年間一時金に豊田章男社長が満額回答!! トヨタとほかの自動車メーカーとの給与の違いはどんなものか!?

■できた流れは人材への先行投資傾向か

 賃上げ余力が最も大きかったのは言うまでもなく円安の追い風などで業績が絶好調とされるトヨタだが、同業他社は販売奨励金やリコール費用の減少などで見かけの利益が増えたホンダを含め、一様に爪に火を点すような努力を重ねて何とか利益を絞り出しているというのが実情だ。

 それらのメーカーの多くがトヨタと同様に満額回答を出したのは「トヨタさんに期日前に満額回答を出されたことで、賃上げ余力のあるなしにかかわらず限界まで出さなければいけないという雰囲気になってしまった」(自工会関係者)という声も聞かれる。

 労働者にとって給料が増えることは喜ばしい。確かに「満額」の今年だけを考えればそうかもしれないが、本当に大事なのは将来に渡ってこのトレンドを続けられるかどうかである。

 今回のトヨタの満額回答は、日本の給与デフレを率先して是正していく取り組みとしてポジティブに取り上げられているが、賃上げはあくまで利益を拡大したなかから生まれるものでなければ本物ではない。

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「従業員のモチベーションアップのために」賃上げを行った企業もあるとか(metamorworks@AdobeStock)

 トヨタにつられて満額回答したメーカーは建前として「従業員のモチベーションアップのために」を理由としており、利益を増やすための道筋が見えているかというと、そうでもないようだ。

 つまり、利益が出たから還元するというのではなく、「先に金を払うから利益を出せ」という「馬面にニンジン」のような期待を込めた「先行投資」にも思える。しかも賃上げで将来の成長のための資金が目減りし、企業の成長性が損なわれる危うさを感じなくもない。

■拡大する「メーカー間格差」

 何はともあれ「満額」が相次いだ今年の春闘だが、その中身を見ると、企業間格差はすでに拡大傾向だ。

 例えばトヨタは昨年の組合員平均年収(管理職以上を除いた一般従業員の年収)は858万円だったが、今年はボーナスが昨年の6カ月から6.9カ月になることもあって、テレワーク普及による残業代減少の影響が軽微であれば900万円の大台に乗る公算は大である。

 それに追いすがる業界2位のホンダ(平均798万円)は1カ月分のボーナスが上積みされて6カ月になる。ところが、賃金の高い中高年層を「ライフシフトプログラム」という転職支援制度を用意するなどして減らしつつあり、平均では800万円は超えるにしても、それほどのアップは望めそうもない。

 日産(796万円)も5.0カ月から5.2カ月へと微増するボーナスとベアを合わせれば残業代減少を押して800万円にリーチがかかる見通しだ。

■流行には乗らないスズキ

 4.7カ月から5.0カ月となるマツダ(628万円)、4.6カ月から5.0カ月となる三菱自動車(652万円)、昇給は勝ち取ったもののボーナスは前年と同じ5.2カ月にとどまるスバル(651万円)などは今年も700万円にも届かない見込みだ。

 残念ながら利益を拡大できる確固たるビジョンがないのに無理して賃上げをしても、これだけの差がついているのが現状だ。トヨタに従って「大盤振る舞い」を続けても、この格差は今後、むしろ拡大する恐れもある。

 その点、賢い判断をしたのはスズキ(665万円)かもしれない。売上高に占める製造原価の割合がトヨタより唯一低いという潜在的な収益基盤がありながら、トヨタにつられず満額回答を見送った。背伸びせず地道に利益を再拡大したほうが、結果的に従業員に厚く報いることにつながるかもしれないからだ。

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