■スマホは不要、システム自体でGoogleの多彩なサービスが使える
さて、この新システムは実際どのような仕組みで何ができるのだろうか。
これまで、車載用インフォテインメントシステムでは各社独自の規格を除けば、Googleの「Android Auto」とAppleの「CarPlay」が代表的なものであることは多くの人が理解しているはずだ。
これらは基本スマホと対応する車載機器を有線または無線により接続することで、スマホ内にインストールされているカーナビアプリやエンターテインメント系、さらにSNS系アプリなどを車内で活用できるもの。とはいえ、これ自体は認知度自体は高まっては来たものの、まだまだ“発展途上”の段階である。
一方、今回の新システムは2017年5月にボルボとGoogleが共同開発した「Android Automotive OS」がベースとなっている。
ざっくりと言ってしまえば、従来スマホ側に組み込まれたOSを車載器側に持たせることでスマホ無しでGoogleのサービスをワンストップで利用できるわけだ。
このために、今回ボルボでは待望のテレマティクスサービスである「Volvo Cars app(ボルボ・カーズ・アプリ)」をスタートさせた。通信は4Gで専用モジュール(日本国内におけるキャリアはソフトバンク)を搭載することで、後述するGoogleの各種サービスのほか
【1】緊急通報サービス
【2】故障通報サービス
【3】盗難車両検索機能
【4】ドライビング・ジャーナル(ドライブログ自動作成機能)
【5】ビークルダッシュボードモニター(車両情報確認機能)
【6】リモートドアロックおよびアンロック機能
【7】エンジンリモートスタート
が使えるようになる。
ちなみに【1】と【2】に関しては新車登録時から15年間、それ以外は4年間無料で使えるが、その後は有償となる。ボルボはサブスクリプションを活用した料金プランを計画しているようだが、詳細な内容はまだ未定である。
ただ、プレミアムブランドといえ、いきなり高額のサービス料金が請求されるのはユーザー側も納得できないはず。現状イメージできるのは他のプレミアム輸入車ブランドが展開しているサービスの金額に準じてくるといったところだろう。
■話題のOTAに対応する
前述したサービスだが、実は【3】と【4】に関しても今回の試乗時には対応できていなかった。また自慢の音声認識システムにしても残念ながら日本語には未対応だった。
だからと言ってこのシステムがイマイチと考えるのは早計だ。冒頭から言っているように、今回通信機能を搭載することでソフトウエアのアップデートを車両側で行うことができる「OTA(オーバー・ジ・エアー)」に対応することで【3】と【4】に関しては2022年度中、音声コマンドの日本語対応に関しても2022年1Q中(初頭)に対応するとのことだ。
確かに現状ではやや未完成の部分はありながらも、これがIT企業の強みであり、今後の機能向上や逆にバグなどに対してもスピーディにアップデートできる点が大きな強みと言える。
■ミドルスペックのスマホ並みのパワー
期待を持って迎えられたこの新システムだが、車両に乗り込んだ瞬間はそれほど大きな変化は感じない。実際、センターコンソールに設置された9インチの縦型ディスプレイもパッと見た目の変化はわからない。
しかし中身はこれまでのSENSUSとは全く異なる。今回、このシステムの基本はIHU(インフォメーションヘッドユニット)4.0と呼ばれ、基本OSをAndroidで開発している。
スペックに関しては、CPUに2.4GHzのクアッドコアを採用、これに3Dコアグラフィックス処理を可能にするためのGPUを搭載する。この他にもアプリケーションの作業領域に影響するRAMの容量は4GB、各種データを格納するROMの容量は128GBと、現在のミドルクラスのスマホと同等の性能をもつ。
さらに今回メーターも新設計されたが、これを動作させるのはAndroid OSではなく「AUTOSAR」と呼ばれる車内のモジュール間を双方向でやりとりする共通プロコトルで動かしている。
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