実績のあるプラットフォーム採用でコスト削減に成功
さて、今回新型アウトランダーPHEVで採用されたのは、ルノー日産三菱のCMF-C/Dプラットフォーム。CMF-C/D自体は、これまでも採用されてきたプラットフォームで、現行T32型エクストレイルやJ11型/J32型のキャシュカイ/ローグスポーツ、ルノーコレオス、ルノーカジャーなど、ルノー日産の主力ミドルクラスSUVには、もれなく使われており、実績は充分。CMFによるプラットフォームは、世代ごとに構造やサイズなどは異なるので、「常に進化し続けるルノー日産の統一規格」と考えるほうが望ましい。
プラットフォームを共用化する一番の理由は「コストの削減」だ。プラットフォーム開発には、経験と知識を備えた人材と開発期間、そして充分な設備と投資できる資金力が必要だが、協業関係にあるメーカー間で分業して開発することで、これらの負担を軽くすることができる。いいものを多くつくることでコストを下げる。その浮いたコストはより有効なアイテム開発へと回し、さらに商品力を上げる。プラットフォームの共用は、このサイクルを回していくことが目的だ。
新型アウトランダーPHEVもCMF-C/Dプラットフォームを採用することで、プラグインハイブリッドシステムや他の技術開発に力と資金を割くことができたはず。依然として経営の苦しい三菱だが、日産との協業の恩恵でアウトランダーPHEVが出せた、といっても過言ではないだろう。
この共用プラットフォームの開発は、日産とルノーの場合、Bセグメントのつくりに長けているルノーが小型車用のプラットフォームを、C/DセグメントやEVのプラットフォームは、日産が主導権を握るという。バックボーンが異なるルノーと日産が、苦労しながらも編み出してきた仕組みだ。そこに三菱も加わったことで、三菱もCMF C/Dが使えるようになった。ルノー日産は、三菱にCMF C/Dを提供する代わりに、プラグインハイブリッドシステムを始めとした、三菱独自のアイテムを手に入れているはずだ。
この「プラットフォーム」のなかには、ステアリング機構や、サスペンションのメンバーやリンク、ダンパーといったシャーシパーツのほかに、車体のフロア構造も含む。ただ、全高や外観に関係するボディパネル、前後バンパー、バックドア、サイドミラー、タイヤやホイールといったエクステリアや、ダッシュボード、インパネ、メーター類、シートといった内装など、見える部分、触れる部分については、つくり分けができる余地を持たせているので、見た目は全く違ったクルマになる。
新型アウトランダー(PHEV)の場合も、北米の新型ローグに対して、リアのオーバーハングを伸ばして、3列シートを備え付けているので、ぱっと見は、ローグとは車格の異なるSUVにも見える。とはいえ、シャーシ共用となるので、2705mmmというホイールベースや、1600mm程のトレッドは、新型アウトランダー(PHEV)とローグで、ほぼ同じになっている。
新型エクストレイルのPHEVとe-POWERは確実か!? いっぽうで不安も
新型エクストレイルにe-POWERが搭載されることは間違いない。欧州ではすでに、新型エクストレイルにe-POWERが搭載されることが発表されている。
そして、新型アウトランダーPHEVと同じプラットフォームであるならば、新型エクストレイルにも、プラグインハイブリッドのアーキテクチャを「搭載できる余地」があるはず。三菱としてもPHEVシステムを量産することでさらにコストを下げ、日産へも還元することができるのであれば、喜んで提供するだろう。国内仕様のエクストレイルには、e-POWER版、そしてPHEV版も用意される可能性は高いと思われる。
また、運転支援技術「プロパイロット」に「マイパイロット」と名付け、軽のeKワゴンへと搭載してきたように、アウトランダーのe-POWERモデルが登場する可能性もある。トヨタのRAV4ハイブリッド&RAV4PHVに対抗する、新型エクストレイルと新型アウトランダーのプラグインハイブリッドとe-POWER、ぜひともみてみたいものだ。
と、ここまでは希望に満ちた話だが、問題は、新型エクストレイルに「ガソリンモデルが登場するか」だ。従来のエクストレイルのよさのひとつは「価格の安さ」だったが、ガソリンモデルが用意されないことで、その魅力がひとつなくなってしまうことになる。ノートはe-POWER一本に絞ったことで、かつてほどは売れなくなった。エクストレイルもガソリンモデルが用意されなければ、同じ道をたどることになるだろう。
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