■空力を味方につけた後期型「R」
1995年秋、タイプRは販売を終了したが、その後もスパルタンなNSXを望む声はやまない。特に1997年に5速MTを進化させた6速MT車を送り込み、排気量を3179ccに拡大してからはタイプRの再販を望む声が高まっている。
ホンダはタイプSでファンを引き止めていたが、2001年12月に初めてフェイスリフトを断行。アイコンのひとつだったリトラクタブルヘッドライトを廃し、固定式のディスチャージヘッドライトを採用した。
その半年後の2002年5月、型式「NA2」を名乗る第2世代のタイプR、「NSX-R」を発売に移している。サーキットで圧倒的な速さを実現するために、エアロダイナミクスの改善に力を注ぎ、フロントをマイナスリフトに、リアはスポイラーでバランスを取った。
特別装備は、エアアウトレットダクト付きカーボンボンネットフードやフィン付きフロントアンダーカバー、リアディフューザー、カーボンリアスポイラーなどだ。軽量化にも寄与するエアロパーツを採用することにより、ストリートモデルとしては珍しいマイナスリフトを実現した。
サスペンションは、硬めのスプリングに減衰力を高めたダンパーを組み合わせ、スタビライザーとタワーバーも変更している。ロール剛性バランスを考えた味付けとし、タイトコーナーでの旋回性能を高めた。
タイヤは専用開発のBS製ポテンザRE070だ。フロントは215/40R17、リアは255/40R17で、アルミホイールはBBS製の鍛造品である。ブレーキはスリット入り16インチブレーキディスクローターと強化ブレーキパッド、LSDは専用設計のプリロードタイプだ。
20年も前のモデルだが、走りのメカニズムは現代のスーパースポーツと大きく変わるところはない。3Lエンジン時代の前期型タイプRと比べると走りのポテンシャルは大きく引き上げられている。
ハンドリングの洗練度は高く、狙ったラインに無理なく乗せることが可能だ。前期型ではアンダーステアが強く、保舵力も必要とした。これに対し後期型はニュートラルステアにしつけられ、高速域でも操舵フィールは落ち着いているし、クルマの空力バランスもいいから限界域でのコントロール性も大きく向上した。
ピストンとコンロッドのバランス取りを行い、クランクシャフトやクランクケースも回転バランス取りを行った3.2LのC32B型V型6気筒DOHC・VTECも軽やかに高回転まで回る。
6速MTも軽いシフトタッチで、操作しやすい。ファイナルレシオのローレシオ化によって加速性能も向上させた。NSX-Rは2005年7月に生産を終えている。
■現行NSXにもタイプRを設定して欲しい
今もファンから語り継がれている名車中の名スポーツカーが2台のタイプRだ。どちらもホンダイズムが息づき、ワクワクする走りを楽しませてくれた。
現行のNSXも2022年に生産を終了する。その前に、ファイナルエディションとして究極の走りを掲げた「タイプR」を送り出してほしいものだ。ホンダファンならずともタイプRを待ち望んでいるはずである。
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