■ユーザーの疑念を打ち消すのは政府の本気度
欧州やイギリスの2035年から事実上の内燃機関車販売禁止というものも、「本当にできるの?」と思ってしまいがち。欧州委員会は2月2日に、原子力発電およびLNG(液化天然ガス)発電が脱炭素社会に貢献するとして、“グリーンエネルギー”として認定する方針を発表し、加盟国間で賛否が飛び交う大騒動となっている。
原発はともかく化石燃料であるLNGでの発電を“持続可能”とする動きに、欧州の“完全脱炭素化”への動きの“ほころび”を見たのは筆者だけだろうか。アメリカのバイデン政権のように、「2030年までに新車販売台数の半分以上をBEVやFCEV(燃料電池車)にする」との政策は、広い自国の国土といった事情を考慮した現実的なものだと納得できる。
日本のバス業界では、すでに国内販売を行っている中国BYD汽車のバスを導入する動きがここのところ目立っている。一般路線バスをメインとしたBEVバスの導入については、現状では外資、しかも中国頼みといった流れとなっている。
しかし、北京オリンピック閉幕後には、台湾問題が再燃するのではないかともいわれており、日本政府のいうところの“経済安全保障”の面では不安が残る。
つまり、仮に中国製路線バスが多く走るようになったとして、中国との政治的対立が悪化すれば補修部品の出荷停止などを中国政府が実行しかねないというリスクがある。
地理的にも、電動車の普及状況を見ても日本の電動車普及について中国の存在は大きいが、リスクは十分考慮しなくてはならないという慎重な見方もある。
しかし、日系メーカーは電動車ラインナップでは世界的に見ても出遅れイメージはぬぐえないので、すでに営業運行実績のある中国のBEV路線バスやタクシーの国内導入は公共輸送機関の電動車普及促進の早道であることは間違いない。
乗用車については、韓国ヒュンダイ自動車が2月8日に“ヒョンデ”として、日本国内での乗用車販売の再参入を発表したが、発表された導入車両はBEVとFCEVであった。欧州ブランドも日本市場へ積極的にBEVを導入しており、いまのところ中国抜きとはなるが外資リードで普及が進んでいくことになりそうだ。
しかし、より本格的な電動車導入を考えるならば、政府の覚悟ではないが、電力供給インフラの再構築も含め、国民が疑念を持たず政府を信じられるような、詳細で積極的な情報提供を政府が行う必要があると考える。
前述した中国の様子だが、本音の部分では中国人民の大半、富裕層ほど政府を信じていないという話を聞いたことがある。政府との信頼関係の低さが電動車普及を遅らせる一因のようにも見え、国民の政治不信では日本も中国並みといっても過言ではないので、そこを筆者は不安視している。
“電動車用意して補助金つければ普及するだろう”などと安易には考えてほしくない。BEVへ否定的ではなく、興味がある人は大半のようだと筆者も考えている。しかし「ガソリン車と比べると不便だからねえ」と漠然としたイメージが定着しているのも確か。
メーカーは優秀な電動車を世に送り込むことはできるが、庶民の政府への不信感のようなものを拭うことはできない。それは、民間へ丸投げできない、政府しか行うことができないものと考えているし、政府への信頼が高まらない限りはなかなか前へは進むことはないだろう。
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