これでは買いたくても買えない!! トヨタのEV戦略で改めて考える 電動化に必要なのは何か?

■いまだ不安の残る政府のEV普及策と充電インフラ

2021年12月に発表されたトヨタのBEV戦略。インパクトは大きかったが、ユーザーをBEV購入に向かわせるかはまだ不透明だ
2021年12月に発表されたトヨタのBEV戦略。インパクトは大きかったが、ユーザーをBEV購入に向かわせるかはまだ不透明だ

 ただこの政府の動きは、2030年代半ばまでに内燃機関搭載車を全廃するのではなく、内燃機関を搭載するHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)も含めて車両電動化を進めるとされているからである。

 この話は経済産業省マターとなり、経済産業省は一般乗用車ベースのBEV、PHEV、FCEV(燃料電池車)についての購入補助金制度を2021年末にスタートさせたが、国土交通省ではバスやタクシー、トラックなど、いわゆる“はたらくクルマ”の車両電動化に対する購入補助金制度を用意している。

 同じ時期に欧州では内燃機関の全廃を行う予定としているのを見ると、「政府はどこまで本気なのか?」という疑念を持つ人も少なくない。さらに電動車普及に対する制度作りや充電ステーションの拡充など、インフラ整備がなかなか進んでいないような様子にも不安を覚えている。

 2022年1月6日から7日にかけ、東京では4年ぶりとなる大雪警報が発表された。降雪地域にお住まいの人から見れば笑われてしまうような積雪量で、東京都や隣接県は大騒動となった。

 報道によると、1月6日に東京電力は北海道、東北、中部、関西の各電力会社に電力の融通を要請したことを発表した。暖房利用の増加などで電力供給が非常に厳しくなったのがその理由とされている。

 真冬の寒波だけでなく、真夏の尋常ではない気温上昇などが起これば、やはり電力供給のひっ迫ということが起こっている。消費者としては当然、「いまでさえこんな状況なのに、BEVを増やして大丈夫なのか?」と疑問を持つのは当然の流れ。しかし、電力会社はもとより、政府はその明確な答えを示していない。

 すでに公共駐車場やショッピングモール、一部メーカー系新車ディーラーなどにBEV向け充電施設が設置されている。

 だが、「順番待ちで時間がかかる」とか、「ようやく充電施設に到着したら故障中だった」、「集合住宅なので、戸建てのようにホイホイと充電施設を設けられない」などネガティブな情報は、それほどクルマに詳しくない人の耳にも入っている。

 つまり“BEV元年”としても“ゼロからのスタート”ではなく、根拠の有無は抜きにしてもネガティブイメージが広まっているので、“マイナスからのスタート”となるといっても過言ではないだろう。

■EV先進国の中国でも意外と伸び悩む電動化

日本でも有名な中国の『格安マイクロBEV』宏光 MINI EV
日本でも有名な中国の『格安マイクロBEV』宏光 MINI EV

 世界的に特異な政治形態となり、スピーディーな政策実行ができるのが中国。その中国は世界一の電動車普及国とされている。

 中国汽車工業協会の統計によると、2021暦年締めでの中国国内における年間新車販売台数は2627万5000台となり、そのなかで新エネルギー車(BEV、PHEV:プラグインハイブリッド車)の年間販売台数は354万5000台となるので、新エネルギー車は新車販売全体の約13.4%となっている。

 初めて新エネルギー車の年間販売台数が300万台を突破したとされているが、販売比率が全体の13%ほどというのを聞いて、「意外に少ないのだな」と感じた人も多いだろう。

 以前は新エネルギー車の売れ筋といえば、欧州高級ブランドのPHEVなどが名を連ねていた。

 しかし、例えば2021年12月単月での車名別新エネルギー車販売トップ10を見ると、1位は日本でも有名な激安マイクロBEVとなる、上海通用(GM)五菱汽車の“宏光MINI EV”となり、これを含むトップ10のなかでの中国系メーカー車は7車入っている。

 外資ではテスラが2台、そして唯一PHEVとして、そして唯一の日系車としてランクインしているのが、ホンダCR-Vの兄弟車となる広汽本田(広州ホンダ)のブリーズ新能源(新エネルギー)。

 中国系メーカーのラインナップをみると、マイクロBEVは複数のメーカーでもラインナップしているがそれほど多くなく、SUVやセダンタイプなどバラエティに富んでいた。中国車では珍しいステーションワゴンとなる、上海汽車の“栄威(ロエベ)Ei5”は4位となっている。

 大都市でタクシーとしても多く走っており、フリート販売もランキング上位入りに貢献しているのかもしれない。

 中国ではナンバープレートの発給規制地域でも優先発給されるなど、補助金も含め新エネルギー車購入に関するインセンティブは手厚いものとなっている。そして政府の意向がスピーディーに徹底される国でもあるのに、いまだに新エネルギー車の普及は販売台数全体の2割にも到達していない。

 街なかを見ると、年式の古いクルマも多く走っている。車齢が長くなっているようにも見えるので、新エネルギー車への乗り換えに限り、下取り査定額などへ政府が助成金を出すなど、乗り換えを促進する政策を積極的に進めるのもいいかもしれない。

 早い時期から原動機付き自転車(原チャリ)がほぼ電動化されており、電動車に馴染みある生活を送り、さらに政府の強い指導力もあるというのになかなか普及しない様子をみると、電動車普及の難しさというものを感じざるを得ない。

 政治の力が強い中国でも、政府の肝いり政策でもある車両電動化は思うように進んでいないように見える。それなのに、首相がコロコロと方針変更や発言を訂正し、中国のように強い政治主導力もない日本で10数年後に電動車以外の販売を禁止することなどできるのかと疑問に思うのも自然の流れである。

 しかも、政府の言うことを信じて割高な電動車を購入したところ、生活困窮者救済の立場から軽自動車やコンパクトカーなど、一部車種について内燃機関車を2030年代半ば以降も継続販売するなど、梯子を外すようなことを政府が行うのではないかとの疑念を持つ人も多い。

 現首相の言動を見ればそう考えるのも至極当然である。「どうせできるはずがない」とはじめから思っている人も多いだろう。

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