■ついにドアミラー解禁! 喜んだのは若者とカーデザイナー!?
だが、ファッションに敏感な若者たちはドアミラーに憧れ、違法であると分かっていながら改造して装着している。三菱の初代ミラージュや電動サンルーフを装着したマツダのファミリアXGは、ドアミラー装着車の代表だ。
さすがに80年代になるとドアミラーへの流れを止めることが難しくなった。海外からの反発や規制緩和の流れもあり、ついにドアミラーが解禁となったのである。
最初にドアミラーを採用したのは83年に発売された日産のパルサーEXAだ。これを追うようにトヨタのカローラとスプリンターもドアミラーに踏み切っている。これ以降はドアミラーが標準装備となり、フェンダーミラーは脇役に回り、オプション設定となった。
最初はドアミラーの張り出しが気になったが、すぐに折り畳めるように改良され、電動でのミラー調整に加え、電動格納機能も盛り込まれ、使い勝手は大幅に良くなっている。
ドアミラー解禁は、自動車メーカーのデザイナーにとっても朗報だった。長い脚を必要とするフェンダーミラーが丹精込めてデザインしたフォルムを崩していたからである。
とくに80年代以降はボンネット先端を下げるデザインが流行っていたから、ドライバーから見える位置にミラーを取り付けるには長い脚が必要になっていた。ツノのように伸びている脚に違和感を覚えた人は多いはずだ。
ドアミラーはサイドドアに直付けされているから目立たないし、一体感があるデザインだから美しいフォルムを損なわない。自動車メーカーにとっても日本仕様と海外仕様を同じように作れるから合理的だった。
生産コストも引き下げられる。最近のクルマは歩行者保護など、衝突した時の安全性に力を入れているからボンネットやフェンダーを薄く設計しているクルマが多い。そういったクルマだとフェンダーミラーを取り付けにくいのだ。
また、人を巻き込んだ事故になってもドアミラーの方が危険は少ないだろう。90年台半ばからは、ファミリーカーがミニバンやSUVになり、ボンネットが短くなった。こういった流れもあり、一気にドアミラーが主役の座に就いのである。
ボディ形状が変わってきたこともあり、今やフェンダーミラーは絶滅危惧種になってしまったのだ。
■とうとう教習車までがドアミラーに……フェンダーミラーの未来は
10年くらい前までは自動車教習所の教習車がフェンダーミラーにこだわっていた。が、今の教習車はドアミラーがほとんどだ。免許を取った後、運転するのはドアミラー装着車だからである。
だが、例外もある。今でも頑なにフェンダーミラーにこだわっているのがタクシーだ。トヨタのコンフォートや日産のクルーは最後までフェンダーミラーを装着していたし、最新のジャパンタクシーもフェンダーミラー仕様で登場した。
これはタクシーのドライバーの要望が多いからだ。一般の人より長時間、長距離、ステアリングを握っている。確認するときに視線移動が少ないし、首を降る角度が小さい。疲労はかなり違うはずだ。
また、狭い道を走るときも張り出しが少ないから安心感がある。人を乗せたときにドアミラーだとお客さんと目が合う可能性があるのも嫌われる理由の1つらしい。フェンダーミラーなら助手席に座った人や荷物が邪魔になって見える範囲が狭められることもない。
プロのドライバーだからフェンダーミラーのメリットを十分に引き出すことができ、弱点もカバーできるのである。
一般的には長所の多いドアミラーがおすすめだ。が、最近はフェンダーミラーに憧れ、80年代以前の日本車に乗る若者も増えてきた。こう言った人には、見慣れているドアミラーが無粋に見えてしまうのである。自動車は奥が深いよね。
コメント
コメントの使い方