■20年後、家からドローンに乗り込んで会社や学校へ行く
まず1次元のスマホが、基本として存在する。それが2次元になって動き出したら、自動運転のEVになる。さらに3次元になったら、ドローンになるというものだ。
やはり深圳に本社を置く世界最大最強のドローンメーカー、DJI(大疆創新)の幹部は、こんな見解を述べた。
「おそらく20年後には、自宅の玄関はベランダになるでしょう。毎朝、会社や学校へ行く時、ベランダで靴を履き、ドローンに乗り込んで、『行ってきます!』と家族に挨拶するわけです。
そこへ至るEVも、自動運転車も、ドローンも、中国が世界最先端の技術を有しています。そのため20年後には、世界中の人々が中国製の『未来のクルマ』を愛用していることでしょう」
私はこの話を聞いた時、22世紀のドラえもんがもたらしたタケコプターの世界が、21世紀の中頃に実現することに、心を躍らせた。ドラえもんは正しかったのだ!
■中国製「未来のクルマ」を愛用するのは楽観的すぎやしないか
それと同時に、世界中の人々が中国製の「未来のクルマ」を愛用するというのは、楽観的すぎやしないかと思った。なぜなら、いま日本の国会で法案が審議されている経済安全保障の側面が入ってくるからだ。
現在主流のガソリン車が、やがてEVに代わっていき、それが自動運転車になっていくというのは理解できる。だがそうなった時のクルマは、重ねて言うが「走るスマホ」だ。ということは、そのデータを誰が握るのかということが重要になってくる。
仮に日本のある町に、ファーウェイがスマートシティを構築し、中国の自動運転EVを走らせたとする。そうすると、EVのデータを始めとするスマートシティ全体のデータが、中国に行ってしまうリスクが出てくる。
実際、中国人観光客が日本で使用したアリペイやウィチャットペイの決算データは、中国へと渡るのだ。
ファーウェイも中国のEVメーカーも、「そんなことにはならない」と言うだろうし、実際には中国へ行かないのかもしれない。だがその町に住む日本人に、疑心暗鬼になる人は出るだろう。町には警察署もあれば税務署もあるのだ。
そうしたことを勘案すると、日本の近未来には、私たちが乗るEVにも、経済安全保障法が関わってくるかもしれない。
少なくとも、これまでのガソリン車以上に、政治問題が絡んでいきそうな気がする。
(全4回の第3回。第4回(13日(金)20時公開)に続く)
●近藤大介…1965年生まれ。東京大学卒業、国際情報学修士。講談社『現代ビジネス』『週刊現代』特別編集委員、編集次長。主著に『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(講談社現代新書)、『アジア燃ゆ』(MdN新書)ほか
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