9年後(というよりはもうほぼ8年後だが)というのは近くて遠い、予測の難しい近未来だ。世界が大きく変容している可能性も、していない可能性もある。
水素燃料、eフューエルなどの次世代燃料や、国交省が2023年からの実用化を目標に掲げている空飛ぶクルマなどの新技術、あるいは燃費技術の向上、EVの普及などで激減が予想されるガソリンスタンドの将来まで、8つのテーマについて予測してみたい。2030年の日本クルマ界はどうなっている?
※本稿は2021年9月のものです
文/岩尾信哉、諸星陽一、高山正寛、斎藤 聡、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年10月10日号より
■代替燃料
近い将来においても代替燃料が石油由来の化石燃料にコスト面や使いやすさで上回るのは難しい。まず生産に莫大なコストがかかるようではダメ、運ぶのに手間がかかるようでも社会に受け入れられない。10年そこそこでビジネスベースに乗せられるといった簡単な話ではない。
カーボンニュートラルを実現するための代替燃料には、水素燃料のほか、「e-fuel」といった、空気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーで生成した水素を反応させて生み出す合成燃料や、炭素を含まず水素を生成できるアンモニア、トウモロコシや藻類などから作るバイオ燃料がある。
ただし、まだまだどれも生産に手間がかかることは事実。
例えば「e-fuel」は日本も将来に向けて研究開発を進めており、内燃機関を利用したカーボンニュートラルのハイブリッドシステム開発を狙っているようだが、現実は厳しい。
古くからあるバイオ燃料でさえ、植物由来などのため生成に時間がかかってしまい、穀物相場の影響も常に存在する。
いずれもコスト課題をクリアするのは簡単ではなく、現状で公的な実証実験までたどり着けていれば御の字といったレベルで、残念ながら量産に届いていないだろう。しぶとくエンジン車が生き残っている風景が2030年でも見られるはずだ。
(TEXT/岩尾信哉)
■空飛ぶクルマ
「空飛ぶクルマ」というと、胸の高鳴りを抑えられないが、我に返ってよく考えれば「路上走行が可能なドローン」であり、さらに落ち着いて考えると、法律とインフラの整備が簡単でないことは明らかで、実験レベルから抜け出すのはかなり難しい。
2030年なら荷物を運ぶイメージはできても、ヒトを運ぶのは命に関わることだからハードルの高さが見えてくる。
研究開発が動きだしたのは2018年頃。「空飛ぶクルマ」の肝となる技術は電動化や自動操縦、垂直離着陸など。新たなモビリティ案として、交通過多な都市部でのタクシーサービス、離島や山間部地域に向けた新たな移動手段、災害時の救急搬送など、社会的課題の解決につながることが期待されている。
日本でも今年8月末に「空飛ぶクルマ」「物流ドローン」を開発するSkyDrive社が「空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査」を実施することを発表した。
どこまで開発が進むかは未知数といえ、2030年には「大化け」する可能性を信じてみたい。「空飛ぶクルマ」の夢は簡単には捨てられない。
(TEXT/岩尾信哉)
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