荒々しさか澄んだ音色か…スポーツカーの色気を決める排気サウンドの決め方

爆発回数が多い多気筒エンジンは、振動と排気音がスムーズ

 では、気筒数によってどのように排気音が変化するのでしょうか。気筒数による排気音の特徴は、以下の通りです。

・3気筒エンジン
 エンジンをスリコギにように揺らす振動があり、排気音も爆発回数が少ない分「ドドドド」という耳障りな音が発生
・4気筒エンジン
 3気筒よりも澄んだ排気音だが、高級車には不向き
・直列6気筒エンジン
 爆発タイミングとピストンの上下運動のタイミングが理想的なので振動が少なく、アイドルでも加速時でも澄んだ排気音が特徴
V型6気筒エンジン
 最近のV6エンジンは、オフセットクランクによって等間隔の点火(爆発)ができるようになったので、振動も排気音もなめらか。直6と直4の中間的な位置付け

エンジンの爆発回数/秒と排気音の周波数は、エンジン回転数と気筒数に比例
エンジンの爆発回数/秒と排気音の周波数は、エンジン回転数と気筒数に比例

心地よい、加速感を高める排気音をつくるには

 心地よい排気音を実現するためのポイントは、次の3つです。

・基本周波数とその倍数周波数以外の周波数成分を除去
 澄んだ音色の排気音にするためには、基本周波数およびその倍数周波数以外の成分を除去しなければいけません。そのためには、各気筒の排気マニホールドの長さを均等にした上で、排気管の太さやマフラー容量と搭載位置を最適化します。

・排気音に時間的な変化を付ける
 定速走行時には音圧を抑え、加速時にはクルマの加速に連動して排気音の音圧を強めることが、ドライバーの加速感を高めるのに有効です。同じ加速性能であっても、排気音に抑揚をつけた方が速く走っているように感じます。

・クルマのコンセプトに合わせた排気音
 セダンのような乗用車には、基本周波数を際立たせてクリア感を強調。またスポーツモデルは、音圧が強めの迫力のある排気音が適しています。気筒数を変えるわけにはいかないので、排気系のチューニングで行います。

排気音をチューニングした例

 レクサスのスポーツカー「LFA」のV10エンジンの排気音は、ヤマハのサウンド開発センターが中心となって手がけました。加速すると、F1マシンのような甲高い排気音を奏で、誰もが振り返るような迫力ある排気音を演出しています。まさに楽器のように調律した優れものです。

2010年に登場したレクサスのフラグシップスポーツカー「LFA」。ヤマハのV10エンジンを搭載、排気系のチューニングは、ヤマハと排気系メーカーの三五が担当
2010年に登場したレクサスのフラグシップスポーツカー「LFA」。ヤマハのV10エンジンを搭載、排気系のチューニングは、ヤマハと排気系メーカーの三五が担当

 また、フェラーリの排気音は、「フェラーリサウンド」と呼ばれ、「美しい」と絶賛されています。8気筒や12気筒の多気筒エンジンの特性を生かした排気系のチューニングによって、基本周波数とその倍数周波数の音を際立たせて、高音の澄んだ排気音をつくり出しています。

騒音規制によって加速感を音でつくることが困難に

 2016年から車外騒音規制が導入され、2024年にはEVでも適合するのが難しいほどのレベルに強化されます。従来のように、排気音の強弱で加速感を強調するのは難しく、音質の工夫やアクティブサウンドのように、人工的に排気音(のようなもの)をつくり出し、車内のみに流すような工夫が必要かもしれません。

 将来的にはEVの「キーン」という音質に、人が排気音と同じように魅力を感じるようになるのかも、興味あるところですね。

【画像ギャラリー】澄んだ排気音が魅力!! 直6エンジン搭載の名車たち(23枚)画像ギャラリー

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