新型シビックタイプR登場を前に考える! シビックにとってのタイプRという存在は何か?

■B16Bという特別なエンジン

 パワーユニットはSiR系が積んでいるB16A型直列4気筒DOHCのVTECがベースだ。だが、エンジン型式が「B16B」に変わるほど大幅に手を加えている。ボア81.0mm、ストローク77.4mmで、排気量は1595ccだ。これは変わっていない。

 が、クラス最高の加速フィールと鋭いピックアップ、高回転域の痛快な伸びとパンチ力を実現するため、大幅に手を入れている。高回転に対応できるバルブシステムを採用し、吸気と排気抵抗も徹底的に低減した。また、フリクションの低減にも力を注いでいる。

 具体的には高回転化を実現するために、インテーク側のバルブスプリングは楕円断面の二重スプリングとした。バルブ軸径の一部を細軸化し、傘部をスリム化している。軽量コンパクトに設計しながら広開角/ハイリフトに対応する高強度を実現し、高回転域でのバルブ追従性も高めた。

 コンロッドも軽量化し、クランクシャフトは回転バランスに優れたフルバランサー8ウェイト仕様だ。ピストンは頭頂部を盛り上げ、圧縮比を10.4から10.8まで高めている。スカート部にモリブデンコートを施してフリクションを低減する手法も兄貴分のインテグラタイプRから受け継いだ。

 吸気系と排気系も抵抗を低減し、プリチャンバーの大型化とサイレンサーの内部構造の見直しによって流量を増大させた。きめ細かいチューニングにより、量産の自然吸気エンジンとしては世界トップレベルのリッター当たり出力116psを達成している。

 最高出力は185ps/8200rpmで、その気になれば8400rpmまで使うことが可能だ。最大トルクは表記では16.3kgm/7500rpmと高回転型だが、実用域のトルクは厚みがあって、扱いやすかった。

■エンジンを使い切れるシャシーとボディ

 意のままのハンドリングと優れた制動性能を実現するために低重心とロール剛性の向上を図っている。サスペンションはハードなセッティングとし、パフォーマンスロッドを用いてボディ剛性を高めた。

 ブレーキのディスクローターもサイズを上げている。タイヤはインテグラタイプRと同じ195/55R16だ。ハイグリップタイヤの装着に加え、トルク感応型のヘリカルLSDを採用し、ABSも専用セッティングとした。

 そのセッティングは、北海道の鷹栖プルービンググラウンドと栃木のテストコース、そして鈴鹿サーキットと筑波サーキットで行なっている。日本のサーキットで徹底的に鍛えられ、挙動を安定させるためにチンスポイラーの形状と高さにもメスを入れた。

 軽量化に力を入れたこともあり、走るたびにポテンシャルが上がっている。ちなみにエアコンなどはオプション設定だから、大幅な剛性アップを施してもノーマルのSiRより60kgほど軽い。

 正式発表は、97年8月だ。シビック生誕25周年を記念して発売された。販売価格は199万8000円である。当時、200万円以下でタイプRのオーナーになれるバーゲンプライスだった。

走りの楽しさにこだわる若者たちはシビックのタイプRに飛びつき、インテグラに続いてタイプRは2作ともヒットするのである。21世紀の今でも、初代のインテグラタイプRに次ぐ販売台数を記録しているのは、このEK9型シビックタイプRだ。

■21世紀のシビック事情

 21世紀になってもシビックは、シリーズの頂点にタイプRを頂いている。一時期、シビックは日本で販売を休止したが、2015年に第4世代のタイプRが姿を現している。究極のFFスポーツを掲げて開発され、発売前にはニュルブルクリンクサーキットの北コースでFFスポーツ最速タイムを叩き出した。

 2ℓの直列4気筒DOHC VTECにターボチャージャーを組み合わせ、刺激的な加速を見せつける。これ以降のタイプRは群を抜く速さを身につけ、コーナリング限界も大きく向上した。間もなくベールを脱ぐ最新作も痛快な走りと速さを見せるだろう。

 だが、公道で気持ちいい走りを目指した初代シビックタイプRは、使いきれる高性能が自慢だ。この魅力は今も色あせていない。だから中古車で乗りたい、と考える若者が増えているのだろう。

次ページは : ■タイプRから感じる「元気なホンダ」

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