■両社のノウハウの積み重ねが反映されたエボX&GRBインプWRX
それまで電子制御の進化に力を注いできたランエボ(三菱)は、エボ9MRでダンパーやバネ、車高まで手を加え、文字通りしなやかな味付けにリセッティング。ドライバーの操縦感覚に寄り添うようなセッティングに変わりました。
その結果微細な荷重移動の変化がクルマの操縦性に反映されるようになり、しなやかでコントローラブルなのにトラクションが良くかかる足回りに仕上がったのでした。
そして2007年三菱はランエボXを発表し、スバルはGRBインプレッサWRXにモデルチェンジします。
じつは三菱は2005年にWRCから撤退していたこともあって筆者は、Xはランエボ人気の余勢を駆って作ったのではないか、と考えていました。ランエボとともに進化してきた名機4G63型エンジンが新開発の4B11型に変わり、タービンもチタンハウジングの高価なターボからコンベンショナルなものに変わりました。
5速MTは残ったものの、6速MTに代り6速DCTのツインクラッチSSTが搭載されるなど、コンペティション臭がだいぶ薄れたように見えたからです。
ところがフタを開けてみたら、さらに進化した4輪駆動制御理論であるS-AWCを搭載し、しかもエボ9MRで実感した4輪の接地性の良さが新しいシャシーで見事に実現していたのです。
WRCに勝つため、ライバルWRXに勝つためになりふりかまわず性能アップを繰り返してきたランエボではなくなっていましたが、その代わり4WD制御に関しては、間違いなく当時世界一の制御技術と制御ロジックを持っていたのがランエボXだったといっていいでしょう。
操縦性はエボ9MRでドライバー寄りの進化を見せたのに、Xになるとちょっと窮屈で、自由自在に振り回して遊ぶのはちょっと苦手でした。
グリップからちょっとタイヤが滑るくらいの領域、感覚的にはグリップの範囲内でクルマなりに走らせてやると、エボ9MRの1割くらい速いスピードで旋回できてしまうんです。それもさらりと曲がってくれる。
このさらりとがポイントなんです。クルマの動きに逆らって強引に振り回そうとすると思うように走らないのですが、クルマなりに走ると不思議なくらい違和感なく速く走れてしまうのです。
秘密はS-AWCの制御にありました。横滑り防止装置のシステムを使い、減速+安定ではなく、旋回性能のアシストに使いAYC、ACDと統合制御することによって曲がる性能を1ランク高いところへ押し上げていたのです。文句なしに速く、オンロード4WDスポーツのパフォーマンスの高さを実感できるクルマでした。
■勝つために選んだGRBインプのハッチバックデザイン
WRXは、クルマが熟成し完成度を高めていく一方、WRCでは勝てなくなっていました。リヤに重量物のあるセダンタイプのボディでは勝てなくなっていたのです。そして勝てるパッケージングとしてスバルが選択したのがハッチバックデザインのGRBでした。
リヤサスペンションもストラットからダブルウイッシュボーンに変更され、よりしなやかな動きを実現しました。サスペンションセッティングには、当時スバルのエースドライバーだったペター・ソルベルクも積極的に(開発に)関わっていたと言ってました(本人談)。
そんな矢先、GRBが登場したその暮れに、スバルは2008年シーズンを以てWRCから撤退することを発表します。そのためGRBは結果を残すことはできなかったのですが、少なくともGRBインプレッサWRXは、WRCで再び世界を取りに行くために作られたクルマであったことは間違いありません。
市販モデルでは、前後駆動量配分を41対59とGDBのF形のままとし、電子制御DCCD+機械式LSD御を進化させ、DCCDのオートモードに「プラス」と「マイナス」モードを追加を追加します。
リヤサスペンションをダウブルウイッシュボーンにしてリヤサスの動きを滑らかにできたことで、DCCDによるトラクション性能が1ランクアップし、しかも自由自在なコントロール性、振り回しやすさも向上していました。
特徴的なのは旋回加速時の曲がりやすさです。特に滑りやすい路面や雪道で強めの旋回加速を行ったときのライントレース性の高さは抜群でした。
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