネルギーの不安定さやコスト面での高さなど、通常の生活のすべてをまかせるところまで至っていないというのが現状だろう。もちろん原発問題はつねに付いて回ることになる。
さらに充電インフラについてもBEVには問題がある。最大の問題点は充電時間であり、1充電あたり30分というルールの急速充電器では、BEVを満充電とすることは出来ない。
さらに充電現場でのマナーの問題によるユーザー同士の軋轢は、実際に経験したこともあるが、現状のインフラでは、そう簡単には解決できないかもしれない。
■内燃機関+バッテリーの強み
その点、PHEVという選択は現状に即した物だと思う。最近、冬期間に起こる雪道での立ち往生などで、BEVの充電切れによる無力化などが問題になったことも記憶に新しい。そうした点からもガス欠になってもガソリン車同様にジェリ缶から給油するだけで息を吹き返すのだから、ある種の頼もしさを感じる。
BEV至上主義の方は反論もあるだろうが、現在、もっとも良識的な選択はどこにあるかを冷静に考えれば「BEV=絶対正義」というロジックにはならないはずである。
単純にEVを増やせばいいということではなく、発電を含めたトータルでの政策を切に願っている。言い訳と取られてもいいがBEVを否定しているわけではないのだ。
出来ることなら発電や充電、さらにはバッテリーの廃棄問題やソーラーパネルの耐用年数問題などなど、あらゆるネガティブ要素が少しでも解決されることを願っている。
さらに言えば、アウトランダーPHEVを製造していく三菱だってBEVを諦めたわけではない。アライアンスを組む日産との共同開発によって22年には、ガソリン車に近い価格帯の軽自動車規格のEVを市場投入するという報道もある。
1充電あたりの航続距離を200km程度に抑えることでバッテリーの重量を減らし、コストを出来る限り圧縮したという。「日本はBEVの世界でもガラパゴス化する」という懸念の声も聞こえてくるが、それほど日本車メーカーは弱体化しているとは思えない。
日本は「機を見るに敏(きをみるにびん)」に長けているし、大きなうねりに対応するだけの技術的蓄積もある、と信じたい。
私たちはこれまで色々と目撃してきた。中国で補助金目当ての消費されたEVが用済みとなって新たな環境問題を引き起こしていること。クリーンディーゼルの失敗から一気にEV化へと猪突邁進しているかのような欧州勢への懸念などなど。
そんな状況をじっくり探りながら“最善の今と最良の近未来”に向かって歩んでいる日本車勢を、取りあえずは見守りたいのである。その先にはさらなる鷹来目標の「2050年のカーボンニュートラル」が待っているからこそ、今一度冷静なる議論をして欲しいと思っている。
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