■化学合成油なら高性能、というのもひと昔前の常識
高性能なエンジンオイル、と聞くと化学合成油をイメージする人は多いのではないだろうか。確かに化学合成油はエンジンオイルの性能を引き上げたが、実は化学合成油にもいろいろ種類があって、メーカーによって表記も異なるため、非常に分かりにくくなっている。
一般的に使われる化学合成油はPAO(ポリ・アルファ・オレフィン)というモノで、これは石油由来のナフサや天然ガスを原料に作られている。化学的に高分子に組成されているため、非常に安定性が高く耐熱性、耐久性に優れているのが特徴だ。
それに対してエステル系と呼ばれる化学合成油は、植物油を原料にして高分子に組成したもので、ジェットエンジンの潤滑に使われるために開発されただけあって、耐熱性が高く潤滑性能にも優れている。
しかし化粧品の材料にも使われるなど潤滑油以外の需要もあり、ベースオイルが高いことから、当然価格も高くなる。
部分合成油というのは、鉱物油をベースに高度な精製処理をして、分子構造を整えて品質の安定化を図ったものだ。鉱物油の分子は何種類もの炭化水素が混ざり合っているため、組成を均一にすることで性能が安定し、添加剤などの効果も弾き出しやすくなる。
なお部分合成油と聞くと化学合成油よりも性能で劣るのでは、と思われるかもしれないが、確かに耐熱性や耐久性は化学合成油のほうが高い傾向にあるが、オイル自体の潤滑性は鉱物油でも優れている。
鉱物油をベースにした部分合成油は、高い潤滑性に加えて安定性も高めた、コストバランスに優れた高性能オイルだ。
ややこしいのが半化学合成油という表記で、メーカーによってその内容がまちまちだ。鉱物油に化学合成油をブレンドしたモノもあれば、部分合成油を半化学合成油と表示しているものもあり、よく調べないとベースオイルは分からない。
API(アメリカ石油協会)のグレード表記があれば、グループIIが鉱物油ベースの水素化分解による精製油で、グループIIIがより高度な部分合成油、グループIVがPAOで、グループVがエステル系といったように、ベースオイルはひと目で分かる。
もっとも最近はグループIII+といったように、さらに細分化されているので、これも複雑化している傾向だ。
■低粘度化が進んでも潤滑性能は確保されている
広く使われているマルチグレードオイルの場合、粘度表示は、5W-30といったように2つの数字が組み合わされている。Wが付くほうの数字は冷間時など低温時の粘度を示し、後ろの数字は高温時の粘度を示している。
低温時は粘度が低いほど始動時などに抵抗が少なくなる。逆に高温時にはある程度の粘度がなければ、油圧が維持できなくなってしまう。以前は5W-40などワイドレンジな粘度のオイルが主流だったが、現在は全体として低粘度化が進んでいる。
粘度が高ければ油圧は高く、油膜も厚くなるため、油膜切れを起こしてしまう心配は少なくなるが、油圧ポンプでの駆動抵抗になり、クランクシャフトがオイルパン内のエンジンオイルを撹拌する際の剪断抵抗も大きくなる。
だから高出力を望まないエコカーのエンジンは、どんどん低粘度なエンジンオイルを採用するようになった。
ガソリンエンジン車でも0W-20といった、高温時でも低粘度で潤滑性能をもつエンジンオイルを使うことが普通になってきたのだ。そのために純正オイルでも最近は添加剤を多用して潤滑性能を確保している。
粘度は流動性と油膜の厚さに関係し、粘度が低いほどサラサラで流動性は高いが、油膜は薄くなってしまうので油膜切れを起こして部品同士が直接接触することで摩耗する状態が起こりやすくなる。
粘度が低いオイルで潤滑性能を保つのが、いかに難しいことか、これでお分かりいただけただろうか。そのためメンテナンスフリーでも、オイル管理にだけは気を配りたい。
確かに化学合成油でも最も高性能と評されるエステル系のオイルは、酸化安定性にも優れているようだが、輸入車ではすでに純正オイルでもエステル系の化学合成油を採用しているところもある。
特にロングライフを実現する目的でドイツ車メーカーが採用している傾向が強い。ということは、化学合成油だから高性能オイルだと思い込んで選択しても、実は純正オイルよりもグレードが低い場合もある、ということだ。
コメント
コメントの使い方ディーラーいうても純正オイル使ってるとは限らんからな。
もう永いこと純正品をDIYしています。
質問してよろしいでしょうか。
CVTオイル、自社キャッスルよりカストロールの方が高性能と勧められ、カストロールにしました。
本当なんですか。
良い悪いというよりオイルの精度に対して必要なエンジンではないから純正オイルが一般車には最適という事。
例えばスポーツカーなど高性能というのは1から10までパロメータがあったとして、1から7に振り分けられる性能分を8から10に詰め込んだ状態