荷物を積むラゲッジスペースは広いに越したことはないが、クルマの性格や使われ方、ユーザーの要求に対する折り合いが付くなどすれば、必ずしも広い必要はない。
本稿では、そうした事情も踏まえつつ、「現役日本車ラゲッジ極狭ワースト5」を調査。結果的に、荷室の優先度が相対的に低いスポーツモデルが該当することになったが、その潔い割り切りと、意外に異なる最低限の実用性を判断する目安として以下、ご覧いただきたい。
文/永田恵一、写真/編集部、TOYOTA、HONDA
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■5位/レクサス LC
レクサスLCのラゲッジスペースは、V8とハイブリッド、クーペとオープンのコンバーチブルというボディタイプによって幅はあるが、平均すると4位のGRヤリスに僅かに勝るため5位とした。
この種のクルマは主に富裕層となるユーザーが長期間の旅行に行く足として使うケースもあり、その際には着替えも多く、鞄も大きくなりがちなので、ラゲッジスペースの狭さはちょっと痛い。
しかし、その替わりLCにはコンバーチブルでも狭いながらリアシートがあり、荷物はリアシートにも置くことができる。LCの立派なリアシートに立派な鞄を置くという組み合わせはキャラに合う感じもする。
■4位/トヨタ GRヤリス
GRヤリスは全長が短いことに加え、リアオーバーハングも短く、フロアも高いため、ラゲッジスペースは174Lとコンパクトカーとして見ても極狭。アルトやミライースといった軽セダンよりも狭い。
それでもFFとなる「RS」はラゲッジアンダーボックスがあり、それなりの容量があるのでだいぶ救われる。
しかし、1.6Lの4WDターボ車となる「RC」と「RZ」系は、ラゲッジアンダーボックスの部分にバッテリーを搭載。グレードによってはインタークーラーウォータースプレーが入るので、パンク修理キットと小物しか入らない。
筆者はGRヤリス「RZハイパフォーマンス」に1年近く乗っているが、クルマに常備しておきたいものをラゲッジスペースに置くと、ラゲッジスペースは3分の2程度のスペースしか残っていない。
しかし、GRヤリスは後方にいくに従ってルーフが下がっているものの、リアシートに2人が乗れるクルマなだけに、リアシートを倒せばキャビン部分にタイヤ4本が積めるスペースを確保。3人乗車までなら3人分の荷物も充分積める。
実際、筆者はリアシートを使うことがほとんどないこともあり、今のところGRヤリスの積載性に不満を感じたことはない。
■3位/マツダ ロードスター
2代目モデルまでのロードスターには、(褒められた使い方ではないが)クローズド状態なら頭上後方に普段持ち歩く鞄などを置けるスペースがあり便利だったのだが、3代目と現行型4代目モデルではそのスペースはなくなっている。
さらにラゲッジスペースも130Lと小さいことも事実だ。しかし、現行ロードスターのラゲッジスペースは、それぞれソフトバックに入れた1人分の荷物なら1泊分+ヘルメットなどのサーキット走行に必要な荷物、2人分なら2泊3日程度の荷物は積めるので、クルマの性格を考えれば充分だろう。
また、車内も軽量化のためグローブボックスがないのは痛いが、センターコンソール後方には鍵付きのコンソールボックスがあり、身の回りのものが置けるなどの配慮もされている。
■2位/ホンダ NSX
現行型2代目NSXは、日本限定30台の「タイプS」のみとなっていることもあり、新車を買うのは非常に難しくなっている。
それはさておき、NSXのラゲッジスペースはフロントボンネットには何も積めず、リアのラゲッジスペースも容量は公表されていないが、見るからに狭いうえにフロア中央左側に出っ張りがあることに加え、全幅が広いわりに長さがあるものを入れにくいのも辛い。
初代NSXのラゲッジスペースはゴルフバック2つが入ったのとは対照的だが、スーパーカーなので「これで充分」と言えばその通りなのだろう。
ただ、現行NSXで惜しかったのは、ハイブリッドカーのためシート後方に駆動用バッテリーや制御ECUなどが一体なったIPU(インテリジェントパワーユニット)が配置される点。
もしIPUがなければ、2シーターでもフェアレディZのようなシート後方のスペースを設けられた可能性があり、シート後方のスペースがあるとコートやちょっとした荷物が置けて、実質的な実用性はかなり向上したかもしれない。
■1位/ホンダ S660
S660も新車の入手できる可能性はほぼゼロとなっている。S660のフロントボンネットにある「ユーティリティボックス」は、ラゲッジスペースと呼んでいいのか微妙である。
このユーティリティボックスは、ロールトップという名称のソフトトップをオープン時に収納するためのスペースなので、オープンにしたら使えない。
さらに容量はロールトップを円柱状にしたサイズ+αしかないのに加え、ラジエーターの熱や走行中の振動により積めるものは相当限られる。心配なく積めるのは損傷があっても諦められる衣類くらいかもしれない。
余談ながらS660のご先祖様的存在となるビートのラゲッジスペースは、フロントボンネットに収納されるスペアタイヤの内側にケースを付ければ、車載工具のような小物は置ける。
さらにミッドに積まれるエンジン後方にメインとなるラゲッジスペースがあり、ここは丸めた寝袋2つくらいは入りそうで、S660を基準とすれば「こんなに荷物が積めるのか」と感じるくらいだ。
しかし、S660でも1人乗りと割り切れば助手席足元に機内持ち込み可能サイズのキャリーケースは積めるのに加え、キャリアを付ければ2人乗りでも入念な固定と雨対策のうえで厳選した1泊2日分の荷物2日分くらいは運べるだろう。
S660は割り切ったクルマだけに、荷物を積みたいときにはクルマに頼らず、自分で何とかするのもカッコいい。
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ラゲッジスペースは数値的な容量も大切だが、実際の使い勝手では「形状が四角形に近く、鞄などが積みやすいか」、電動メタルトップとなるオープンカーでは「オープン状態とクローズド状態での広さの違いの有無」といった様子も重要だ。
そのためスポーツモデルに限らずクルマを選ぶ際にはラゲッジスペースも実車を見て、「自分が必要とする容量があるか」も入念に確認しておくといいだろう。
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