2021年7月、7年ぶりにフルモデルチェンジしたトヨタ新型アクア。登場以降、売れ行きは好調で、登録販売台数ランキングでトップ10までの順位をキープし続けている。
本稿では、新型アクアの販売好調の理由や、長所と短所とは一体どこなのか? さらにライバル車である同門ヤリスとの比較を解説していく。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN
【画像ギャラリー】新型アクア登場で競争激化!! 国産3大メーカーの人気コンパクトカーをチェック(22枚)画像ギャラリー人気カテゴリーに登場した新型アクアの立ち位置
今はクルマの価格が全般的に高まった影響もあり、全長を4200mm以下に抑えたコンパクトカーの人気が高い。国内で新車として売られる小型/普通乗用車の約40%を占める。
2020年から2021年には、コンパクトカーの新型車が多く発売された。2020年2月にヤリスとフィット、年末にはノートとソリオ、2021年にはアクアとノートオーラという具合だ。
コンパクトカーは売れ筋カテゴリーだから、複数の新型車が一斉に発売されると、ライバル車同士の競争も激しくなる。あとから発売される車種は、先に登場したライバル車に比べると、価格を割安に抑えて買い得感をさらに強める。
この典型が2021年7月にフルモデルチェンジされたアクアだ。コンパクトなハイブリッド専用車で、先代(初代)モデルは2011年に発売され、好調に売られた実績がある。
先代モデルの2011年当時は、コンパクトなハイブリッドは車種が限られていたが、今は同じトヨタにもコンパクトなヤリスハイブリッドが用意される。ヤリスクロス、カローラセダン/ツーリング、カローラスポーツ、カローラクロス、カローラアクシオ/フィールダーにもハイブリッドがある。
そのために「もはやアクアの2代目は登場しないのではないか?」という見方もされたが、前述の通り2021年7月にフルモデルチェンジを行った。
アクア ハイブリッドだけで7251台売れた背景とは?
新型アクアの売れ行きは好調だ。小型/普通車の登録台数ランキングでは、発売直後の8月は3位、9月と10月は2位、11月は少し下がったが5位にランクされた。
しかもアクアはグレードが少ない。直列3気筒1.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドだけを搭載して、販売ランキングの上位に入った。
ちなみに小型/普通車登録台数が11月に1位になったカローラには、前述の通りセダン&ツーリング、スポーツ、継続生産型のアクシオ&フィールダーがあり、SUVの新型カローラクロスも追加された。そのためにカローラシリーズとして合計台数を増やしている。
2位のヤリスにも、SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスが含まれる。コンパクトカーのヤリスだけを算出すると、2021年11月の登録台数は5100台だ。ヤリスのパワーユニットには、ハイブリッドのほかに1Lと1.5Lのノーマルエンジンもあるが、アクアはハイブリッドだけで11月に7251台を登録した。
アクアがハイブリッドだけで売れ行きを伸ばす背景には、先代型からの膨大な乗り替え需要もある。販売店では「アクアは保有台数が豊富で、個人のお客様に加えて法人も多い。そのために先代型からの乗り替えが順調に進んでいる」という。ヤリスやカローラにもハイブリッドを設定しながら、アクアを存続させた背景には、先代型からの乗り替え需要を継承する目的もあった。そのねらいが当たり好調な販売に結び付いている。
アクアは商品力も高い。開発者は「ノートやノートオーラなどのライバル車を意識して、商品開発や価格の設定を行った」という。最近の新型車では「特定のライバル車は想定していない」「独自の価値を追求した」とコメントされることが多いが、アクアは違う。この背景にもコンパクトカーの厳しい競争関係がある。
そしてアクアの競争相手には、ノートやノートオーラ、フィットハイブリッドなどが想定されるが、小型/普通車登録台数ランキングの上位をみると、前述のようにカローラ、ヤリス、ルーミー、ライズ、ヴォクシーなどのトヨタ車が並ぶ。
2021年1~11月に国内で販売された小型/普通車の内、トヨタ車が52%を占めた。今は軽自動車の国内販売比率が37%に達するから、総市場に占めるトヨタ比率は33%だが、小型/普通車に限れば過半数に達するのだ。
そうなると、アクアの開発者は「ノートやノートオーラなどのライバル車を意識した」と述べたが、実際の小型/普通車市場では「トヨタの敵はトヨタ」だ。アクアは好調に売られるヤリスハイブリッドを超えることで、コンパクトカー市場を制覇できる。アクアにとって最も身近なライバル車はヤリスハイブリッドなのだ。
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