■おせっかいすぎるワイパー
雨天時のドライブでいかに安全な後方視界を確保するか。1980年代にはそのテーマに果敢に挑んだ日本車メーカーがあった。1980年に登場した初代日産レパードのフェンダーミラーには、世界初となるワイパー付電動リモコン式フェンダーミラーを装備。
当時はその着眼点と「世界初」に感動したが、ワイパーがかえって視界を妨げるという本末転倒な状態に。そこで1988年の初代シーマでは、ワイパーがドアミラー上部のカーブに沿って装着するという進化を遂げ、ここにも技術革新の跡が見られた。
そんな日産のチャレンジに刺激されたのか、トヨタにも驚きの機能が登場する。それが1988年登場の6代目マークII 3兄弟にオプション設定されたサイドウィンドウワイパー。ドアミラーではなくサイドウィンドウをクリアにすることで後方視界を確保しようとしたのは、日産に対する対抗心もあったのか。
しかもワイパーだけでなくウォッシャー液も噴射できる高い機能性を備えていた。残念ながらバブル絶頂期をもってしても後方視界にそこまでこだわるユーザーは少なく、1代限りで終わってしまった。
■スペアタイヤの空気圧もチェック
1981年に登場した6代目のR30型スカイラインには、スペアタイヤの空気圧低下を表示するスペアタイヤ警告灯が装備されていた。これはトランク内のスペアタイヤのタイヤバルブに空気圧モニターを接続し、エンジンがかかっているときに空気圧を測定するもの。
標準タイヤでは空気圧が約2kg/cm2以下になったとき、R30の5ドアHBで日本初採用となった応急用スペアタイヤでは約4.2kg/cm2以下になったときにルーフコンソールの警告灯が点灯するしくみだった。
まさに「転ばぬ先の杖」を体現する装備だが、そもそもスペアタイヤを使う機会自体がレアなので、ほぼ無用の長物だった。
■おしぼり冷温機
1980年代のハイソカーを代表する装備のひとつが、キャバレーのソファを彷彿とさせるワインレッドのフカフカなシート。それまでの日本車にはなかったゴージャスなインテリアはバブル時代を予見する雰囲気だった。
そんな良き時代の1987年に登場したY31型の日産セドリック/グロリアには、テレビ/ビデオデッキをはじめとするディーラーオプションが豊富に用意されていた。
なかでも全モデルに用意されたユニークなオプション品が「おしぼり冷温器」。これはシガーライターのDC12V電源を使ったボックス型の温冷蔵庫。リアのハットトレイには飲料向けのクールボックスが別途装備できたので、完全におしぼり用に特化した装備だった。
■車内の乾燥を防ぐ加湿器
1980年代の日産の高級車には、後席のホスピタリティを充実させるオプション装備が豊富だった。なかでも特筆すべき装備が「モイスチャーコントロール」。
Y31型のセドリック/グロリアとシーマにメーカーオプションとして設定されていた後席向けの加湿器だ。
センターコンソール後端にピッタリ合うように設計されたこの装備は、内蔵された発振器により蒸気を発生させ、室内の乾燥を防ぐというもの。ガラスの曇りを防ぐために除湿するのが当たり前の車内空間において、真逆の価値観を提案するものだった。
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