■中国は58協定の加盟国ではない。そもそも何なの「58協定」って
「58協定」という言葉を初めてお聞きになった方もいらっしゃるだろう。58協定は日本も参加している「国連の車両等の相互承認協定(1958年協定)」のことである。2021 年6 月現在、56ヵ国、1地域が加入しており、装置ごとに 160 の協定規則(基準)が制定されている。日本はこのうち乗用車の制動装置、警音器、幼児拘束装置等 94 の規則を採用している。
相互承認とはどういうことなのか? 身近な例としてチャイルドシートを例に挙げて説明してみたい。日本は2012年7月以降、国連協定規則ECE R44/04またはECE R129という基準をクリアしていないチャイルドシートを新規で販売することは認められていない。
認証を得られたチャイルドシートにはオレンジ色のEマークが貼られる。
58協定加盟国のいずれかの国でテストを受け合格し認証を与えられたチャイルドシートであれば、日本に輸入する場合も国交省の試験を受ける必要がない。このようなシステムが「58協定の相互認証」である。
2021年2月、中国製高級車として初めて日本に紅旗H9が上陸した際、すぐさま加速騒音試験と排ガス検査を受け何の問題もなくパスした。
が、実際にナンバーがついたのは約3ヵ月後の5月上旬だった。それでもナンバーが取得できたのは、日本で販売される紅旗H9が第一汽車公認の正規輸入車という扱いになるからだ。
並行輸入であればそもそもナンバー自体が付くことは不可能だろうが58協定に入っていない国のクルマであっても、製造する自動車メーカーが対象となる装置に関して国連協定規則に基づく安全基準と同等の安全性を有する事を証明できれば日本のナンバーは付けられる(かなりの時間と手間を必要とする場合もあるが)。
その証明書をメーカーから得ることができない場合はクラッシュテストをはじめ、ひとつひとつ安全性の認証を行うことになり莫大な費用が掛かるため事実上、中国で販売されているクルマにナンバーをつけるのは非現実的ということになる。
■格安の中国製EVは日本のナンバーはつくか?
中国で2020年7月に発売された宏光MINI EVというクルマをご存知だろうか。45万円~60万円という衝撃の低価格で発売されたマイクロミニサイズのEVである。
発売されるやいなや、爆発的な売れ行きを見せそれまで中国でもっとも販売台数が多かったテスラモデル3をあっさり抜き、2021年第2四半期においてはEVを含む乗用車でも僅差でカローラを上回り、1位の日産 / シルフィに続く2位に名前を連ねた。発売からわずか1年で世界一の自動車市場で猛烈な勢いで売れ続けているのだ。
この宏光MINI EVを並行輸入で日本に持ち込んで販売することはできないのだろうか? 50万円でEVが乗れるなら欲しい人も大勢いるはず!
しかし、その答えは残念ながらNOである。先に説明した中国は58協定のメンバーではないことが主たる理由だ。そもそも莫大な費用をかけて日本のナンバーが付いたとしても、日本での販売価格はもちろん50万円では無理で、100万円超は当然。うまくいけば100万円台半ば~後半に落ち着くかどうか、といったところだろう。
中国車の並行輸入が難しい理由はお分かりいただけただろうか? 輸入だけなら可能だが、ナンバーをつけるとなると大変なのである。
■上汽通用五菱 宏光MINI EV
全長×全幅×全高:2917×1493×1621mm
ホイールベース:1940mm
サスペンション:前/マクファーソン・ストラット、後/3リンク・リジッド
ブレーキ:前:ディスク、後:ドラム
最小回転半径:4.2m
駆動方式:後輪駆動
モーター最高出力:20kW
最大トルク:85Nm
バッテリー:リチウムイオン
容量:9.3kWh(上級グレード:13.9kWh)
乗車定員:4名
車重:665kg(上級グレード:705kg)
最高速度:100km/h
一充電走行距離:120km
充電時間:─
価格:2万8800元(約45万円)
エアコン付きの中級グレードで3万2800元(約50万円)
バッテリー容量が13.9kWhの上級グレードで3万8800(約60万円)
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