世界の自動車界が電動化に向かう中、ガソリンエンジンにこだわる人はまだまだ多いし、その気持ちは痛いほど分かる。しかし、残念ながらこの大きな流れはもはや止められないだろう。だとしたら、ガソリンエンジンの匂いを残すハイブリッドはいかがだろうか?
ここではハイブリッドエンジンの2つの方式、「シリーズハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」を比較し、エンジン好きのこだわり派を納得させられるのはどちらかを考えてみる。
※本稿は2022年3月のものです
文/斎藤 聡、片岡英明、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年4月26日号
■シリーズハイブリッドはガンコ者のエンジン好きを納得させられるか?
いま日本にあるシリーズハイブリッドは、日産のe-POWER群(ノートオーラ、ノート、キックス、セレナ)。ダイハツ/トヨタのロッキー/ライズのeスマートハイブリッドがあります。
シリーズハイブリッドとは、駆動をモーターで行い、エンジンはモーター駆動のための発電に使われるハイブリッド車です。
それからシリーズではありませんが、システム的に凄く似ているのがホンダのe:HEVです。
このシステムは、エンジン+発電用モーターと駆動用モーターを持ち、基本はモーター駆動となります。高速巡航などエンジン効率のほうが勝る場面で、エンジン直結モードになるというものです。
シリーズハイブリッドのよさですが、ひとつはモーター駆動で静かなこと。
特に日産の新しいe-POWERはなるべくエンジンをかけないように制御しているので、静粛感が際立っています。
一方ロッキー/ライズはバッテリーを小さくして積極的にエンジンをかけるという考え方で効率を重視したタイプ。日産とは反対ですが重心が低く走りの質感はひとクラス上質です。
一般道で感じる走りの特徴はこの程度です。が、日産が以前から言っているように、モーターと横滑り防止装置の相性がいいのが、個人的には大きな特徴だと思っています。
■モーター駆動のシリーズHVならではの魅力がある!
今年、日産主催の女神湖氷上試乗会でのこと。FFのノートe-POWERがツルツルの氷の路面でスルスルと発進してしまうのです。
エンジン車やほかのハイブリッドだと(エンジンが駆動力を発揮している場面では)エンジンの駆動慣性力が邪魔をしてタイヤの空転を抑えきれません。
横滑り防止装置が作動してからタイヤが駆動力を遮断するまでにタイムラグがあるのです。
ところがモーター駆動だと制御が入った瞬間に駆動力を遮断することができ、氷の路面で余計な空転がなくスルスルと走ってくれるのです。
これはホンダヴェゼル4WDのe:HEVを滑りやすい路面で走らせた時も同様で、路面の滑りやすさを考えたら不思議と思えるほど加速が効きハンドルが効くことに驚かされました。
それからノートオーラの4WDは、積極的に後輪の駆動力を制御することによって、曲がりにくい時は後輪寄りに、リアタイヤが滑ってしまった時には前輪寄りに駆動バランスをコントロールしてくれるため安定しているのに曲がりやすい。
この操縦性のよさが、個人的にe-POWERの評価を爆上げした理由でもあります。
これを体験すると、エンジン車ではちょっと得られないような操縦性に魅力を感じる人は少なくないと思います。
シビアではないけれど精度の高い操縦感覚、アクセル操作に対する応答の正確さ。エンジン車以上に自分の運転操作が正確に反映される面白さと不思議さがあります。
(TEXT/斎藤 聡)
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