NSXよ永遠なれ! セナとバブルが生んだ超名車の栄枯盛衰

■やはり『きっかけはフジテレビ』!? F1ブームとNSX

セナがドライブしていた第2期ホンダから、現在で第4期となるホンダF1。惜しくも今季限りでの撤退が発表されている
セナがドライブしていた第2期ホンダから、現在で第4期となるホンダF1。惜しくも今季限りでの撤退が発表されている

 きっかけは1983年のホンダのF1カムバックだったが、その速さがトップクラスになり鈴鹿にF1がやってくるのが87年。時まさにバブルの上昇期だから、これがウケないはずがない。

 いち早くそこに目をつけて、TBSから中継権をブン奪ったフジテレビの嗅覚はさすが。それまで、日本ではモータースポーツは日陰者的な扱いだったのに、ここで初めてメディア主導でモータースポーツを盛り上げるという画期的な時代が到来したのだった。

 その目論見はズバリ的中。翌88年はセナがマクラーレンに移籍し、僚友プロストとともに16戦15勝の快進撃。セナは88年に鈴鹿で優勝して初のチャンピオンを決定。マイナーだったモータースポーツが、あっという間にお茶の間の人気スポーツになったのにはビックリ。

 業界関係者でも、ジャーナリストでは今宮さんや赤井さん、カメラマンでは金子さんや原さんらがアッという間に“スター”になりましたね。

 続く89年には鈴鹿のシケインでセナとプロストのクラッシュ事件。フジテレビ主導のF1メディアミックスはほんとうに見事なもので、これをセナプロ遺恨対決として盛り上げる。

 古舘伊知郎命名の「音速の貴公子」によって、誰もがセナの名前を知るようになり、レースを初めて見るような一般ピープルにとってはF1=アイルトン・セナという状態でございました。

 そんなF1ブームの真っ只中に登場した初代NSXに、クルマ好きが熱狂しないはずがないよね。

■初代NSXは「頑張れば誰もが買えたスーパーカー」だった

当時の熱を感じながら過ごしたクルマ好きには、ホンダF1、セナ、そしてNSXは同列に刷り込まれている
当時の熱を感じながら過ごしたクルマ好きには、ホンダF1、セナ、そしてNSXは同列に刷り込まれている

 NSXが日本で初めて一般公開されたのは1989年の東京モーターショーだったが、その熱狂ぶりも今や伝説。前回1987年に約130万人だった東京モーターショー入場者は、1989年と1991年の2回だけドカンと跳ね上がって約200万人を動員。

 NSXをはじめ初代セルシオやR32GT-Rがデビューしたこの時代、日本人がいかにクルマに熱を上げていたかわかろうというものであります。

 アイルトン・セナが鈴鹿でNSXを走らせる映像はYouTubeで見ることができるが、一般のイメージはまさにコレ。ホンダF1〜セナ〜NSXはほとんど三位一体で、国籍不明の2代目NSXとは日本のクルマ好きに対する訴求力がぜんぜん違っていたのだ。

 ちなみにその動画の、15秒くらいでバックに映り込んでくるピンクのセーターが弱冠38歳の筆者。この当時、ホンダは日本GPの翌日、鈴鹿西コースでジャーナリスト向けの試乗会を開催するのが恒例のイベントで、周りにいっぱいるギャラリーはジャーナリストやカメラマンなどのメディア関係者だ。

 また、初代NSXは日本初のスーパーカーと言われていたが、デビュー時の価格はジャスト800万円。R32GT-Rが約430万円、初代セルシオが約450〜650万円だったから、たしかに高いといえば高いのだが、それでも当時の感覚としてはむしろお買い得感が強かった。

 当時は今と比べては消費行動がはるかに脳天気だったから「ローン組んで残業すればなんとかなるでショ」といったノリでNSXを買った人も大勢いる。

 じっさい、当時のぼくのまわりでもNSXを購入した知人(かならずしもお金持ちばかりじゃない)は10人じゃきかない。サラリーマンやフリージャーナリストでも、NSXは「頑張れば買える!」感覚のクルマだったのだ。

 しかし、2代目NSXとなると周りで購入した人は皆無。時代が違うといえば違うのだが、最終モデルとなるType Sの2794万円というプライスは、こりゃもう(経済的に)上級国民でないと手が出ないレベル。

 初代NSXは当時のクルマ好きにとって「オレたちのNSX」という感覚だったが、2代目NSXは普通のクルマ好きにとってもはや「絵に描いた餅」。NSX生産終了のニュースがクールに受け流されている(ように見える)のは、その辺に理由があるのかもしれませんねぇ。

【画像ギャラリー】このまま消えていいはずがない!! ホンダの看板 そして熱かった時代の象徴 NSXよ永遠に!!

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