いまもっともアツい国産自動車メーカーのひとつであるマツダ。
2010年に掲げたデザインテーマ「魂動デザイン」、2011年に発表された「SKYACTIV TECHNOLOGY」、メインキャッチコピーである「ZOOM-ZOOM」と「Be a driver.」は、あしかけ10年、一体となって国内、そして世界に浸透したといっていい。
SKYACTIV第1世代モデルがほぼ一巡したいま、一方で世界的なディーゼルへの逆風などさまざまな課題が見えてきているいま、マツダ車の現在地はどこにあるのだろうか?
最新のマツダ新世代商品群ラインアップ7台にあらためて試乗、各車の「○なトコロ」と「×なトコロ」を自動車ジャーナリスト鈴木直也氏に判定してもらった。
文:鈴木直也・ベストカー編集部
写真:平野学
初出:『ベストカー』2018年8月10日号
■CX-8
登場:2017年
価格:319万6800~419万400円
国産ミニバン市場から撤退を表明しているマツダが、新たに3列シートSUVとして国内に投入したブランニューモデル。上級グレードでは400万円を超える高額車となるが、販売面も好調だ。
○なトコロ
スタイリッシュなSUVで予想以上に3列目席が使える7人乗りパッケージを実現したのはおみごと。走りもCX-5と遜色ない。
×なトコロ
価格を含めて高級化したため、ビアンテ/プレマシーからのユーザー移行が難しくなっている。

スタイリッシュなSUVなのに3列シートを備えるのがCX-8の美点。ミニバンのファミリーカー臭さを嫌うユーザーからの支持を得ているようだ
■CX-5
登場:2017年
最新の年次改良:2018年3月
価格:249万4800~352万6200円
フルSKYACTIVとなって2代目の現行型。今年2月に2.2Lクリーンディーゼルエンジンを従来の175ps仕様からCX-8と同じ190ps仕様に換装し、2.5Lガソリン車は気筒休止機構を採用。
○なトコロ
初代を順当に進化させて、高級感のあるミドルSUVに仕上げている。先進安全装備の充実ぶりやインテリアの質感アップなど、ユーザーの満足度は高い。
×なトコロ
エンジン・プラットフォームがほぼ初代のキャリーオーバーゆえ、改良はされているが走りに新鮮味がない。
■CX-3
登場:2015年
最新の年次改良:2018年5月
価格:212万7600~309万4480円
デミオがベースのクロスオーバーSUV末弟モデル。当初は1.5Lクリーンディーゼル車のみだったが、昨夏に2Lガソリン車を追加。今年5月の大幅改良でディーゼル車を1.8Lに排気量アップ。
○なトコロ
コンパクトなサイズ感とスタイリッシュなデザインがCX-3の魅力。ここはデビュー以来不変。
×なトコロ
何度も足回りをいじって工夫してはいるものの、デミオベースのプラットフォームからくる制約か、乗り心地の「質感」がいまひとつなところは残念だ。

自身も2016年式のCX-3クリーンディーゼル車を所有する鈴木直也氏がCX-3最大の魅力と認めているのが、流麗でスタイリッシュなエクステリアデザイン
■デミオ
登場:2014年
最新の年次改良:2017年4月
価格:139万3200~226万2600円
4代目となる現行型は歴代初のクリーンディーゼルをラインアップ。現在、ガソリン車は1.3Lと1.5Lがあるが、間もなく実施の改良でガソリンエンジンが1.5Lのみとなり、1.3L車は消える。
○なトコロ
Bセグコンパクトではほかのライバルにないさまざまな付加価値を盛り込んでいること。インテリアの質感、骨太なハンドリング、ディーゼルのバリエーションなど、「デミオならでは」の魅力が豊富。
×なトコロ
さすがにコストの限界か、センターピラーより後ろ側になるとあらゆる質感が低下する。やはり基本ドライバーズカー。
■アクセラ
登場:2013年
最新の年次改良:2017年9月
価格:182万5200~331万200円
グローバルで乗用モデルのなかでは主力のアクセラ。選べるパワートレーンはクリーンディーゼルが1.5Lと2.2Lの2種類が用意され、ガソリンが1.5L、2Lハイブリッドと多彩な構成。
○なトコロ
グローバル市場でマツダ車を代表する車種として、デザインをはじめ、走りでも欧州ライバルとガチで戦える水準にある。主力となるラインアップ中ではモデル末期だけれど、バランスのとれた優れたCセグ乗用車だと思う。
×なトコロ
ハッチバックとセダンでデザインに差がなさすぎ。せっかく2車型作るなら、もっと個性を引き出すような差別化をすべきだった。
■アテンザ
登場:2012年
最新の大幅改良:2018年5月
価格:282万9600~419万400円
現在のマツダ乗用モデルのフラッグシップだが、今回の大幅改良では特に内装で気合いの入った手の入れ方で、マツダの力の入り具合が窺い知れる。次期型は上級FRモデルへと生まれ変わるか?
○なトコロ
最新のマイチェンでまたグレードアップしたインテリアは、欧州プレミアムなみの質感。セダン逆風のなか、インテリアの魅力を強化しているのは、目の付けどころがいいと思う。
×なトコロ
トヨタですら苦労するセダン離れの昨今、そもそもマツダのLクラスセダンを買ってくれるユーザーがどれほどいるかという問題。

今年5月の大幅改良でインテリアがシートやインパネなどを含めてほぼ全面に近い改良を施されたアテンザ。鈴木直也氏もその質感の高さを評価している
■ロードスター
登場:2015年
最新の年次改良:2018年6月
価格:255万4200~381万2400円
6月の商品改良でRFの2Lエンジンが158psから184psにパワーアップされたほか、1.5Lガソリンのソフトトップモデルも1psアップして132psに。i-ACTIVSENSEも標準採用されている
○なトコロ
走りの楽しさは語るまでもないが、1.5Lというミニマムなエンジンで、スポーツカーの楽しさを100%表現しきっていること。存在そのものが国宝級であるのは言うまでもない。
×なトコロ
このクルマについては、すべての欠点は魅力の裏返しだと思っている。買ったらすべて許せてしまうからバツはなし。

もはやその存在自体が“国宝級”だと鈴木直也氏も指摘しているロードスター。マツダくらいの企業規模のメーカーがラインアップしているだけで拍手!