何度も記したようにフェラーリは本社の認めたイベントに積極的に参加するユーザーを歓迎している。その現場(サーキットやパーティ会場など)でマラネッロは常に顧客の志向性を調査、確認するわけだ。
■フェラーリの徹底した顧客志向。今後も矢継ぎ早に新モデルが投入されるだろう!
例えば、タワーの上層階に位置するVIPカスタマーからことあるごとに、「最近のニューモデルは空力デバイスが派手すぎて好みじゃない」という声が頻繁に上がるようになったとしよう。
ロードカーのデザインに対するカスタマーの反応がネガティブに触れ始めたと感じ取ったマラネッロは、歴史的モデルにインスピレーションを得た新限定シリーズのイコナでその賛否を確認(限定シリーズだから損はしない!)し、シンプルモダンデザインの好イメージを演出形成する。
それからローマや296GTBといったシンプルビューティを生み出した。フェラーリほど顧客の動向にセンシティブなカーブランドはほかにないというわけだ。
もちろん、そうやって獲得した生の情報をいち早く商品に落とし込む組織体制も重要だ。一例として挙げておきたいのはデザインセンターのインハウス化である。フェラーリといえば長年にわたってピニンファリーナというイメージだったが、458イタリアを最後にそのバッジをシリーズモデルに貼ることはなくなった。
これにより迅速かつ正確に顧客の望むデザインを市販できるようになったと言っていい。その他、開発部門への積極的な投資はもちろんのこと、工場への大規模投資(特にペイントやエンジン製造といった組み立て以前の領域)による自社完結型の設備構築も生産の迅速な立ち上げに寄与するものだ。
フェラーリの強さは一朝一夕ででき上がったものではない。そもそもの強さをさらに引き上げるための考え抜かれた戦略性があり、そしてマーケットも順調に拡大したからこそ「正のスパイラル」に乗った。来年以降にはさらに成長する可能性がある。フェラーリSUVやプラグインハイブリッドラインナップの拡大、さらにはフルバッテリーEVの開発も進んでいるからだ。
自動車界におけるハイエンドビジネスの最も成功した例として、マラネッロのフェラーリは今後もこの世界を牽引していくことだろう。
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