日本で売られているのに、日本市場にはそぐわないクルマ、というのはいくつかある。同じカテゴリのクルマと比較して、やたら大きかったり、必要以上にパワフルだったり。
「かっこいいけど、あとちょっと小さかったらなぁ」と思うこともあるだろう。なぜそのようなことが起きるのか。そこには、各メーカーの事情と苦悩がある。
文/吉川賢一、写真/TOYOTA、HONDA
【画像ギャラリー】自動車の作り手から見た事情と苦悩……『ユーザー目線のクルマ作り』はどの程度まで可能なのか?
■ペルソナ設定こそが、お客様目線のクルマづくりの第一歩
一般的に、新車開発の際は、「ペルソナ(ターゲットユーザーの像)」を立てて、その人が買いたくなるような商品を考え、車両のコンセプトを決めていく。
そのクルマを、誰が、いつ、どれくらいの頻度で、何に使うのか。予算はどのくらいか。ペルソナをしっかりつくることで、顧客の方を向いた商品づくりをしやすくなる。逆にこれがなければ、顧客が何を求めるかをイメージしづらく、中途半端なクルマなってしまうのだ。
ペルソナは、顧客や販売店へのリサーチを念入りに行い、意見や要望を集めたうえで決めていく。例えば、北米でよく売れてきたSUVの後継車の場合、そのクルマに乗っているであろうユーザーをペルソナにする。
具体的には、「年収8万ドルの40代男性のジェームス、身長が180cm、家族は4人いて、週末の早朝は海まで一人でサーフィンに出かける。SUVが好きで、運転することも大好き。」といった具合だ。
こうなると、ジェームスが満足いく新型SUVは、180cmの大柄な体格でも余裕もって運転が出来ること、家族が乗るので後席は広いこと、サーフボードが車内に詰めること、などだ。ペルソナを設定することで、具体的な構成に落とし込むことができ、設計チームは動くことができる。
たとえ、そのペルソナに合致するひとがごくわずかであっても、その周辺の人、そしてそのペルソナに憧れる人はたくさんいる。
そうした人たちに向けて、徹底的に魅力的なクルマづくりをすることで、そのクルマは他とは違った魅力を放つことができる。逆にそうでなければ、お客様目線のクルマづくりはできない。
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