■購入してから気付く不満も
日本では3車種しかSUVをラインナップしていない日産でも、アメリカでは7車種ラインナップしている。しかし、トヨタのアメリカでのSUVラインナップは顔ぶれこそ多少変わるものの、日本市場と品ぞろえはほぼ変わらないので、トヨタがとくにSUVのラインナップが多いというわけでもない。
ただし、縮小が顕著な新車販売市場ともいわれる日本で隙間なくラインナップを構築しているところが注目されているのである。
トヨタの今日でのSUVラインナップ充実のはじまりを2016年として、時系列で見ていくことにする。2016年にC-HRがデビューすると爆発的な大ヒットとなった。それもそのはず、当時C-HRが登場するまで、トヨタでクロスオーバーSUVといえばハリアー(先代モデル)ぐらいしかなかった。
しかもハリアーはトヨペット店の専売となっていた。そのようななか、SUVがジワジワと“きている”のを感じていたトヨタ系ディーラー(とくにトヨペット店以外の)セールスマンはC-HRの発売を心待ちにしていて、発売後はとにかく売りまくった。
当時は3代目プリウスが爆発的にヒットしたことで、3代目プリウスユーザーが多くいたのだが、4代目プリウスが“アクが強い”とのことで、乗り換えるユーザーも少なめで、そんな3代目プリウスユーザーの受け皿としてもC-HRの販売促進を行った。
しかし、C-HRは極端なクーペSUVスタイルを採用していたので、後席や荷室が狭く実用性に欠けていた。しかし、売る側だけでなく、買う側も勢いで買ってしまったという人も多く、納車後に後席や荷室の狭さに不満を持つユーザーも目立っていた。
売る側のセールスマンも「なんか無理に売ってしまったようで」と後悔する商談も多かったそうだ。
そんななか2019年春に現行RAV4が国内デビューする。販売ターゲットはヴァンガードやクルーガーなど絶版SUVユーザーとなっていたが、セールスマンのなかには、自分が管理するC-HRに乗っているお客のなかで、不満を持つひとにRAV4への乗り換えを積極的に勧め、実際乗り換えるひとが多かったそうだ。
■他車からSUVに流れることも
2019年11月にダイハツからのOEM(相手先ブランド供給モデル)となる、ライズが発売となる。
トヨタ以外も含むコンパクトカークラス全体では、オーソドックスなハッチバックスタイルのモデルが目立っていた。
そんななか、すでにスズキでライズと同クラスのコンパクトクロスオーバーSUVとなるクロスビーが販売されていたものの、“トヨタブランドのコンパクトクロスオーバーSUV”ということで、トヨタでいえばパッソあたりを検討していたダウンサイザー(大きなクルマからコンパクトカーや軽自動車に乗り換えるひと)がライズに飛びつき大ヒットとなった。
5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVとなり、1Lエンジンを搭載していたので、自動車税も安く、フル装備で購入しても支払総額はたかがしれているので、オプションテンコ盛りの“贅沢仕様”にして購入するひとも目立っていた。
ただし、「ハイブリッドはないんだね」と購入を諦めるひとや、「ハイブリッドがなくてもいいか」と購入するひとも目立っていたとのこと。
しかし、デビュー以降ヒットが続いていたライズの前に、2020年8月末にヤリスクロスがデビューする。ライズとは異なり3ナンバーサイズとなるのだが、ハイブリッドがラインナップされているのが最大のトピックであった。
セールスマンは「ハインブリッドがない」としてライズの購入を諦めていたひとや、ハイブリッドがないもののライズを購入して乗っているひとなどに、「ヤリスクロスはハイブリッドがありますよ」と勧めたそうである。そして、実際ヤリスクロスを購入したひとも多かった。
ここまで2016年から時系列でトヨタのSUVの様子を見てきた。
C-HRからRAV4へ、ライズからヤリスクロスへと、緻密なラインナップを構築していく過程では、近い車格で「新型車が出ましたよ」と、新車購入後短期間といったお客への乗り換えを促進しやすく、それが販売実績の上乗せに大きく貢献することとなるのである。
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