ホンダがコンパクトクロスオーバーSUV、BR-Vを日本でも売るべきワケ

ホンダがコンパクトクロスオーバーSUV、BR-Vを日本でも売るべきワケ

 ホンダが新型BR-Vをインドネシアで発表しているが、3列シートの小型SUVの2世代目モデル(エンジンは1.5Lガソリンのみ)で、フィットの下のクラスとなるBRIOのプラットフォームを採用したSUVだ。

 初代BR-Vは2015年12月に発表され、これまでに全世界で25万5000台以上を販売しており、インドネシアはそのうち約30%となる7万6846台と最量販市場になっている。日本でも販売すれば車格的にはライズ/ロッキーのライバルとして健闘しそうな気配さえするが、新型BR-Vを日本市場に導入すべき理由を国沢光宏氏が解説する。

文/国沢光宏写真/ホンダ

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■国内での安全基準をクリアできない!?

 ホンダは東南アジア地域での大ヒット車となっているBR-Vをこのほどフルモデルチェンジし、生産国になっているインドネシアで発表した。このクルマ、ヴェゼルより安く、フィットより高いという価格帯。写真のとおり3列シートSUVというカテゴリーに属しており、インドネシア、タイ、インド、フィリピンなど東南アジアで販売されている。

インドネシアで発表されたホンダの新型『BR-V』の発表会の様子
インドネシアで発表されたホンダの新型『BR-V』の発表会の様子
新型BR-Vのボディサイズは、全長4490×全幅1780×全高1685mm(アンテナを含む)。ほぼヴェゼルと同サイズで7人乗りの3列シートを備える
新型BR-Vのボディサイズは、全長4490×全幅1780×全高1685mm(アンテナを含む)。ほぼヴェゼルと同サイズで7人乗りの3列シートを備える

 もし日本で販売するとなれば前述のとおり、ヴェゼルとフィットの中間くらいの価格になるだろうから、1500ccエンジンを搭載したモデルで180万円といったイメージ。大ヒットした初代CR-V(172万円スタートと当時でも割安感のある価格設定)のように魅力的なプライスを付けられると思う。けれど日本販売はされなかった。

 ホンダに聞いてみたら、最大の理由として「安全基準などが違うため」を挙げた。BR-Vのプラットフォーム、フィットより格下となる新興国スペックのBRIOというモデル。主として衝突安全性で日本の基準をクリアできないのだという。ただ、決定的にダメかとなれば、日本で生産するなど手を加えれば対応可能なレベルだという。

 総合して考えると先代モデルを日本に導入しなかった最大の理由は「国内販売部門に売る気がなかった」に尽きる。なぜ売る気がないだろうか? こらもう最近のホンダ車のラインナップを見ればわかるとおり、利益率の低い安いクルマを売る気がないんだと思う。もう少しわかりやすく書くと、お金持ち相手のクルマのほうが儲かるのだった。

■本田宗一郎さんのDNAはどこへいった

 アメリカ市場の場合、売れ筋はCR-Vやシビック、アコード。CR-Vなんか月販平均で3万台を超えるほど。驚くべきことにシビックより小さいクルマってほとんど売れていない。250万~450万円のクルマがホンダの売れ筋になっている。儲かりまんがな! そんなアメリカのビジネスを見て、国内販売部門も「利益率の高いクルマだ!」となる。

 実際、この何年か高価なクルマばっかり出してきている。直近だと350万円の新型シビックです。もっと言えば軽自動車だって200万円は当たり前。1500ccで180万円のBR-Vなどショッパくって売る気ないということなんだと思う。最近のホンダ、創始者の本田宗一郎さんのDNAがドンドン薄くなっていっているようです。

2021年6月に北米で発売された11代目シビックセダン。日本未導入のこのシビックセダンには1.5Lターボエンジン搭載の高性能バージョン「Si」グレードが発売予定となっている
2021年6月に北米で発売された11代目シビックセダン。日本未導入のこのシビックセダンには1.5Lターボエンジン搭載の高性能バージョン「Si」グレードが発売予定となっている

 翻って日本の状況を見ると、なかなか厳しい。2008年のリーマンショックより前の平均年収に回復したのは2018年。それでも過去最高だった1997年に届いていない。なんと25年間も収入は上がっていないということになります。ちなみにOECD(経済協力開発機構)のデータによれば2020年の平均年収は日本436万円。アメリカは763万円だ。

2020年のOECD(経済協力開発機構)世界年収データのグラフ(USドル換算) 日本:38515USドル アメリカ:69392USドル
2020年のOECD(経済協力開発機構)世界年収データのグラフ(USドル換算) 日本:38515USドル アメリカ:69392USドル

■アメリカで売れて日本で売れない理由

 1997年の平均年収を見ると日本が467万円(なんと今は下がっている!)でアメリカ510万円。このくらいの年収差ならアメリカと同じ価格帯のクルマだって売れるけれど、今や日本の平均年収ってイタリアやスペインなど西側だった欧州諸国より低く、新興国でクルマを買える人と同等レベル。アメリカ仕様のクルマなどは高価で買えない。

 したがって直近の日本市場を詳細に分析すれば、アメリカや欧州仕様を考えて開発したクルマじゃ高額過ぎて買えないということになる。むしろ新興国で売るために開発したクルマをベースにすべきなんだと思う。年収層の低いユーザー相手だと儲からないと考えるホンダ国内営業の気持ちはよ~くわかるけれど、もう少し日本を考えてほしい。

 本田宗一郎さんは原動機で庶民の生活を豊かに&楽しくすることを考えた。そのDNAを忘れちゃったとすれば、大いに悲しいことだと思う。幸い新型BR-Vは日本で販売する時のハードルが先代モデルより大幅に低くなっているように思う。例えば安全装備。新型を見たら日本だと2021年11月から装着義務づけとなっているホンダセンシングが付く。

歩行者対応の自動ブレーキ、先行車追従型のアダプティブ・クルーズ・コントロール、レーンキープアシストシステム、オートバイビーム等が装備される
歩行者対応の自動ブレーキ、先行車追従型のアダプティブ・クルーズ・コントロール、レーンキープアシストシステム、オートバイビーム等が装備される

■「BR-V」は庶民の味方だ! 日本でも売ってくれ!!

 ホンダセンシング、後から付けようとすれば相当の開発コストをかけなければならない。新型であれば日本のスペックを満たすよう改良するだけですむ。また、サイドエアバッグも新型だと装着可能。これまた後から追加しようとしたら側面衝突の安全設計から見直す必要あります。先代よりずっと日本仕様への改良は容易だと思う。

インテリアも最新になっており、メーター内に4.2インチディスプレイ、ダッシュボードには7インチディスプレイを装備、エアバッグは運転席と助手席のフロントSRSエアバッグを備える
インテリアも最新になっており、メーター内に4.2インチディスプレイ、ダッシュボードには7インチディスプレイを装備、エアバッグは運転席と助手席のフロントSRSエアバッグを備える

 エンジンは4気筒の1500cc+CVT。電動化技術など不要だから、そのまんま排気ガスを日本仕様にすればいい。存在感の大きい3ナンバーの3列シートSUVで200万円を切ったら相当イケると思います。ほとんど売れず販売中止になったジェイドやグレイスより圧倒的に売れるだろうから、日本の工場で作ったらいい。

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