新型86/BRZはトヨタ&スバル連携の最高傑作なんじゃなかろうか!! 

■トヨタはGRスープラで共同開発の自信を深めた

 それから9年。再び86/BRZは共同開発で2代目が誕生しました。

再び共同開発で誕生した2代目となる新型GR86・BRZ。袖ヶ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗会は自動車ジャーナリストたちにセンセーショナルを巻き起こした
再び共同開発で誕生した2代目となる新型GR86・BRZ。袖ヶ浦フォレストレースウェイでのプロトタイプ試乗会は自動車ジャーナリストたちにセンセーショナルを巻き起こした

 この9年間でトヨタにはひとつ重要な経験をしています。それはBMWとの共同開発によってスープラ/Z4を作り上げたことです。よく知られているように、ホイールベースとトレッドのアスペクトレシオから2メーカーが意見を交わしながら決定しました。

BMWとの共同開発で誕生したGRスープラ。採算を取るのが難しいスポーツカーを1社でつくるのは難しいので直6エンジンをもつBMWと組んで開発された
BMWとの共同開発で誕生したGRスープラ。採算を取るのが難しいスポーツカーを1社でつくるのは難しいので直6エンジンをもつBMWと組んで開発された

 アスペクトレシオは、クルマの基本的な素性を決定するもの凄く重要な要件で、これまでBMWでもやったことのないアスペクトレシオ≒トレッド:ホイールベース比を選択し、スポーツカーを作り上げたことで、トヨタのエンジニアはとても自信を持ったのではないかと思います。

 初代86/BRZ共同開発時には、楽しいクルマの楽しさの本質がどこにあるのか、ごく一部のエンジニアはそのイメージを持っていたのかもしれませんが、少なくとも共有はできていなかったと思います。

 けれども、86を年改しながら進化させていく経験を経て、そしてスープラを開発していく過程で「楽しい」のニュアンスが共通認識としてつくられてきたのではないかと思います。

 新型GR86は発売時期がBRZよりも2カ月ほど遅れるということです。じつはそれこそがトヨタのスポーツカーづくりに対する自信の表れなのではないかと思うわけです。

■GR86のサスセッティングは不完全!?

 2代目はひとつのボディで作っていこうということが決まっていました。これにはさまざまな要因がありますが無視できないのが収益性です。細部に違いが生じればその分生産コストはかさみます。

 その結果、新型GR86/BRZのエクステリアは、フロントバンパー(エアインテーク)の形状とエンブレム以外すべて同じ。エクステリアデザインはトヨタ主導で行っていたのでどうしてもGR顔になってしまう、ということでフロントマスクのデザインのみBRZはデザインを変更したのだそうです。

トヨタ主導でデザインされたため、新型BRZはGR86のフロントマスクを変更して登場した。当初は同じデザインの予定だったがここはスバルがこだわった
トヨタ主導でデザインされたため、新型BRZはGR86のフロントマスクを変更して登場した。当初は同じデザインの予定だったがここはスバルがこだわった

 当然足回りもできるかぎり共通にする予定だったのですが、シャシーはスバルが主導して開発していたので、仕上げていくほどにスバルテイストが強くなってきます。

 ちょうどスバルはSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を発表していて、その考え方や部分的な技術がGR86/BRZにも反映されていたからです。

 そんなこともあって、土壇場でトヨタは大胆に足回りの仕様変更を行うことを決めます。この仕様変更が、発売時期が遅れる大きな理由だったのだろうと考えるのが自然です。

新型GR86は発売時期がBRZよりも2カ月ほど遅れるが、それは足回りを専用セッティングするためかもしれない・・・・
新型GR86は発売時期がBRZよりも2カ月ほど遅れるが、それは足回りを専用セッティングするためかもしれない・・・・

 そう考えてみると、プロトタイプ試乗会でBRZのセッティングの完成度の高さに対して、GR86はどこか探っているような印象を受けたサスセッティングの理由がうなずけます。

 一方、スバルはこれまで世界に名だたるスポーツ4WD=WRXを世に出しながらFR車の開発の経験がなく(ごく初期にプロトタイプを開発)、クルマ作りに対する世間の評価は高かったものの、FRスポーツに対する知見はほぼゼロといっていいものでした。

 86/BRZを開発し、しかも他メーカーのセッティングや味付けのノウハウまで学習できたわけですから、スバルにとってこれほど有意義なクルマ開発はなかっただろう思います。

 その結果SGPの技術を取り入れながら新型GR86/BRZの開発を進めていくことになります。当然86じゃなくBRZの味付けが強くなっていることはスバルのエンジニアはわかっていたはずです。

 それでも軽量化によりメリットの大きなフロントハブキャリアのアルミ化や、フロント中空スタビの採用、リアサブフレームにブレードを追加したことによるスタビの作動ポイントの変更など、行っていったわけです。

 このあたりの方法論は、インプレッサWRX STIで、年改を繰り返しながら走りの性能を進化させていったのと共通しています。

 話が微細なところに入り込んでしまいましたが、トヨタがGR86の開発に待ったをかけ、細部を変更しようと決めたのは、GR86らしい走りを作り出すためだったのだろうと思われます。

 一見するとトヨタが強権発動しているように見えなくもありませんが、両社の関係を見ると(表面的にですが)関係性は良好で、お互いを尊重しているからこそ、採算性を考えて極力クルマの変更を行わないという約束があったにもかかわらず、発売時期を違えても変更を許容しているのだろうと思います。

次ページは : ■今後も期待できるトヨタとスバルの共同開発

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