■ガソリンスタンドを一方的に責めることも難しい
では仮に補助金が100%小売価格の抑制に反映されない状況が続いた場合、ガソリンスタンドの経営者を責めるべきか、というとそれもやや違うかもしれません。
というのも、ガソリンスタンドの数はピークの1994年の6万カ所から昨年3月末時点で2万9000カ所へと半数以下になっていて、その大きな理由は、そもそも利幅が薄く儲かる商売ではないこと、後継者不足、老朽化対策費用の増大となっています。
原油の価格が上がった時、ガソリンスタンドがその全てを小売価格に転嫁するのがなかなか難しい状況であること、そもそも非都市部では地域の交通インフラを支える存在として「儲からないからガソリンスタンド辞める」とはなかなか言い出しにくい状況であることを考えると、今回の補助金すべてを消費者に還元するのは、特に非都市部ではかなり難しいかもしれません。
■単純平均価格を元売りへの補助金で低く抑えようとする政策の問題点
今回の補助金を決定する際に参照されるレギュラーガソリン・全国平均価格の計算方法は、石油情報センターによる全国2000カ所程度のガソリンスタンドに対しての価格調査の単純平均に基づいています。
実際の経済効果を考えるのであれば、それぞれのガソリンスタンドの小売価格だけではなく販売数量も考慮に入れるべきなのですが、そうはなっていません。単純化した例で言うと、1リットル160円で大量のガソリンを売るスタンドと、1リットル180円でわずかしか売らないスタンドが同等にカウントされ、単純平均が170円と算出されています。
また単一の都道府県での調査対象は最低30となっています。全国で最も給油所数が少ない鳥取県は213しかガソリンスタンドがなく、そのうちの少なくとも30が調査対象となっています。
鳥取県の2020年度のガソリン消費量は約25.2万klと、日本の総消費量の0.6%以下ですが、ガソリン価格調査約2000サンプルのうち30以上、すなわち1.5%以上含まれます。
つまり一般にガソリン価格が高く、販売量の少ない非都市部の価格によって平均値が歪められている可能性が高いように思われます。
そもそも消費者の負担を低減することを目的とするなら、単純平均価格ではなく販売量で加重平均した価格の急上昇を防ぐことを目標にすべきです。
また元売り会社に対する補助金により単純平均価格を誘導することは、平均値の歪みがあるので難しいということも言えるかと思われます。 この歪みの存在も、補助金の効果が我々に感じられにくい原因の一つだと考えられます。
ちなみに資源エネルギー庁が発表した1月31日時点と2月7日時点のレギュラーガソリン平均価格が下がった都道府県、同じだった都道府県は以下の通り。価格が下がった都道府県は8、同じだった都道府県は7となっています。これ以外の都道府県では価格が上がっているのですから一般ユーザーが補助金により、下がったという実感が湧かないのは当然のことといえます。
■レギュラーガソリン平均価格が下がった都道府県(1月31日→2月7日)
宮城県:167.1円→166.1円
愛知県:167.6円→166.9円
三重県:169.7円→169.6円
富山県:170.9円→170.7円
京都府:175.0円→174.8円
岡山県:166.1円→165.9円
熊本県:170.4円→170.3円
長崎県:178.4円→178.3円
■レギュラーガソリン平均価格が下がった都道府県(1月31日→2月7日)
福島県:168.6円→168.6円
東京都:173.0円→173.0円
長野県:178.0円→178.0円
静岡県:170.9円→170.9円
岐阜県:172.0円→172.0円
徳島県:166.7円→166.7円
福岡県:170.1円→170.1円
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