2016年のフォード撤退まで日本でも販売されていたフォード フィエスタ。日本車でいえばフィット等と同クラスのコンパクトカーにあって、僅か1.0Lの小排気量ターボエンジンから繰り出されるパワフルさには定評があり、フォードのなかでも日本に適したモデルとして地味ながらも存在感のあるモデルだった。
そのフィエスタになんと1Lターボで180馬力を絞り出す韋駄天が存在する。実は、この車、ラリー競技で使われる規定に基づいて作られたものなのだが、意外なほど市販車に近く、そして走らせて楽しい“ホットハッチ”に仕上がっているという。
文:ベストカーWeb編集部/写真:編集部、M-SPORT
車重僅か約1tで180馬力のフィエスタ R2
フィエスタ量産車仕様の搭載エンジンは1L直列3気筒ターボの「エコブースト」で最高出力100ps、最大トルク17.3kgmを発揮。
この数値を見ても、さほどパワーが傑出しているわけではないが、実際に乗るとスペック以上にトルクフルで、パンチ力のある走りが発売当時話題となった1台だった。
実は、そのフィエスタと同様のエコブーストエンジンをベースに、僅か1Lという排気量ながら最高出力180馬力を発揮する韋駄天が存在する。それがフィエスタ「R2」だ。
R2とは、FIA(国際自動車連盟)が定める「グループR」という規定に沿って作られたマシン。WRCなどのラリーでも、このフィエスタのほかプジョー208等のR2マシンが活躍している。
このように書くと「なんだラリー車か」と感じるかもしれないが、さにあらず。実はこのR2という車、改造範囲が限定され、かなりノーマルの市販車に近いのだ。
量産車からの変更点は、主にエンジン、トランスミッション、足回りの3つ。
エンジンは、量産仕様からピストン、コンロッド、カムシャフト等をアップグレード。日本導入モデル比で80馬力、最大トルクも約8kgmほど増大させている。しかも車重は1t足らずと軽量だ。
そして、トランスミッションは6速のデュアルクラッチから競技用の5速シーケンシャルへと変更。
足回りには、モータースポーツシーンで定評があるライガー社製のショックアブソーバー、アイバッハ社製のスプリングを採用し、ブレーキもアルコン社製のものに改められている。
ほかにも、ロールケージが組み込まれるなどの変更はあるものの、WRCの優勝争いを繰り広げるヤリスなどのWRカーが、市販車とは「別物」であるのと比べれば、「量産車ベース」であることがおわかりいただけるだろう。
では、実際に乗ってみるとどうなのか? WRCドイツでフィエスタ R2を走らせた自動車評論家の国沢光宏氏に聞いた。
最大の違いは2.5L級の分厚いトルク
まず、注目の180psを発揮するエンジンは、中回転域から高回転域の手前まで広くトルクが出ているというイメージ。
ラリーでのドライバビリティを確保するための味付けなのだろう。低回転域のトルクが薄く、1Lという小排気量でトルクをしっかり出してやろうとすれば、高回転まで引っ張っても意味がない。
それゆえ、ワイドなギア比の5速シーケンシャルと相まってトルクバンドが広いエンジンに仕上がっている。
そして、足回りが凄く良い。思いのほか“動く足”で、サスペンションはきちんとストロークする。サーキットを走るような「ガチガチに固められた足」ではなく、車両は適度にロールするので乗り心地も想像以上に良い。
ノーマルのフィエスタと比べた時の最大の違いは、やはりトルクの厚み。
ラリー車なので乗るには相当度胸が要るけれど、車を好きな人にぜひ乗せてあげたい。それだけ走らせると楽しいです。
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