タイヤ空気圧監視システムがイマイチ日本で普及しない理由

ABSを利用した簡易システムも

 一般的なTPMSは、4本のタイヤの空気圧をモニタリングする直接式ですが、簡易的な間接式TPMSを採用している例もあります。

・直接式TPMS
 タイヤのエアバルブ内などに通信機と一体化した圧力センサーを取り付け、空気圧と温度を直接測定、その情報を無線で車両側に送ります。空気圧が所定のしきい値を下回った場合に、インパネなどの警告灯の表示によって、ドライバーに空気圧が異常であることを知らせます

・間接式TPMS
 空気圧を測定する代わりに、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)で使っている車輪速センサーを利用します。もし、どこかのタイヤの空気圧が低下すると、タイヤの外径が小さくなり、他の3輪との回転差が生じます。この回転差から空気圧の異常を推定、警告するシステムです

 現在ほとんどのクルマにABSが制御されているので、間接式TPMSは制御ソフトの変更だけで容易に対応でき、低コストであることが大きなメリットです。BMWやメルセデスなどの欧州車の一部が間接式を採用していますが、直接式に比べると信頼性(精度)が劣り、米国の法規には適合していません。

日本では高級車やランフラットタイヤ装着車に限られる

 ほとんどの輸入車には、TPMSが装備されていますが、前述しているように日本車での装着は限定的です。ただ、空気圧が0になってもタイヤが潰れない特殊な構造のランフラットタイヤ(R.F.T)装着車は、パンクしても空気圧の低下が分かりにくいので、TPMS装着が義務付けられています。

 TPMSが装着されている国産車は、以下のとおり。そのほとんどは、直接式TPMSです。

・トヨタ
 カムリ、クラウン、センチュリー、スープラ(R.F.T)、ランドクルーザー、ランドクルーザープラド
・レクサス
 CT以外の全車種に装備(UX、IS、LC、LSは、R.F.T)
・日産
 スカイライン(R.F.T)、フーガ、シーマ、GT-R(R.F.T)
・ホンダ
 レジェンド、NSX
・マツダ
 CX-5

日本で義務化されないのは、コストの問題か

 欧米でTPMSの義務化が始まって以降、日本でも法制化の要望の声が高まっていますが、国交省は今のところ検討中という立場を変えていません。TPMS装着関しては、メリットはあるものの、デメリットは特に見当たらないことから、日本で義務化されない理由は「コストアップ」だと思われます。

 オプションでTPMSを用意しているランクルを例にとると、その価格はスペアタイアを含めて5本分で2万1600円に設定されています。これを高いと考えるかどうかはそれぞれの価値観によりますが、タイヤの性能が飛躍的に向上している今、道路環境が良く、高速走行の頻度が欧米ほど多くない日本では、多くの人はパンクを経験したことがなく、バーストのリスクも低い、という見方があるかもしれません。

 しかしながら、クルマに高いレベルの安全性と燃費性能が求められている今こそ、TPMS装着は不可欠です。さらに装着を加速すべきもう一つの理由として、自動運転化との関わりがあります。

 自動運転を進める上で、タイヤの空気圧は常時設定値を満たしていなければいけません。さまざまな情報をもとに自動で走行し、曲がったり止まったりする自動運転にとって、タイヤの空気圧にアンバランスが生じれば、運転に狂いが生じる可能性が出てきます。今後、さらに精度の高い自動運転を実現するためには、メーカーは「コストがかかるから」とは、言っていられないのではないでしょうか。

◆      ◆     ◆

 タイヤは、クルマを足元から支える重要な部品、しかしタイヤの空気圧や劣化具合を常日頃からチェックする人は意外に少ないようです。早急な法規制化も必要ですが、メーカー自ら装着を推進する、積極的な姿勢も見せてほしいところです。

【画像ギャラリー】タイヤ空気圧不足を知らせてくれる「TPMS」が装着されている国産車(27枚)画像ギャラリー

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