厳しい排ガス規制の中、ファンの要望にバシッと応えた
R30型スカイラインが登場した1981年といえば、70年代前半まで続いた高度経済成長期も終わりをみせ、産業公害と環境汚染というツケの顕在化、第1次石油危機の勃発、さらには、70年代後半の円相場の急騰、といったネガティブな要素がいくつも重なり、日本経済の先行きと自動車産業に暗い影を落としていた時代だった。
しかし、スペシャルティカー人気やスーパーカーブームの名残がある時代であったことから、R30型スカイラインは、決して「時代錯誤」なモデルではなく、むしろクルマファン待望の一台として受け入れられていた。
先ほども触れたように、年々厳しくなる排ガス規制とユーザーの望む動力性能のギャップを、伝統ある「スカイライン」というモデルと日産の技術がどこまで埋めてくれるのかということにファンの不安と期待が高まっていたわけだが、4バルブDOHCエンジン搭載の「2000RS」という答えがスパッと与えられたことで、R30型はここまで人気となったのだろう。
そしてシルエットフォーミュラでの活躍、「2000ターボRS」の追加、「鉄仮面」の登場、インタークーラー搭載というパズルのピースが、「やっぱり走りのスカイラインだ!」と歓喜する日産ファンの前で次々にバシッとはまっていったのだ。
今改めて「鉄仮面」の姿を見ると、グリルレスのデザインに薄型のヘッドライトという斬新なデザインは、すっきりとしたシンプルな印象を与えながらも、GTカーとしてのただならぬオーラと威厳を感じさせる。穏やかな表情と、その奥に収まる歴代最強のパワーユニットとのギャップがさらに高揚感を掻き立てるのだが、排ガス規制で骨抜きにされてしまった動力性能を、見事な技術で挽回した日産の誇らしげな表情にも見える。
スカイライン2000ターボRSは、それまでで最強のパワーユニットを搭載していたにもかかわらず、「GT-R」の称号は与えられなかった。理由は「4気筒だから」だそうだが、GT-Rではないことがかえってスカイラインというモデルの価値を高めた。スカイラインは高性能を長距離でゆったりと、時には刺激的に楽しむ大人のツーリングカーであるということを、見事に具現化したクルマだったと思う。
このコンセプトは現行型の13代目スカイラインにも通じている。電動化の波が押し寄せていても、セダンが不人気であっても、スカイラインはクルマの楽しさを教えてくれる憧れの存在であり続けて欲しい。
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