「山椒は小粒でピリリと辛い」とはよく言ったもので、 小さくても存在感をビカビカに放つクルマたちがいる。そんな、小さいことが個性&魅力となるクルマたちのポイントを引き出していこう!
自動車評論家 鈴木直也氏が選び直に味わった4台、国沢光宏氏、清水草一氏、片岡秀明氏セレクトのそれぞれ3台の「小さなクルマ」たちをご紹介!
※本稿は2022年3月のものです
文/鈴木直也、国沢光宏、清水草一、片岡秀明、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年4月10日号
■ジムニー ノートオーラNISMO トゥインゴS GRコペンSPORT。この4台なら“小さいこと”が大きな魅力になる!!!
自動車業界は100年に一度の変革期なんだそうで、電動化への移行でてんやわんやの大騒ぎとなって久しい。
カーボンニュートラルを錦の御旗に、2035年までに内燃機関廃止とか、いやもっと早く電動化しろとか、なんだかユーザーを置き去りにしてどこか遠くで自動車の未来が決められている。ここ数年、クルマ好きにとっては楽しい話題が少なかったように思う。
だけど、世の中どう転ぶかわからない。2020年の春に始まったコロナ禍は世界中を大混乱に陥れたし、そうかと思えばまさかのロシア軍ウクライナ侵攻! こんなこと、誰が予想できました?
だからね、ぼくも一時は「次のマイカーは地球環境に優しいクルマにしよう」と真面目に考えてたんですが、最近はもう開き直って「明日のことはわからない。乗れるうちに楽しいクルマに乗ろう!」に方針変更しました。
おりしもコロナ禍で世界中の政府がばらまいたお金にウクライナ侵攻で暴騰したエネルギー価格が火をつけ、もはやインフレ待ったなし。原油価格は100ドル/バレルを超え、ガソリンも200円/リッターに迫ってる。
インフレヘッジといえばやっぱり実物資産。お金持ちなら値上がり必至のフェラーリあたりを買い集めればOKなんだけど、それは誰にでもできるこっちゃない。さて、どーするか……。
■小さいクルマなら今すぐ楽しめる!!
で、ベストカーが出した結論がコレ。
クルマ好きの庶民がいまクルマを買うとしたら、BEVみたいな不確実な未来に賭けるんじゃなく、いますぐ楽しめるコスパのいいコンパクトカー。それも、マニアックで走りが楽しくて、できればあんまりたくさん売れていないほうがリセールバリューの点でオススメ。
調べてみると、200万円台で買える楽しいコンパクトカーが、けっこうバラエティ豊かに揃っているのだ。
そんなわけで、その中から代表選手を4台選んで取材に連れ出してみたんだけど、コレがどれも優劣つけがたくファン・トゥ・ドライブ。それぞれまったく異なるテイストの走りが味わえて、じつに豊かなクルマ文化を堪能したのであります。
まず、ジムニー。ご存知のとおりジムニーは軽唯一の本格クロカン4WD。それだけでもう存在意義はメチャ高いわけですが、リアルな悪路走破性も凄まじい実力の持ち主なのが素晴らしい。
ハイテクな4WD制御システムは装備してないけど、軽さを活かしてどこへでもよじ登っていけそうなのが魅力。
大柄なオフロード4WDだと狭い林道じゃ物理的に入れないケースもあるが、ジムニーなら「スタックしても何人かで押せば出るでしょ」という安心感があって、この軽さと小ささが最高の武器になっている。
また、普段の街乗りでも普通のクルマとはまったく異なる非日常感覚。正直、楽チン快適なクルマではないけれど、そのかわりチョイ乗りでも面白いし飽きない。これまた、みんながジムニーに惹かれる魅力のポイントなんだろう。
軽からもう一台、コペンGR SPORTを持ってきたけど、軽だと思って舐めてるとびっくりするくらい本格派で完成度が高い。
専用チューニングのバネ/ダンパー、16インチの鍛造BBS、そして165/50のポテンザRE050A。シャシーは大真面目に高水準なハンドリングを追求した力作だし、オープンボディにもかかわらずガンガン攻めてもミシリとも言わないくらいシャシー剛性も高い。
価格は250万円に迫るけど、前述のBBS/ポテンザをはじめ、モモのステアリング、レカロのシートなど、ドレスアップの質の高さを考えるとむしろ割安。電動メタルトップで実用性が充分な点も高く評価できる。
コンパクトなのにクォリティの高さで最近人気なのがノートオーラだが、その中でクルマ好きが選ぶなら、ここはやっぱりNISMOしかない。
まず魅力的なのが、メタリックレッドの差し色を効果的に配したNISMOシリーズ伝統のエクステリア。これがブラック塗装の17インチホイールとマッチして、プレミアムなスポーティ感を上手に演出している。
新世代e-POWERのパワートレーンは、旧型ノートNISMO Sとほぼ同じスペック(エンジン82ps/103Nm、モーター100kW/300Nm)。
以前のようにNISMO専用のパワーアップはないのだが、エンジンとモーターの制御ロジックが進化したことでトルク感や静粛性が向上。オーラが狙いとする走りの質感向上に大いに貢献している。
最後は唯一の輸入車としてルノー・トゥインゴを持ってきたけど、コイツはもうリアエンジン・リアドライブという基本パッケージだけでお腹いっぱいになれる。
狭い室内とか、アッサリ装備とか、いろいろ注文したいところはあれど、かわいいルックスとRR特有の軽快なハンドリングで、乗ってしまえば「楽しいから、まぁイイか!」になること必至。こういうユニークなクルマは、今後どんどん減ってゆく運命。乗れるうちに乗っておきたい一台ですね。
(ここまでのTEXT/鈴木直也)
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