次期型WRX STIが出ない理由と「エモいSTIコンプリートカー3選」

■WRXというモデルが誕生した経緯

1992年に誕生した初代インプレッサWRX(写真は前期型)。初代レガシィRSに投入されていたメカニズムやパワートレーンがひと回り小さいボディに搭載され、WRCを席捲!!
1992年に誕生した初代インプレッサWRX(写真は前期型)。初代レガシィRSに投入されていたメカニズムやパワートレーンがひと回り小さいボディに搭載され、WRCを席捲!!

「ならばWRX STIも何とか!!」と思う気持ちもわからなくないが、ここでもうひとつの理由がある。それは「WRX STIはなぜ生まれたのか?」だ。

 初代(インプレッサ)WRXは1992年に登場したが、このモデルをベースにスバルテクニカインターナショナル(STI)が手を加えたモデルが「WRX STiバージョン」(1994年)だ。その後、競技ベースとなるWRX タイプRAをベースにした「WRX タイプRA STiバージョン」も登場。あまりの人気の高さに生産が追いつかず、いったん生産を終了。

 ちなみに、このモデルまではスバルで生産したベースモデルをスバルテクニカインターナショナルで改造する「メーカー系コンプリートカー」という扱いだった。

 あまりの反響の高さから「スバルの生産ラインで作れないか?」ということで企画されたのが「WRX STiバージョンII」だ。

■先代まで続いたWRX STIとしてのレゾンデートル(存在意義)

1995年8月に発売された初代インプレッサWRX STiバージョンII。ここからカタログモデルに昇格し、STIチューンのEJ20ターボは275ps/32.5kgmを発揮。当時の新車価格は274万8000円だった
1995年8月に発売された初代インプレッサWRX STiバージョンII。ここからカタログモデルに昇格し、STIチューンのEJ20ターボは275ps/32.5kgmを発揮。当時の新車価格は274万8000円だった

 実はここからWRX STIの運命が変わった。そう、メーカー系コンプリートカーからWRXシリーズのフラッグシップ、つまりカタログモデルになった。この流れは世代交代後も継承された。

 その後、スバルテクニカインターナショナルからはWRX STIをベースにしたコンプリートカーが生まれた。パワートレーン系を含む車両全体に手を加えた「Sシリーズ」とフットワーク系が中心の「tS」だが、「WRX STIをSTIがチューニング」と、なんともおかしな状況になってしまったのも事実だ。

 実はそんな状況を変えるべく、4代目先代型の企画段階から「高性能モデルに『WRX STI』の名を付けるか? 否か?」という議論が繰り返されていたと聞く。まぁ、結果としてその心配はなくなってしまったが……。

 さらに言うと、「そもそもWRXはなぜ生まれたのか?」という話になる。初代(インプレッサ)WRXは当時グループA規定だったWRCのベース車両として開発されたモデルだ。

 その後、WRCはWRカー規定に代わるが、WRX の立ち位置は2~3代目に継承。特に3代目は運動性能に有利な5ドアHBボディの採用など、より徹底していた。しかし、スバルは2008年にWRCから撤退する。

■WRCからニュルにレース活動を変更し、ロードカーとしての性格が強まる

3代目インプレッサWRX STI。2010年に4ドアモデルのGVC型が追加され、途中で車名からインプレッサの名前がなくなり、4ドア5ドアともにWRX STIとなる
3代目インプレッサWRX STI。2010年に4ドアモデルのGVC型が追加され、途中で車名からインプレッサの名前がなくなり、4ドア5ドアともにWRX STIとなる

 実はこの頃からWRXはロードカーとしての道を歩み始める。例えば、3代目に追加されたATモデルの「WRX STI Aライン」は、4代目の「WRX S4」へと受け継がれた。

 2022年、WRXは生誕30周年を迎えるが、それに合わせて開発陣は「次の世代にWRXはどうあるべきか」と思案。その答えが5代目というわけだ。つまり、「モータースポーツのベース車両」から「新時代のスポーツセダン」への刷新だった。

 このような理由から、5代目の現行型WRXにSTIはラインナップされない。ただ、まだ望みがないわけではない。それはスバルテクニカインターナショナルが企画・開発を行なうコンプリートカーだ。

 現行WRX S4にはスバルとスバルテクニカルインターナショナルが共同開発した「STIスポーツR」がラインナップされているが、スバルファンが期待しているのは「Sシリーズ」に相当するモデルだろう。

次ページは : ■山本シンヤが選ぶエモいSTIコンプリートカー3台

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