■自動運転よりも事故をしないクルマ造りを最優先するマツダ
では、CО-PILОT CОNCEPT 2.0を搭載した試作車両に試乗してみよう。
まずは助手席に座り運転席の試験官が居眠りの実演! 目を瞑ると直ぐに機器が反応して、センターディスプレイ、メーターパネルにアラートが表示され、クラクションが鳴り始める。外ではハザードランプが点滅して、さらにブレーキランプもフラッシングして外部の車両や人などに異常を知らせる。
ま、普通だったらこの時点で目を覚ますのだろうが、そのまま昏睡ということもありうる。さらには運転席で倒れ込む人もいるはず。
車内ではセンターディスプレイに「ドライバー異常を検知しました」と表示され、「ドライバー異常のため安全なところまで自動で走行し停車します」とアナウンスが流れる。
「減速します」、「左に進路変更します」、「500m先のパーキングに停車します」などとアナウンス。そしてパーキングに正確に停車したのだ。停車後はヘルプネットに接続してレスキューを呼ぶところまでやってくれる。
このあとボク自身が運転して、今度は倒れ込む演技で試してみたが、同じようにすぐに反応して安全にパーキングに停車した。
確かにこれなら意識を失ったとしても事故を起こす確率は大幅に低下するだろう。
これまでフラつきや眠気や脇見を検知してアラート等で警告する技術は市場導入してきているが、目を瞑っただけで居眠りを検知したことには感心する。
しかしこのドライバー異常検知システムは細かい。まず、その人の普段の運転操作から逸脱した運転をしていないかを診断しながら、頭部の傾きや挙動もセンサーリング。倒れ込みはこれで検知していたのだ。
さらに凄いのはドライバーの視線挙動を監視していて予兆をも判断することができるようになってきたという。
視線情報を基に脳がどう感じているのかをモデル化し、視線の向きに特定の個所への偏りが生じていないかを検知している。実際この偏りは脳疾患の有無によっても異なるのだそうだ。
詳しく言うと、交通事故は脳機能低下(内因性の病的なものも含む)によって引き起こされることが多い。
このような脳機能低下を前述した運転操作と頭部挙動、そして視線挙動の3つで判断するパラメータを持っているのだ。
今回の試乗では目を瞑って居眠りを装ったり、倒れ込んで病的異常を演技しての異常検知による安全退避停止までの体験をしたわけだが、実際に身体に異常を起こすドライバーは、さまざまな容態反応から脳機能低下を起こす。
事前にそれらの異常を予知検知できるようになれば、より安全な退避行動がとれるようになるだろう。
マツダの安全への取り組みの深さには感心させられる。
ところで、ドライバーが失神した状態での自動退避がとてもスムーズだったのだが、完全自動運転で三次試験場の外周路(ワインディング路)を走行する貴重な体験ができた。
完全に手放し、アクセルもブレーキもクルマ任せでの走行。このような自動運転の体験ができることはまったく予想していなかったのでとても驚いたのだが、その自動運転がこれまたスゴイのだ。
スイッチをONにすると発進しますとアナウンスがありスルスルと発進。安全のために退避していたパーキングからコースに進入。そしてどんどん加速してゆく。
トップスピードは120km/hほどまで加速。そして圧巻だったのはブレーキングとコーナリング。
まずコーナー進入へ備えるブレーキングがとてもスムーズ。初期制動から身体が前のめりになることもなく、いつの間にかコーナー進入適正速度に減速。かといって遅すぎるほどの速度でもなくコーナリングを始める。
この時のステアリングの切り込み方が素晴らしくスムーズで、切り足しもバツグンのタイミングで修正操舵がまったくなく、キレイにコーナーをクリアする。エイペックス付近からのアクセルОNのタイミング、さらにアクセルを踏み込んだ際の加速のコントロールもバッチリ。
三次試験場のワインディングはアップダウンも激しく、コーナーそのものも深く曲がり込んでいたり連続したり、我々プロドライバーをも唸らせるコースなのだが、自動運転というよりプロドライバーが運転しているよう。コーナリングも60km/h前後の速度で旋回するので横Gもそこそこ感じたのだ。
この自動運転、詳細地図が必須とのことだがほかにGPSとカメラだけでここまで仕上げていることに、マツダの技術力の高さを再認識させられた。今すぐにでもキムタクの「やっちゃえ日産」レベルの高速道路でのハンズオフは可能だろう。
それを敢えてやらず、CО-PILОT CОNCEPTに技術投入し「走る喜び」に共感するドライバーを守るマツダの企業ポリシーに激しく賛同した一日だった。
コメント
コメントの使い方