夜になっても無灯火の自動車をたびたび見かける。これは昼夜関係なく自光式を採用したメーターが増え、さらに街中では街灯が明るいのが原因のひとつと推測されるが、周囲から目立たなくなるため安全上は大きな問題となる。
そのため、2021年10月以降は、すべての新車にオートライトが搭載されることが義務化された。そんなオートライトの最新事情を解説しよう。
文/藤田竜太、写真/TOYOTA、Adobe Stock(トップ写真=DedMityay@Adobe Stock)
■オートライトの義務化前と義務化後の違いって?
2020年の4月から、乗用車の新型車に義務化され、継続生産車も2021年10月から義務化されたオートライト。オートライトとは走行中の車が周囲の明るさを検知して、自動的にヘッドライトを点灯/消灯する機能のこと。
オートライト機能そのものは、10年以上前から普及していて、ヨーロッパでは2011年から義務化されている。日本でもJAFの調査によると2014年の時点で、3割程度の車には「オートライト機能」が搭載されていた。
ただし、義務化前のオートライトと、新しい保安基準となった義務化後のオートライトでは5つの大きな違いがある。
■義務化後のオートライト「5つの違い」
【1】ヘッドライトが点灯するときの周囲の明るさ(照度)が定められた
義務化前は、ヘッドライト点灯時の周囲の明るさについては基準がなく、メーカーごとに違いがあり、ドライバー本人でもある程度調整可能だったのが、義務化以降は「1000ルクス未満になったら点灯」という明確な基準が設けられた。
1000ルクスは、「信号や他車のブレーキランプなどの点灯が目立ち始める時の明るさ」といわれ、夕方、街灯が点きはじめるときの明るさも、1000ルクスぐらいになっている。
【2】走行時、手動でヘッドライトを消すことができなくなった
もうひとつ新保安基準になっての大きな違いは、手動によるON/OFFの機能がなくなったこと。つまり、周囲が暗くなったとき、走行中は任意でライトを消すことができなくなったということ。
停車中はライトをオフにすることはできても、暗いときはクルマが動き出すと自動的にヘッドライトが点灯することになっている。(スモールランプでも走行はできない)
【3】点灯時の応答時間
これも従来は基準がなかったが、新保安基準では2秒以内に点灯するのがルール。昼間でもトンネルなどに入ったときは瞬時にレスポンスしてくれる。
【4】消灯時の周囲の照度
新保安基準では点灯時だけでなく、消灯するときの周囲の照度にも基準が設けられた。
新保安基準では、7000ルクス以上になるとヘッドライトが消灯する。(従来は基準がなかった)
【5】消灯時の応答時間
消灯のタイミング、レスポンスに関しても従来は基準がなかったが、新保安基準では5秒以上、300秒以内と定められた。
1000ルクスは、ナイター開催時の野球場の外野席とほぼ同じ明るさで、「まだ明るい」と感じるかもしれないが、日没時刻の前後1時間のいわゆる薄暮時間帯は、交通死亡事故が多く発生することでも知られている。
この時間帯は、周囲の視界が徐々に悪くなり、自動車や自転車、歩行者などの発見がお互いに遅れたり、距離や速度が分かりにくくなるためで、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多い。
こうした事故を防ぐのに、ヘッドライトの早めの点灯は非常に有効で、また雨の日などもライトが点くことで被視認性が高まり、安全性が向上する。(ワイパーを動かすと自動的にヘッドライトが点灯するクルマもある)
またオートライトは、イグニッションキーと連動しているので、エンジンを切るとライトは自動的に消灯する。駐車時のライトの消し忘れが防止できるというメリットもある。
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