■すでにレベル4技術を手にしているホンダ しかし……
話をわかりやすくするため、車種ごとの自動運転領域を定めたロードマップから簡単に紹介したい。かねてより内閣府では、自動運転普及のロードマップを自家用(乗用車)、物流サービス(商用車)、移動サービス(MaaS/小型バスをイメージ)に分類して普及を目指している。
このうち自家用のレベル4は2025年目処、移動サービスでは2020年までに実用化すると公表。ちなみに、物流サービスはトラックの隊列走行が自動化レベル定義にそぐわないことからレベル表記は行なわれない(2021年6月末時点での国の指針)。
「なんだ、2025年には乗用車のレベル4が市販化されるの?」と思われるだろう。たしかに技術の上で完成し、法整備も限定領域のなかでは着実に進められている。ホンダ発ではないかもしれないが内閣府が力強く掲げる以上、2025年の市販化には帳尻を合わせてくるはず。
でも、誰もが購入できる車両価格になるのはずっと先。それが冒頭の2030年、2050年にあたるのだ。
裏付けはレベル3のレジェンドにある。確かに販売されたが100台の法人リース販売に限定。筆者(法人)もそのうち1台をなんとかして手に入れたいとディーラーで商談に臨んだが、リース提案書(見積書みたいなもの)を見てビックリ!
リース料は月々30万円を優に超え、3年間契約のみ。リースアップ後は返却しなければならない。1万円強/日でレンタカーを3年間、借り続けるようなもの。
世界初のレベル3車両を喉から手が出るほど欲したが、まったく歯が立たず諦めました。レベル3でこれだから、より高度になるレベル4では、もっと高価になることが容易に予想できる。
こんな感じで2025年に実用化されるであろうレベル4車両は気軽に購入できないだろうが、提供される自動走行環境はすばらしいハズ。さらに自家用の実用化と並行して、移動サービスのレベル4も実用化へ向けて突き進む。
2016年7月に世界で初めてドライバーレスのレベル4営業運転を行なったスイスのバス事業者を現地で取材したが、もうその時点で見事な自動走行を披露していた。将来的にはドライバー不足の課題も解消するとして期待されているが、労務関係が複雑であることから、残念ながら現時点では解決していない。
■レベル3とレベル4の間の高い壁
では、そのレベル3とレベル4の違いだが、改めて自動化レベルの規定項目から整理したい。
レベル3車両は「条件付自動運転車(限定領域)」であると国土交通省が名称を定めた。ハンズフリー(ハンドル操作不要)、フットフリー(ペダル操作不要)、アイズフリー(安全確認不要)を実現し、システムが正しく機能している場合に限り自律的な自動走行が行なわれる。
レベル3の自動運転にはODD(Operational Design Domain/運行設計領域)と呼ばれる条件がついた。ODDの条件から外れた(例/上限速度を超えた)場合には、ドライバーが運転操作をすることが求められ、その求めにすぐ応えられることがレベル3稼働の約束事になる。
だから、レベル3は「条件付自動運転車(限定領域)」なのだ。
それが一段上のレベル4ではどう変るのか?
まず呼び名は「自動運転車(限定領域)」となり、レベル3にあった“条件付”が消える。では、“いつでも、どこでも、どんなときでも”自動運転ができるのかといえば、そうではない。レベル4にも“限定領域”と文言が加わる。
ちなみにレベル4には「特定条件下における完全自動運転」という別名もあるが、定義していることは「自動運転車(限定領域)」と同じ。
レベル4での限定とは、たとえば高速道路だけだったり、空港周辺道路のみだったり「走行道路」によるものがひとつ。さらに車速が極端に低かったり、昼間の間だけだったり「自動化される運転内容」によるものも、そうした限定に含まれる。
レベル4でも条件が付く(=ODDがある)ことから自動走行が可能な状況はレベル3とそう大きくは変らないという声もある。もっともレベル3とレベル4では天と地ぐらい技術的な開きがあるが、ユーザーが体感できる自動走行環境だけに限れば、確かにその違いは少ない。
では、レベル3との決定的な違いはどこか?
それは、ドライバーに運転操作を求めないことだ。TOR(Take Over Request/ドライバーへの運転操作要求)と呼ばれるレベル3に存在した条件がレベル4には存在しない。
正確には、天変地異やもらい事故などによる緊急時には同乗スタッフや監視センターから人の遠隔操作が入るが、基本的にはドライバーレスな運転環境がもたらされる。さらに運転操作の責任はすべてシステムが負うと定められた。これはとってもすごいこと。
まとめるとレベル4は、ドライバーが介入せずとも一定の条件のなかであればシステムが主体となった自動運転が完結し、危険を察知すれば事故になる前に停止して安全な運転環境を保てる、そんな自動運転技術だ。
そしてこの高い有用性があるからこそ、レベル3以上に車両価格が高額になる自家用車での普及を待たずして、移動サービスでのレベル4、つまりMaaSなどの小型バスなどによる「自動運転車(限定領域)」の実用化が進められてきた。
2015年あたりから全国各地での実証実験が活発に行なわれてきたのは、運輸事業や旅客自動車運送事業が陥っている慢性的な人手不足の早期解消の意味も含まれている。
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