2018年10月に量産車世界初の装備としてレクサスESに採用された「デジタルアウターミラー」。しかし、注目を浴びたわりにはそれ以降、なかなか普及していないのも現実だ。
いったい何が問題なのだろうか? 使い勝手も含めたメリット&デメリットを改めて分析する。
文/高山正寛、写真/ベストカー編集部、ホンダ、レクサス
【画像ギャラリー】光学式ミラーとデザイン別になるのが普及への足かせ?(11枚)画像ギャラリー■これぞ未来!と注目はされたが……
従来のアウターミラー(乗用車の場合であればほとんどがドアミラー)が車両後方を鏡像(光学)で写していたのに対し、デジタルアウターミラーはカメラで撮影した情報を専用のディスプレイに表示し、確認することができるシステムだ。
これまでグローバル、特に北米でレクサスの販売を牽引してきた「ES」だが、実は北米では光学式でなければ認可が下りないので、日本のフルモデルチェンジに合わせて世界初として搭載したのが現実である。
確かにESが発売された時、デジタルアウターミラーに対し、「これぞ未来」と注目を集めたのも事実だ。ただ、どれだけ装着されているか、言い換えれば主流になっているか、と言えば厳しいのが現実である。
レクサスからはデジタルアウターミラーの装着率のデータは公開されていないが、販売店で話を聞くと「クルマ自体は高く評価されているが、積極的にこの装備を装着するお客様は少ない」という声も聞かれた。
■導入のタイミングが悪かった!?
では、いったい何が問題なのだろうか。その理由を大きく以下の4つに分類してみた。
1:価格が高い
現在、3グレード構成のESにおいてデジタルアウターミラーが装着できるグレードは最上位の「Version L」と「F SPORT」になる。
「Version L」はメーカーオプションで22万円、「F SPORT」はパノラミックビューモニターとの組み合わせが条件でその価格は28万7100円(いずれも税込)となる。
この価格はESのほかのメーカーオプションで比較すると、マークレビンソンのプレミアムサラウンドサウンドシステム(24万3100円)が装着できるほど高い。
もちろん、ESを購入する顧客層からすれば、それほど価格的な問題は発生しないのかもしれない。それでもさらなく価格アップは避けたいし、それだけのコストをかけたメリットがあるのか?という疑問も発生する。
2:インテリアがカッコ悪くなる
前述したようにESのシステムはアウターカメラで撮影した映像をインパネの両サイドに設置した5インチモニターで表示する方式を取っている。
これが取って付けたような仕様、失礼を承知で言えば「後付け感」があるのだ。
実際、当時開発担当者に話を聞いた時には「企画が決まったのが遅かったこともあるし、そんなことは百も承知。それでもインテリアにマッチングするように何度もデザインをやり直した」と当時の取材メモに残っていた。
そもそもESのインテリアはレクサスのほかのモデル同様、プレミアム感が高く、UIも優れている。そこに突然ポンとインパネの両側にモニターが入ってくることに違和感を持つ人もいたはずだ。
3:別にふつうのドアミラーで問題ない
たぶん、これが一番大きな理由だろう。デジタルアウターミラーのメリットに関しては最後にまとめるが、別にこれじゃなきゃダメというわけでなく、通常の光学式ミラーでも充分だ、というのが大きいのではないだろうか。
現在、デジタルアウターミラーを搭載するモデルとして話題なのが「ホンダe」(注:ホンダはサイドカメラシステムと呼ぶ)だが、このクルマはそもそもこの機能が全グレード(と言っても2つ)標準装備でドアミラーの設定自体がない。
ESは導入当初の設定の都合で「選択できる=オプションにした」状態を作ったことが、結果として装着が伸び悩んだ部分はあるのだろう。
ただ、ESを擁護するわけではないが、アーリーアダブター層などは発売当初には飛びついただろうし、それなりのメリットは感じているはず。それでもESに求める要件としての優先順位はそれほど高くないと感じている。
4:個人ごとで見やすさに差が生じやすい
鏡を使う光学式ミラーの場合、目の焦点は鏡を通して対象物までの距離までを判断するが、デジタルアウターミラーはディスプレイの表面にピントが合う。これは最近装着率が高まっているデジタルインナーミラーでも言われてきたことだが、ピントの合わせづらさが慣れも含めて個人差が発生しやすい。
要は3で述べたことに近いのだが、ふつうのドラミラーで充分ということに繋がってしまうのである。
コメント
コメントの使い方コストは安い筈、そもそもアラウンドビューモニター設定時点でカメラは4ヶ所に組み込まれているのだから、後方側面は視野角制御で追加など不要、あとモニターもフェンダーからドアミラーへ移行した際にネックとなった見辛さも、メーター内に納めれば首振りが無くなり安全に寄与する。夜間や雨天などの視認性からしたら安全装備のバックモニターと一緒に法制化すべきものである。