出せば売れる? やっぱりセダン?? クラウンSUVの期待と懸念

出せば売れる? やっぱりセダン?? クラウンSUVの期待と懸念

 トヨタが誇る伝統セダン「クラウン」がSUVモデルになる報道やウワサを多くみられる。2021年4月の上海モーターショーでは「クラウン・クルーガー」が発表されたのも記憶に新しい。SUVの人気が高まっている今、クラウンもSUVになるのだろうか?

 そこで本稿では、「クラウン」SUVモデルで売れるのか、トヨタSUVラインナップでの立ち位置、そしてトヨタ伝統セダンブランドは維持し続けることはできるのかを考察する。

文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA

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ボディタイプを増やすことでクラウンの販売台数低迷を阻止か

2021年に中国で発売が開始された、クラウンブランドのSUV「クラウン・クルーガー」

 最近は「次期クラウンはSUVになる」という報道が多くみられる。中国市場ではクラウン・クルーガーも発表され、「クラウンもついにセダンを見限り、売れ筋カテゴリーのSUVに転向か?」という見方が濃厚になってきた。

 しかしそのいっぽうで、日本ではクラウンをブランド化する話も聞かれる。現行型を発展させた4ドアクーペ風のセダンに加えて、SUVも用意するやり方だ。クラウンにワゴン風の車種を追加する可能性もある。

 このようにクラウンを多様化させる理由は、売れ行きの低迷だ。クラウンの2021年1~11月における1か月平均登録台数は1800台少々であった。SUVのハリアーは6400台、ミニバンのアルファードは8200台だから、1800台少々のクラウンは大幅に少ない。

 ちなみにほかのセダンの売れ行きはさらに低く、カローラセダンは1200台少々だ。今はセダンが全般的に落ち込み、プレミオ&アリオンやマークXはすでに生産を終えた。

 しかしクラウンは、1955年に初代モデルを発売した伝統ある高級車だ。消滅させられず、車名も存続させたい。そこでSUVに変更したり、クラウンをブランド化して複数のボディを用意するアイデアが生まれた。

 判断が難しいのは、先に述べた1か月に1800台少々というクラウンの売れ行きだ。今の国内における新車の販売状況は、ヤリス、ルーミー、ノート、ライズといったコンパクトな車種に偏り、売れ筋価格帯が400万円以上の車種は売れていない。高価格車で堅調なのは、先に挙げたアルファード、ハリアー、ランドクルーザー(プラドを含む)、クラウン、オデッセイくらいだ。

 クラウンは1990年には、1か月平均で1万7300台を登録していた。今の登録台数は当時の約10%だが、現時点ではこの売れ行きでも販売の貴重な高価格車に含まれる。国内販売を支える大切な車種だから、廃止しにくい。

 そこでクラウンをSUV化するのだが、ブランドイメージを考えると思い切った戦略だから、最初はセダンを残しながらSUVも併売する。そのあと、クラウンの車名を冠したSUVが好調に売れてセダンが低迷を続けたら、セダンを廃止する可能性もある。

 この戦略は今のカローラと同様だ。カローラも従来はセダンとワゴンが主力だったが、現行型は5ドアハッチバックのスポーツ、SUVのカローラクロスと選択肢を充実させた。

 ボディタイプを増やすメリットとして、クラウンとしての登録台数を伸ばせることも挙げられる。日本自動車販売協会連合会のデータでは、車名が同一であれば、シリーズを合計して公表するからだ。

 例えばカローラの場合、2021年11月にはカローラクロスが7300台登録された。その結果、「カローラ」の総台数は1万3631台に達して、小型/普通車の登録台数1位になった。SUVのカローラクロスを加えたことで、カローラがトップに躍進したわけだ。

 今後、クラウンとそのSUVモデルがどのようなスタイルで登場するかは分からないが、現時点でトヨタのSUVラインナップはかなり完成している。その内容は以下の通りだ。

クラウンのSUVモデルが投入された場合のトヨタSUVラインナップ

 上記のように、コンパクトサイズにはヤリスクロスとライズ、ミドルサイズにはC-HRとカローラクロス、LサイズにはハリアーとRAV4がある。さらに後輪駆動の本格オフロード派としてランドクルーザープラドも選べる。プレミアムモデルのランドクルーザーも含めると8車種で、トヨタのSUVラインナップには隙がない。

