伊藤かずえさん愛車「初代シーマ」の魅力とは? レストアの意義と匠の技

伊藤かずえさん愛車「初代シーマ」の魅力とは? 日産レストアの意義にせまる

 銀座四丁目交差点にある日産自動車のショールーム「NISSAN CROSSING」。このショールームは話題の新車やコンセプトカーをはじめ、レーシングカーやヒストリックカーを展示し、日産の歴史を体感できる場所だ。

 このNISSAN CROSSINGに2021年12月8日~22日まで、ピカピカによみがえった初代シーマが展示されていた。このクルマのオーナーは大映テレビドラマを見ていたアラフィフの男性にとって憧れの俳優である伊藤かずえさん。

 30年以上という長い年月の間、シーマを愛車として所有。1年点検に出した際にディーラーから30年のお祝いをもらったということをインスタグラムに掲載したことがきっかけで、日産自動車がレストアを行うことになったのだ。(編注:Twitterにも投稿されている)

 ここでは、当時「シーマ現象」という社会現象を巻き起こした初代シーマとはどんなクルマだったのかを振り返りつつ、今回行われたシーマのレストアの意義を考えてみたい。

文/萩原文博、写真/NISSAN

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伊藤かずえさんが30年以上乗り続けた愛車 初代シーマの魅力

1988年に登場した初代シーマ(写真はタイプII リミテッド)

 1989年は日産スカイラインGT-Rが16年振りの復活をはじめ、クラウンを超えた高級セダンのトヨタセルシオ、世界的な2シーターオープンカーブームを起こしたユーノスロードスターなどが登場し、国産車のヴィンテージイヤーとして知られている。

 その前年の1988年、その後の高級セダンのトレンドを大きく変えたモデルが登場した。それが伊藤かずえさんの長年の愛車となっている日産初代シーマだ。

 初代シーマは当時の高級セダンとしてラインナップされていたセドリック/グロリアの上級モデルとして登場。車名も取扱ディーラーによってセドリックシーマ/グロリアシーマとなっていた。

 ライバルのクラウン、そしてセドリック/グロリアも当時は5ナンバーサイズが基本だったが、1987年に登場したクラウンハードトップ車に3ナンバーのワイドボディを設定。これに対抗するために、初代シーマは全車3ナンバーとなったのが話題となった。

 1989年に消費税が導入され、それまで自動車に課税されていた物品税が廃止された。初代シーマが登場した1988年当時は5ナンバー車の物品税が18.5%だったのに対して、3ンバー車は23%。高級な3ナンバー車は請託品とみなされて、重く課税されていた。

 しかし、当時はバブル景気真っ盛り。初代シーマはデビューから1年で約3万6000台が販売され大ヒットとなった。このバブル景気に支えられて、高額商品が売れることの象徴として「シーマ現象」と呼ばれたのだ。

 大ヒットした初代シーマは、Y31型と呼ばれる7代目セドリック/グロリアのプラットフォームを流用。上級グレードのタイプIIリミテッドなどには最高出力255psをする3L V型6気筒ターボ。そしてタイプI、タイプIIには最高出力200psを発生するV型6気筒DOHCエンジンが搭載されていた。

 極上の乗り心地を実現させるために、上級グレードには電子制御エアサスペンションを装着。このエアサスが中古車になると経年劣化によってヘタリ、リアがシャコタンのように沈むことが多かった。

 これまで、日産は会社が所有しているクルマをレストアすることはあったが、個人所有のクルマをレストアするのは初めてのこと。レストアとは「復元する」「復活させる」という意味があるが、今回のシーマのレストアは30年走行してきたクルマを、伊藤かずえさんが免許返納する約20年間乗れるようにしっかりとレストアされているという。

なぜ日産がシーマのレストアを手がけたのか

レストアが完了した伊藤かずえさんのシーマ

 今回、個人所有のクルマを製造・販売した日産がレストアを手がけるきっかけとなったのは、伊藤かずえさんがインスタグラムに写真を投稿したこと(編注:Twitterにも投稿されている)。

 30年以上初代シーマを愛車として大切にしていることから、日産社内でも何かできないかという声が上がった。そして、日産の国内マーケティング部門とグローバルマーケティング部門内のヘリテージ担当が共同でレストア作業を行うオーテックジャパンへ打診。その結果、オーテックジャパンが伊藤かずえさんのレストア作業を行ない完成したのだ。

 初代シーマのレストアでは、部品の再入手=オートリブによるシートベルトとセーレンによるシート表皮材が納期も含めて長く時間が掛かったとのこと。そして、これからも長く乗られるように電装のハーネス類も新調し、ウィンドシールドも交換している。

 また、オーテックジャパンの匠の技と心意気で、丹念な磨きや再生を行い、何でも新調すれば良いものではなく、「ついている部品は可能な限り尊重」しているという。

 現在、日本のクルマに対する税制は、伊藤さんの初代シーマのように1台のクルマを長く乗ると、懲罰のように自動車税が高くなる。まるで、思い出の詰まったクルマに乗り続けることが罪のようにさえ感じる。

 しかし、伊藤かずえさんのように1台のクルマを長く乗ることが尊いことであり、エコであると多くの人が考えるきっかけとなれば、旧いクルマを愛車として長く所有することができる。今回のレストアはこうしたクルマの税制に対して考えるきっかけとなってもらいたい。

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