アウトランダー連続盗難事件が欧州で発生! 日系メーカーの携帯ゲーム機に似た形状の盗難ツールとは一体!?


■環境意識の高まりに乗じて中古車でも人気のアウトランダーを盗難の標的に?

 では、なぜアウトランダーが盗難の標的になったのか。その理由について確かめるのは難しいのだが、端的に言って、人気があるので盗難車を流す闇ルートで転売しやすいのだと思う。

 特にアウトランダーPHEVは、英国を含めて欧州各国の政府が進めるカーボンニュートラルを目指す電動化戦略のなかで、中古車市場での価値も安定している。

今回盗難されたアウトランダーがPHEVのみなのかガソリン仕様も含まれるのかは定かではない。しかし、長年販売されたモデルのため、搭載されるセキュリティの甘さを突かれた感は否めない

 そもそも、アウトランダーPHEVは2010年代前半に登場した後、欧州市場では一時、「カンパニーカー」として大人気となった。カンパニーカーとは、企業の幹部が会社から通勤が普段使いのために長期間貸与される制度で、就業契約のなかに組み込まれる項目である。

 筆者は、2010年代半ばに当時の三菱自動車の欧州支社関係者と欧州内で会食した際、アウトランダーPHEV人気の理由について「国や地方自治体による各種補助金制度なども併用すると、企業としての車両維持費をかなり抑えることができるからだ」と説明していた。

 また、時計の針を少し戻すと、アウトランダーPHEVのセキュリティシステムについては、過去に社外から指摘があった。英国のセキュリティコンサルティング企業の「ペン・テスト・パートナーズ」が2016年6月、スマートフォンのアプリをWi-Fiで利用する場合、盗難の警報を解除する機能などをハッキングできることを、英国BBC放送を通じて紹介している。

 この件と今回の盗難事案が具体的にどのように関係しているかについては、ウエストヨークシャー警察本部は公開した資料のなかでは触れていない。

■盗難の手口もハイテク化! 対抗する術はないのか?

 では、ハッキング撲滅は可能なのか? 日本でも近年、高級車を対象として「CANインベーダー」という、ECU(車載コンピュータ)同士をつなぐ通信プロトコルを経由して車載システムに侵入するケースが目立つようになっている。そのほかに、スマートキーの微弱電波を増幅させる「リレーアタック」と呼ばれる手法がある。

リレーアタックやCANインベーダーの「手口」をイラスト化したもの。防ぐにはハンドルロックやタイヤロックなど、物理的な拘束しか確実な防衛策がない

 一般的に公開されている盗難手口から今回の事案を考察すると、3人組という点や、CANインベーダー使用時に行われるとされているフロントバンパー付近での作業する様子が見当たらないこと、また盗難場所が低層の集合住宅に見えることなどから、断定はできないがリレーアタックによる犯行の可能性が高いのではないだろうか。

 こうしたクルマのサイバーセキュリティへの対応については近年、世界的に「オートモーティブ・ISAC(インフォメーション・シェアリング・アンド・アナリシス・センター)」と呼ばれる業界団体の活動が強化されている。

■サイバーセキュリティへの取組みが遅れているクルマ業界の対応は急務だ!

 日本でも、日本自動車工業会が2017年にワーキンググループを発足させ、2021年2月に「一般社団法人ジャパン・オートモーティブISAC」として独立したばかりだ。同年10月29日時点で自動車メーカー、自動車部品メーカー、電機機器メーカーなど97社が参加している。

 筆者はこれまで、国内外でサイバーセキュリティに関する各種シンポジウムを取材してきたが、電機やITの業界関係者からは「我々と比べて自動車産業ではISACという考え方の導入が遅れた」という指摘をよく聞いた。

セキュリティシステムも日々進化しているが、合わせて盗難の技術もまた進化してしまう。常日頃より盗難に対する意識を高め、自衛策を講じるしか現状確実な防衛策はないと考えるべきだ

 そのうえで、日本を含めたオートモーティブISACでは、サイバー攻撃に対するシステム側の脆弱性の情報の収集と解析を行い、対策や新規開発等に向けて、メーカーの垣根を超えた情報共有を進めている。

 そうしたなかでは当然、今回の英国ウエストヨークシャー州での盗難事例についても日本で詳しい調査と分析がすでに行われているはずだ。

 ハッカーとの熾烈な戦いが今後、さらに厳しさを増すことが予想されるが、日本でのオートモーティブISACの活動に期待したい。

【画像ギャラリー】他人ごとではない! 英国で起きたPHEV車の連続盗難から防衛策を学ぼう!!(7枚)画像ギャラリー

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