次期型WRX STIが出ない理由と「エモいSTIコンプリートカー3選」

■山本シンヤが選ぶエモいSTIコンプリートカー3台

 そんなモデルの登場を筆者も期待しているが、今回編集部からのお題は、「過去に販売されたWRX STIをベースにしたコンプリーカーのなかで「エモーショナル」なモデルを3台選んで欲しい」とのことだ。

■S204(2005年)

2代目インプレッサWRX STIをベースとし、上質感と走りの性能向上を図ったプレミアムモデルがこのS204。S203からの正当進化版だ
2代目インプレッサWRX STIをベースとし、上質感と走りの性能向上を図ったプレミアムモデルがこのS204。S203からの正当進化版だ

 スバルテクニカインターナショナルは、古くから「M/アルピナのような存在になりたい」と語っていたが、それが最も具体化されたのが2004年に登場した「S203」である。WRX STIの性能をさらに引き上げながらも、大人の感性やプレミアム性も備えたロードスポーツとして開発。

 エンジンはバランス取りや専用タービン、吸排気系の高効率化(なんとチタンマフラー採用)などにより、「滑らかで扱いやすいのに速い」という特性を実現。フットワークはジオメトリーの見直し、剛性アップのアーム類などを採用した専用サスペンションにピレリPゼロコルサ+BBS鍛造アルミを組み合わせた。

 エクステリアは控えめながらも空力を追求したエアロパーツ、インテリアは各部の加飾の変更に加えてドライカーボンシェルのレカロ(SP-X)が奢られるなど、これまでの走り一辺倒からの脱却も行なわれていた。

 筆者が推す「S204」は、そのS203のバージョンアップモデルで、変更内容は準ずるものの、ベース車の進化(E→F型)、調整式だったサスペンション/リアウイングが固定式(=ベストはひとつ)、そして車体は剛性だけでは語れないとこだわり始めたキッカケとなったYAMAHA製パフォーマンスダンパーの採用などによりリファイン。

 その走りはノーマルよりも速いが、それを感じさせない乗りやすさ/扱いやすさで、欧州プレミアムスポーツと比べたくなる走りの質の部分も抜かりなし。初めて「ゆっくり走っても楽しい」と感じたWRX STIだった。WRブルーをメインカラーにしないのも渋い選択で、筆者はハンコを押す寸前まで悩んだが、金策ができず泣く泣く断念したことを今でも鮮明に覚えている。

■S206(2011年)

3代目WRX STIの4ドアモデル(GVB型)をベースとしたS206 。2011年のNBR24時間レース参戦での知見が随所に盛り込まれている
3代目WRX STIの4ドアモデル(GVB型)をベースとしたS206 。2011年のNBR24時間レース参戦での知見が随所に盛り込まれている

 2008年にWRCから撤退したスバルだが、その年からニュルブルクリンク24時間へ参戦を開始。2009年からSTIが独自参戦を行なうが、ニュル24時間を戦うレースマシンのハシリの思想が盛り込まれた「究極のロードカー」として開発された一台だ。

 開発の陣頭指揮を取ったのは、富士重工(現SUBARU)からSTIに移籍した辰己英治氏で、車両全体に渡って教科書には載っていない「辰己理論(=運転が上手くなるクルマづくり)」が色濃く盛り込まれている。

 エンジンはボールベアリングターボやECUなどのチューニングにより、320ps/431Nmを発揮。ボディはフレキシブル系補剛パーツで剛性バランスが整えられ、専用セッティングのビルシュタイン製ダンパー+スプリング、WRX初採用となる19インチのミシュランPSS+BBS鍛造アルミホイールをプラス。

 さらにニュルクラス優勝を記念としたスペシャルパッケージ「NBRチャレンジパッケージ」はカーボンルーフやドライカーボン製リアウイングも奢られていた。

 実際にステアリングを握ると、ノーマルよりも穏やかで優しいのに一体感は高い……とMよりもアルピナに近い乗り味に驚いたのを今でも覚えている。「ゲインではなくレスポンスが重要」と、ステアリングギア比はなんとノーマルよりもスローに変更と聞いてさらにビックリ。試乗ステージは土砂降りの伊豆サイクルスポーツセンターだったが、不安要素は皆無でむしろ楽しく走れた記憶が残っている。

 実はこの時、2011年ニュル24時間でクラス優勝したレースカーにも乗せてもらったが、同じ乗り味だった。「これくらい楽に速く運転できないとニュルで優勝なんてできませんよ」、そんな辰己氏の言葉に納得。個人的にはWRX STI史上「最良の乗り味」を備えるモデルだと思っている。

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