時代と共に変わる美意識を実感!! オラオラグリル変遷史

■レクサスのスピンドルグリルは「世界の糸巻き口」へ!

10月に世界初公開された新型LXのスピンドルグリルは超強烈! これはもうすべてを吸い込むブラックホールだ。今後すべてのスピンドルグリルがこの方向に進むのか注目するしかない
10月に世界初公開された新型LXのスピンドルグリルは超強烈! これはもうすべてを吸い込むブラックホールだ。今後すべてのスピンドルグリルがこの方向に進むのか注目するしかない

 高級車の世界に新たな基準を持ち込んだレクサスブランドだが、デザイン的には地味で、象徴となるアイコンを持たなかった。

 このままではドイツ御三家を超えることはできない。熟慮の末に投入されたのが、スピンドルグリルである。

 スピンドルとは「糸巻き」のこと。トヨタの前身は豊田自動織機、つまり糸巻きの会社。そのルーツを示した形状、という理由は実は後付けで、実際はエア導入口をバンパー下まで広げる過程で出てきた形状であったという。

 2012年に4代目GSで初登場した当時は、ムリヤリ後付けした印象も強く、大方の反応もネガティブだったが、トヨタは初志貫徹して試行錯誤を続け、まずはバンパーによるグリルの上下の仕切りをなくした。

 2年後、新型SUV「NX」が登場した時には、スピンドルグリルはボディのフォルムに自然になじみつつ、印象的かつ威圧的な、いい意味でのオラオラ感を獲得していた。

レクサス LX リア。顔に比べてすっきりとスタイリッシュな仕上がり
レクサス LX リア。顔に比べてすっきりとスタイリッシュな仕上がり

 その後のスピンドルグリルは、微妙に口を巨大化させつつリファインを続けているが、新型LXのソレは、ひとつの大きなブレイクスルーだろう。

 基本的には従来のスピンドルグリルを継承しているが、形状はシンプルに、開口部はより大きくなり、グリルの縁をなくすことで、輪郭ではなくグリル内の横桟による立体感で見る者を威圧する。

 まるでグリルの奥がブラックホールであるかのような印象を与えるこのインパクトは強烈! それでいてレクサスらしい気品もキープ。これを見たらもう、従来のスピンドグリルが時代遅れに感じる。早く全部コレにしてくれ!

■実は先祖返りの巨大化!? BMWのキドニーグリル

全世界から大ブーイングのM4のフロントフェイス。キドニーグリルは上下に巨大化したが、それでも「303」を見ると、「もっとデカくできないか?」という気分になるのは私だけだろうか
全世界から大ブーイングのM4のフロントフェイス。キドニーグリルは上下に巨大化したが、それでも「303」を見ると、「もっとデカくできないか?」という気分になるのは私だけだろうか

 このところ、世界のオラオラグリル界の台風の目となっているのが、BMWのキドニーグリルである。

 キドニーグリルが誕生したのは、戦前の1933年。21世紀生まれのアルファードやスピンドルグリルとは、歴史の重みが違う。その伝統あるキドニーグリルが、デリカシーなく巨大化しつつあるのを見て、茫然・憤慨しているカーマニアは数多い。

 が、キドニーグリルの元祖たる「303」を見ると、「こんなにデカかったのか!」とビックリする。当時のクルマの形状からすると、「顔面全部キドニーグリル」と言っても過言ではない。

 中高年世代の我々でも、記憶にある最も古いキドニーグリルは、名車「2002」あたりだが、その源流は、1961年の「1500」に求められる。戦後、自動車の進化によってボンネットが大幅に薄くなり、それに合わせると、キドニーグリルも小さくせざるをえなかったのだ。

 あんなに控え目だったキドニーグリルが、日に日に巨大化していくのを見れば、「世も末か……」といった感想を抱こうというものだが、実は大→小→大という、先祖返りだったのである。

BMW M4 リア。野太い4本出しのマフラーがオラオラといえばオラオラか?
BMW M4 リア。野太い4本出しのマフラーがオラオラといえばオラオラか?

 確かに現在のBMWは、不自然なほどキドニーグリルを巨大化することで、強烈なインパクトを狙っているが、そこには源流回帰という大義名分が存在する。

 近年BMWは、キドニーグリルを3種類作り分けている。7シリーズをはじめとするセダン系や、X7などのSUV系は、正方形化することで巨大化。一方スポーツモデルは、Z4と8シリーズが横長に巨大化、4シリーズは縦長巨大化だ。

 このうち、今後メインストリームとなるのは、世界中で大不評(?)の縦長巨大化だろう。新型EV「iX」を見れば一目瞭然。今のデザイントレンドは目立ったモン勝ち。オラオラこそ正義なのである!

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