■自然吸気のスムーズな吹け上がりとサウンドも魅力
ところが、そんな極めて完成度の高いターボエンジンを積んでもなお、タイプRは自然吸気のほうががよかったという声が根強くある。それほどまでに印象的だったということだ。
自然吸気のタイプRの中でももっとも印象深いのは、シビックよりも一足先にタイプRの先陣を切って登場したDC2型インテグラタイプRの95スペックだ。それ以外のタイプRももちろんよくできているのは周知のとおりだが、同じB18Cでも唯一、手組みされた95スペックの初期モデルだけは別物といってよい。
ポート研磨および面研、フルバランス取りを行なったというだけあって、吹け上がりのスムーズさと美しい音色が際立っていた。その痛快なエンジンフィールが多くのファンを魅了したのはよくわかる。
最高出力200ps/8000rpm、最大トルク18.5kgm/7500rpmというスペックは以降のDC2インテRと同一か同等だが、いずれにしても自然吸気でリッターあたり約111psを実現したというのは相当なことだ。
かたや弟分のシビックタイプRは2年後の97年に初代EK9型が登場した。185psの最高出力を、B18Cよりも200rpm高い8200rpmで発生するB16B型を搭載し、リッターあたり出力も約115psとやや上回っていた。
続く2代目のDC5インテグラタイプRではi-VTECを備えた2.0リッターのK20Aに換装。220psとなり、このとき初めて6速MTが搭載された。一方で、イギリス生産のEP3型2代目シビックRは排気系の違いにより5ps低い215psとなった。
初であり唯一となるセダンボディの与えられた3代目のFD2型シビックタイプRでは、K20Aは225psとなった。世代としては同時期となるFN2型タイプRユーロには、201psとやや控えめなスペックとなったK20Zが搭載され、その次の世代から前述のとおりターボが搭載されることになる。
■ホンダがターボを選択した理由
あれほどVTECの高回転型の自然吸気エンジンでならしたホンダが、なぜターボを選択したのか、それはいずれにしても「極める」ためだ。
自然吸気だろうとターボだろうと、とにかくホンダがこだわっているのは、とにかく動力性能においてライバルを圧倒的に上回り、マウントを取ることだ。そのためのVTECであり、さらにはVTEC+ターボである。
近年はターボなしでの高性能エンジンというのは考えられない。時代に即したモノの進化のあり方としては、ごく自然の成り行きといえる。限られたリソースの中で、ニュルブルクリンクや鈴鹿など特定のコースをいかに速く走れるかを目指すとなった場合に、ターボの力をフルに活用しようと考えるのは当然だ。
2022年に登場する次期シビックタイプRも、おそらく相当なパフォーマンスを発揮するに違いない。ただし、与えたインパクトの大きさでは、上でも述べたとおりの、タイプR伝説を生み出した張本人といえるDC2型インテグラタイプRの95スペックの初期型を超えるのは相当に難しいことと思う。
そもそも超えたところでホンダ自身にもあまりメリットはないように思うが、車種整理が報じられ、明るいニュースの乏しいいまのホンダにとって、イメージリーダー的な役目をはたすタイプRには、乗り手の心に強く訴えかける、ホンダらしいものを我々としては期待せずにいられない。
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