■ディーラーでの温度差に浮かび上がるインフラ整備の課題
PHEVにて補助金で盛り上がりを見せる三菱系ディーラーだが、長年初代リーフからBEVの販売を続けている日産系ディーラーでは反応はいまひとつ。
「長年BEVを販売してきましたが、いまだにお客様への販売では敷居の高さを感じます。充電インフラが十分整っていないなか、こちらから積極的に売りこむことはできません。あくまで興味を持たれたお客様へ販売するしかありません」とは、日産系ディーラーセールスマン。
日産では2022年に軽規格のBEVを発売予定なのだが、日産系ディーラーセールスマンのなかには、「リーフより売るのは難しい」とする声も聞く。
ましてやアリア(日産のクロスオーバーSUVタイプのBEV)のようにオンライン販売メインで、「ディーラーでも売っていいよ」というノリを軽規格BEVでもトレースすれば、まさしく軽規格BEVに興味のある人にしかアピールすることはできないだろう。
2022年1月27日から段階的に販売開始予定となる(本校執筆時点)、アリアでは、オンライン予約販売が始まったころに、日産系ディーラーを訪れてアリアについて尋ねると、「あのネットで売っているクルマですね」と完全に他人事状態のようであった。
「オンラインで受注は受け付けるけど、納車とその後のメンテナンスはディーラーにお願い」と、面倒なことはディーラーに丸投げというのでは、メーカーの完全子会社的立場のディーラー以外とはいらぬ感情的な軋轢を生むだけ。
すべてのディーラーがメーカーと資本関係があり子会社的立場ではなく、そのなかでオンライン販売を重視したいのなら、納車及びメンテナンス窓口も既存ディーラーとは別に整備すべきとも考える。
欲しい人はオンラインでも買ってくれるだろうが、消費者の多くにはHEV(ハイブリッド車)を除いた電動車はなじみの薄いもの。
最寄りのディーラーでセールスマンの丁寧な対応というものは消費者の安心感を招くので軽視すべきではないとも考える。“欲しい人”が一通り購入してしまえば、その後は“買ってもらう”ための販売促進活動が必要となる。
そこでオンラインより戦力になるのは、やはり地元に根づいたメーカー系ディーラーとなることはくれぐれも忘れないでほしい。
■高額の補助金が見込まれるFCEVだが……
最大250万円の補助金が交付されるFCEVでは、経済産業省の資料によると、ZBA-JPD10、つまり初代ミライについて227万円を補助見込み額としている(2代目は140万3000円)。
「メカニズムに興味があるとか、気候変動対策に貢献したいなど、特別な思いがなく、同水準額を新車購入に充てるとすれば、リセールバリューが抜群に良く、値引きもかなり大きいアルファードを買ったほうがいい“買い物”とも考えられます」とは事情通。
とにかく充電インフラすら十分に整備されていないなか、FCEVに充てんする水素を供給する水素ステーションははるかに少ない(韓国よりは圧倒的に多いとはいうが)。ある地域では最も近い水素ステーションまで片道1時間ほどかかるそうで、水素を充填しに行くたび“ちょっとしたドライブ”ともなっているとのこと。
水素ステーションは営業時間が短く、また定休日もあり販売現場では、「とてもではないが、こちらから『買ってくれ』とはいえない」という状況になっているように見える。
このような環境下で高額な大型セダンスタイルのミライに興味を示すのは、地元の有力企業の経営者など、所得に余裕があり、車両を複数所有している人(ほかにガソリン車を持っている人)が目立つとの声も聞く。
なお、韓国のヒュンダイ自動車が日本市場での乗用車販売再参入を行うのではないかとの報道が相次いでいる。情報によると、ヒュンダイ自動車は内燃機関での日本車との真っ向勝負を避け、燃料電池車ネッソをメインとするクリーンエネルギー車で再参入するようである。
そのため、数年前よりネッソのサンプルモデルを日本国内に用意し、メディア関係者などに積極的に試乗してもらうなどしていたようである。ネッソはクロスオーバースタイルのFCEVとなり、それならば若い世代も興味を示すかもしれない。
すでに2020年よりほぼ東京都内のみとはなってしまうが、某カーシェアリングサービス会社に車両供給しており、正式にネッソが再参入の旗頭となればFCEVでも十分商機ありと考えているのかもしれない。
事情通は、「『補助金を交付するから消費者は積極的に買ってくださいね』とするだけでは、行政の対応は手薄といえるでしょう。充電スタンドをガソリンスタンド並みの数にすることと、充電に時間がかかるなど手間を省くべき努力も必要と考えます。手間については技術の進化も必要となりますが、インフラ整備の加速化と拡充はできるはずです。
“いままでの政府対応が怠慢”とまでは言いませんが、残念なことに自動車ユーザーの多くはすでに、『BEVなどクリーンエネルギー車は高くて面倒くさい』とネガティブイメージを持っているので、今後の車両電動化の普及は“マイナスからのスタート”ともいえるでしょう。
『日本の発電は化石燃料によるものが大半なのだから、クリーンエネルギー車に乗っても温室効果ガスの出口が変わるだけ』とも消費者の多くは思っています。
つまり政府の本気度が伝わってこないので、言われるがままクリーンエネルギー車に乗り換えると騙されているようにも感じる人も少なくないと言っても過言ではありません」と語る。
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