■レクサスのスピンドルグリルは「世界の糸巻き口」へ!
高級車の世界に新たな基準を持ち込んだレクサスブランドだが、デザイン的には地味で、象徴となるアイコンを持たなかった。
このままではドイツ御三家を超えることはできない。熟慮の末に投入されたのが、スピンドルグリルである。
スピンドルとは「糸巻き」のこと。トヨタの前身は豊田自動織機、つまり糸巻きの会社。そのルーツを示した形状、という理由は実は後付けで、実際はエア導入口をバンパー下まで広げる過程で出てきた形状であったという。
2012年に4代目GSで初登場した当時は、ムリヤリ後付けした印象も強く、大方の反応もネガティブだったが、トヨタは初志貫徹して試行錯誤を続け、まずはバンパーによるグリルの上下の仕切りをなくした。
2年後、新型SUV「NX」が登場した時には、スピンドルグリルはボディのフォルムに自然になじみつつ、印象的かつ威圧的な、いい意味でのオラオラ感を獲得していた。
その後のスピンドルグリルは、微妙に口を巨大化させつつリファインを続けているが、新型LXのソレは、ひとつの大きなブレイクスルーだろう。
基本的には従来のスピンドルグリルを継承しているが、形状はシンプルに、開口部はより大きくなり、グリルの縁をなくすことで、輪郭ではなくグリル内の横桟による立体感で見る者を威圧する。
まるでグリルの奥がブラックホールであるかのような印象を与えるこのインパクトは強烈! それでいてレクサスらしい気品もキープ。これを見たらもう、従来のスピンドグリルが時代遅れに感じる。早く全部コレにしてくれ!
■実は先祖返りの巨大化!? BMWのキドニーグリル
このところ、世界のオラオラグリル界の台風の目となっているのが、BMWのキドニーグリルである。
キドニーグリルが誕生したのは、戦前の1933年。21世紀生まれのアルファードやスピンドルグリルとは、歴史の重みが違う。その伝統あるキドニーグリルが、デリカシーなく巨大化しつつあるのを見て、茫然・憤慨しているカーマニアは数多い。
が、キドニーグリルの元祖たる「303」を見ると、「こんなにデカかったのか!」とビックリする。当時のクルマの形状からすると、「顔面全部キドニーグリル」と言っても過言ではない。
中高年世代の我々でも、記憶にある最も古いキドニーグリルは、名車「2002」あたりだが、その源流は、1961年の「1500」に求められる。戦後、自動車の進化によってボンネットが大幅に薄くなり、それに合わせると、キドニーグリルも小さくせざるをえなかったのだ。
あんなに控え目だったキドニーグリルが、日に日に巨大化していくのを見れば、「世も末か……」といった感想を抱こうというものだが、実は大→小→大という、先祖返りだったのである。
確かに現在のBMWは、不自然なほどキドニーグリルを巨大化することで、強烈なインパクトを狙っているが、そこには源流回帰という大義名分が存在する。
近年BMWは、キドニーグリルを3種類作り分けている。7シリーズをはじめとするセダン系や、X7などのSUV系は、正方形化することで巨大化。一方スポーツモデルは、Z4と8シリーズが横長に巨大化、4シリーズは縦長巨大化だ。
このうち、今後メインストリームとなるのは、世界中で大不評(?)の縦長巨大化だろう。新型EV「iX」を見れば一目瞭然。今のデザイントレンドは目立ったモン勝ち。オラオラこそ正義なのである!
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