今や全世界を席巻するようになったSUV。20年前はその名称すら浸透していなかった新ジャンルが自動車業界で圧倒的シェアを獲得するようになるとは、あの頃いったい誰が予想したことだろう。もちろん「売れる=魅力が高い」、ということは言えるだろうが、「デメリットだっていっぱいある!」という意見だってあっていいはずだ。
そこで今回は、あえて時代の流れに逆らう逆襲のコラムを紹介。清水草一が説得力たっぷりにカーマニアのためのSUV否定論を説きます! SUVファンの皆さまは読まないでください(笑)。
文/清水草一 写真/フォッケウルフ、いすゞ
【画像ギャラリー】これだけある! 最強ジャンル・SUVの弱点!?(10枚)画像ギャラリー■SUVがヒットする理由とは?
SUVの販売比率が年々高まっている。2017年は登録車の13%に過ぎなかったが、2020年は22%に増加した。わずか3年で1.7倍になったのだから、メーカーが開発に力を入れるのは当然だ。
しかし、海外ではもっとはるかに凄い。アメリカでは6割、中国で5割、欧州でも4割を超えている。全世界を平均すると、いまや乗用車の約半分はSUV。SUVが最もメジャーなボディタイプなのだ。日本は海外に比べると、まだまだSUV比率が小さいので、今後もっと伸びていくとみるのが自然だろう。
世界中で、なぜこれほどSUVが受けているのか? 海外の調査機関によると、その理由は、「運転のしやすさ、乗員の視界の高さ、室内空間の広さ、荷物の積み込みやすさ」とされている。通常の乗用車よりも着座位置の高いSUVは、そのぶん見晴らしが良く、遠くまで見通せる。視点が高いので車両感覚も掴みやすい。結果的に運転がしやすいというのは納得だ。
また、SUVは最低地上高が高いので、段差等に気をつかう必要性も薄い。これも運転のしやすさにつながっている。荷物が積み込みやすいのは、最低地上高が高く、そのぶんラゲージの床面が高いから。腰を折らずに荷物を積めるからラク、ということで、これまた一応納得である。
しかし、室内空間の広さという理由には、納得できない面がある。SUVは、たしかに全高は高いが、最低地上高が高いので床面も高く、室内高はそれほど確保できない。セダンやハッチバックなど通常の乗用車(という言葉は、もう使ってはいけないのですね……涙)よりは有利だが、軽トールワゴンを含むミニバンタイプには、まったくかなわない。
また、ミニバンであればボディ断面を真四角に近くできるが、それに対してスタイリッシュなSUVは、どうしてもボディ上部を絞ることになるから、トータルの室内容積では、ミニバンタイプの完勝となる。
この、「SUVは室内が広い」という海外調査機関の分析は、海外ではミニバンのシェアが猛烈に低く、完全にニッチであるがゆえのものだろう。逆に言うと日本では、ミニバンが異常に強いからこそ、SUV比率がまだ低いと言える。
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