■ガソリン元売り会社は補助金全額を卸売価格に還元
まず初めに、国内でガソリンシェア約50%、業界一位の石油元売り会社、ENEOSに聞いてみました。
「特約店(ガソリンスタンド)への卸値の決定方法などの契約の詳細は守秘義務もあって公表できないが、昨年11月24日に当社ホームページでも発表している通り、政府から受給する補助金は全額卸売価格に還元している。この方針は石油連盟の杉森会長の直近の会見でも明らかにしたように、ENEOS以外にも全ての元売り会社共通の方針だ。そもそも今回のような激変緩和措置の補助金が出ていても出ていなくても、元売り会社が特約店の小売価格を拘束することはできない」。
ひと言でまとめると、そもそもガソリンの小売価格は元売り会社が決められるものではないうえ、ENEOSだけでなくすべてのガソリン元売り会社は今回の補助金から1円も儲けていない、ということでした。
■責任官庁である資源エネルギー庁にも聞いてみた
そこで次に、この補助金事業のためだけに特設された、資源エネルギー庁に電話して聞いてみました。
まず初めに強調されたのは、「そもそもこの補助金は、ガソリンの小売価格の急騰を抑えるためのもので、値下げそのものを目的としていない」ということ。値段が上昇する幅を抑えるだけで、下げるものではないということです。
そして補助金投入額と価格抑制効果の差の0.9円はどこに行ったのか、元売りは補助金は全額消費者に還元していると言っていますが、という質問に対しての答えは、次のようなものでした。
「そもそもガソリン価格は個別のガソリンスタンドが自らの経営戦略や競争条件に基づいて決めるもの。
従前から持っていた在庫のせいで補助金の効果がフルに出るのにはタイムラグがある上、ガソリンを輸送するコストの違いなどにより地域差が生じることもある」
それでは、「補助金導入前に仕入れたガソリンの在庫が全てなくなってしまえば、補助金の額と価格抑制効果の幅はかなり近くなるのですか」と改めて聞いてみたところ、
「補助金の額を決定する際に参照している日経新聞電子版による「円建てドバイ原油価格(週平均)」と、元売り会社が卸売価格を決定する時に参照している、輸送のコスト(保険・運賃)を加味した原油CIF価格と呼ばれるものにはズレがあるので必ずしも一致しない」という答えが返ってきました。
それならなぜ補助金の額を決めるときにCIF価格を参照する仕組みにしなかったのですか? と聞いてみましたが「その経緯はわからない」、とのことでした。
この補助金政策の仕組みを見ると、明らかに全国平均ベースでの1リッターあたりの価格を170円もしくはそれ以下にすることを目標として補助金の額が設定されています(ただし発動から4週間ごとに価格目標は1円ずつ切り上がる仕組み、補助金は今年3月まで)。
したがって、個別のガソリンスタンドでの価格が170円を超えることがあっても仕方ないとはいえ、全国平均価格が170円を超える結果となれば、納税者がガッカリするのも致し方ないと思われます。
いろいろ聞いてみましたが、結局のところは今回何らかの理由で販売過程において補助金の一部が吸収されてしまったため、消費者がはっきりと補助金の効果を感じることが難しかったということのようです。
資源エネルギー庁によるガソリンスタンド経営者の団体に向けた今回の補助金の成果報告の資料では、「支給額の3.4円との(抑制額の)差分については、各SSの在庫等の事情によりコスト上昇分の反映にずれがあったためと考えられる」とされています。
通常は仕入れたガソリンは1週間もあればなくなるそうなので、次回の調査以降補助金の額と小売価格の抑制効果の額の差に注目して見ていきたいと思います。
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