 ここにクラウンのSUVモデルを加えるとすれば「空席」は限られる。ハリアーの上級モデルしかない。ハリアーの全長は4740mmだから、クラウンのSUVモデルは、全長がクラウンセダンと同等の4900~5000mmになる。クラウンのSUVモデルもシティ派SUVだから、プラットフォームは前輪駆動がベースだろう。そうなると基本部分は、次期レクサスRXなどと共通化される。

 中国仕様のクラウン・クルーガーは、外観をRAV4と同様のラフロードSUV風に仕上げたが、日本で販売するクラウンのSUVモデルは、もっと都会的だ。まさにハリアーの上級仕様で、レクサスRXをトヨタブランドに変えたようなクルマになる。

 問題は売れ行きだ。今はSUVの人気が高いから、ハリアーの上級に位置する車種を投入すれば、好調に売れるだろう。もともとハリアーは、セダンでいえばマークXに相当するSUVだから、クラウンのSUVモデルを投入しても喰い合いにならない。両車は共存して、好調に販売される。

 クラウンのSUVモデルを購入するのは、ハリアーなどからの上級移行に加えて、クラウンセダンやアルファードからの水平的な乗り替え、輸入SUVのユーザーも期待される。クラウンを名乗る以上、周到に開発されるから期待は裏切られない。

 その代わり併売されるクラウンセダンは、SUVモデルに需要を吸収され、売れ行きをさらに下げるかもしれない。そうなると最終的にクラウンセダンが廃止され、SUVのみになる可能性もある。

 仮にSUVだけになったら、果たしてクラウンと呼べるのか。セダンを廃止するなら、ハリアーの上級車種を別の車名で開発しても同じだろう。

 そして車名を踏襲しながら、コンセプトやカテゴリーを変えて、長く生き残ったクルマはほとんどない。クーペからセダンまでカテゴリーを変えた日産レパードは、印象に残るクルマだったが、販売面では失敗して廃止された。

 インサイトは、ハイブリッド専用車という共通性を持たせながら、フルモデルチェンジの度にクーペ、5ドアハッチバック、セダンとカテゴリーを変えた。今でもセダンの現行型が生産されているが、売れ行きは低迷している。

セダン「クラウン」が生き残る道はあるのか

国産セダンの代表格である「クラウン」。15代目となる現行モデルは2018年登場

 要は「車名とは何か」という問題だ。単純に「クラウン」を残すなら、SUVに変更して存続させる方法もあるが、クラウンの高級感、走行安定性、快適性までSUVで継承するのは難しい。

 なぜならクラウンの特徴は、セダンボディを採用したことで、進化してきたからだ。セダンはSUVに比べて天井と重心が低く、カーブを曲がる時には左右に振られにくい。後席の後ろ側には骨格や隔壁があり、ボディ剛性を高めやすい。そうなれば走行安定性と乗り心地を保つうえで有利になる。

 さらに後輪が路上を転がる時に発する音も、後席とトランクスペースが分離されたセダンであれば、居住空間まで伝わりにくい。静粛性を向上させるうえでも、セダンは有利なボディ形状だ。このようにクラウンが備える高級車のイメージは、セダンボディでなければ実現できなかった。

 クラウンもかつては、複数のボディを用意しており、商用車のピックアップトラックやバンを選べた時期もある。それでもクラウンの本流は常にセダンであったから、走行安定性、乗り心地、静粛性の優れたクラウンの高級感が保たれた。販売の見込めるSUVを加えて、クラウンを存続させる方法は有効だが、セダンを廃止すればクラウンの伝統的な持ち味も消滅してしまう。

 結局のところ、クラウンはセダンで頑張るしかない。現時点でセダンの国内販売は低迷しているが、輸入車のメルセデスベンツCクラスやEクラス、BMW3シリーズでは、依然としてセダンボディが売れ筋だ。メルセデスベンツやBMWのセダンが売れて、トヨタのクラウンがダメということはないだろう。

 クラウンには、セダンを諦めず、いろいろなチャレンジをして欲しい。セダンを造り続けることが、クラウンのブランドイメージを支え、走行安定性と乗り心地、つまりクラウンの安心と快適を進化させる。クラウンのSUVモデルは、それを受け継ぐ存在だ。あくまでもセダンあってのSUVになる。

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