中国EVの全世界を見据えた大攻勢がはじまった トヨタ ホンダ 日産… 国内メーカーはどう受けて立つ??【第3回/全4回】

■EVというのは、言ってみれば『走るスマホ』です

 トヨタが「スマートシティ構想」を発表したのは、翌2020年1月7日のことだ。静岡県裾野市で実際に造成工事を始めたのは、昨年3月。その時点で、ファーウェイより5年以上も遅れている。

 自動車メーカーがスマートシティの運営を目論むのなら、通信システム会社が自動車の走行を運営したほうがスムーズにいくのではないか?

 そう思った私は、前出のファーウェイの担当者に、「自動車分野に進出する予定はないのですか?」と聞いてみた。すると意味深な笑みをたたえながら、こう答えた。

「いまのところ、その予定はありません。なぜなら我が社の創業者・任正非CEOは、『金融・不動産・自動車産業には進出しない』という経営哲学を、以前から持っているからです。

しかし、個人的な見解を言わせてもらえば、金融と不動産業に行くことは、今後ともないと思いますが、クルマに関しては不透明です。なぜならEVというのは、言ってみれば『走るスマホ』だからです。

我が社はすでに、中国を代表するスマホメーカーなのですから、EVはその延長として考えればよいわけです」

 この担当者の予見は、昨年4月になって現実のものとなった。

 4月19日に開幕した上海モーターショーで、ファーウェイは自動車業界への進出を宣言。これが昨年の上海モーターショーで最大の話題のひとつとなった。

 具体的には、ショーの開幕前日の18日、ファーウェイは上海で、クルマ関連の製品発表会を開催した。そこで王軍(おう・ぐん)スマート車解決方案BU総裁が、こう述べたのだ。

「ファーウェイは今後、毎年10億ドルを投入し、5000人の自動運転研究者を養成していく」

 この発表会を、私は東京からオンライン中継で見た。中国国内では、「世界の5Gの覇者が、ついにEVに参入」というニュースでもちきりとなり、そのニュースは世界に拡散していった。

こちらはトヨタが進めるスマートシティ「ウーブン・シティ」。東京ドーム15個分の土地に2000人が暮らし、技術やサービスの開発・実証を行う。壮大な計画はすでに始まっている
こちらはトヨタが進めるスマートシティ「ウーブン・シティ」。東京ドーム15個分の土地に2000人が暮らし、技術やサービスの開発・実証を行う。壮大な計画はすでに始まっている

■「アップルやグーグルも自動車業界への参入を表明しています」

 そこで翌5月、ファーウェイジャパンの王剣峰(おう・けんほう)会長に、緊急インタビューした。

 これまでマスコミ嫌いで知られたファーウェイの日本代表が、日本人記者のロングインタビューに応じたのは初めてのことだった。

 そのなかで、EV進出についての一問一答は、以下のとおりだ。

*   *   *

近藤 ファーウェイがついに、クルマを作るんですか?

 作りませんよ。EVを作るのは、あくまでも自動車メーカーです。ファーウェイは、一部の技術や部品などを提供するということです。

考えてみてください。我が社はICT(情報技術)を核とした会社です。今後世界で主流になっていくであろう自動運転車というのは、ICTのようなものではないですか。

近藤 それはまさに、ファーウェイが最も得意とする分野ですね。

 そうです。実際、アメリカでも、アップルやグーグルが自動車分野への参入を表明しています。

近藤 自動運転車用の3次元立体地図も、ファーウェイが作るんですか? やはり上海モーターショーで、ファーウェイの幹部が、『今年中に中国全土の高速道路および北京・上海・広州・深圳の一般道の高精度地図の商用化を実現し、2022年には20都市以上をカバーする』と発表しました。

 地図に関しては、2018年に専門の会社と提携して、開発を進めています。自動運転には高精度地図が欠かせないから、推し進めています。

*   *   *

 以上である。

 王会長の話ぶりから、ファーウェイ内部では、自動車分野への進出を、かなり用意周到に進めてきたことが窺えた。

 かつ、私は「深圳の常識」と現地で言われたことを思い出した。

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