■もう店舗には行く必要はなくなるのか?
その一方でクルマの場合、店舗に出かける必要も生じる。購入時には登録制度があり、署名や捺印も必要だ。商品のサイズも大きいから、インターネットで注文して、宅急便で自宅まで届けてもらうわけにはいかない。
購入後には、パソコンのような家庭電化製品と違って、車検や定期点検を受けねばならない。場合によってはリコールや修理も発生する。クルマは交通事故の危険を伴った特殊なツールだから、購入後のメンテナンスは不可欠で、販売店に併設されたサービス工場に車両を持ち込む必要がある。
そのために冒頭で述べたオンラインでサブスクリプション・サービスを契約できる「Honda ON」、あるいはトヨタの「KINTO」は、契約までの作業をオンラインで進められるのに、最終的な納車はユーザーが販売店へ出向く方式を採用している。
オンラインを徹底させるなら、納車もスタッフがユーザーの自宅までクルマを届ければ良いだろう。そうすればユーザーは、一度も販売店へ出向かずにクルマを入手できる。
それをせずに、あえて販売店までクルマを取りに来てもらう理由は何か。「Honda ON」の運営母体であるホンダセールスオペレーションジャパンに尋ねると、「販売店の様子やスタッフについて、お客様に知っておいていただきたいから」と返答した。これはユーザーが安全にクルマを使い続けるためには、販売店のサービス体制が不可欠なことを意味している。
書類の捺印などを含めた契約は、セールスマンと面会して行うのが手っ取り早いが、郵送を使ってやり取りすることも不可能ではない。書類がユーザーの自宅に届いたら、ボルボのオンライン商品説明の要領で、会議ソフトの「Zoom」を使いながら捺印などの作業をセールスマンと一緒に行う。
これを販売店に返送すれば、セールスマンと面会したのと同じことだ。後日、セールスマンが自宅まで車両を運んで納車すれば、クルマのオンライン販売は、面倒は伴うが成立する。
■完全web化は例外対応が難しくなる
しかし予想外のトラブルが生じた時の安全確保などを考えると、ユーザーが販売店やサービス体制について何も知らないのは困る。スタッフの手が足りず、販売店まで即座にクルマを運んでもらいたい事態が生じる可能性も皆無ではない。
オンラインの普及に際しては、こういった時の安全確保が課題になる。
ボルボも電気自動車のC40リチャージについて、100台限定のサブスクリプション・プログラムを導入した。これもオンライン方式を採用するが、販売店をどのように位置付けるのかが注目される。
■ボルボC40リチャージ 特別サブスクリプション価格(税込):月額11万円(最長36ヵ月)
頭金不要で月額費用には、各種税金、自賠責保険、リサイクル料金、登録諸費用、任意保険料、サービスプログラム、付帯補償料などが含まれている
私のような昭和の時代に運転免許を取得してクルマを使いこなした世代から見ると、
「クルマを買う時ぐらい、販売店に行けば良いでしょう。候補に挙げたいろいろなクルマを試乗して、セールスマンと直接話をする。
クルマに対する理解が深まり、高額商品を慎重に選ぶこともできますよ」
と言いたいが、そういう認識は、もはや通用しにくくなっているらしい。
そこでオンラインなのだが、クルマにとって安全性が最も大切なことは、今も昔も変わらない真実だ。
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