■北米での熾烈な販売競争が、ピックアップトラックの超絶進化をもたらしている
実はこの3車は荷台付きのピックアップトラックなのだ。つまり、北米で売れているクルマの上位3車は、ピックアップトラックということになる。しかも、この3車は全長が5.9m、全幅2.5m、全高2mという超ビッグサイズなのだ。アメリカのユーザーはこういうクルマに好んで乗っている。EVやHVが話題になっているのはごくかぎられた試乗なのだ。
日本にはこの3車は正規輸入されていないが、熱心なピックアップファンは存在する。ボディサイズは小さいが、トヨタハイラックスサーフや一時期逆輸入されていた三菱トライトンというピックアップもある。
最近ではジープが、グラディエーターというジープラングラーをベースにした4ドアのピックアップを日本市場に投入。輸入、販売していたが、ローンチ時の販売価格770万円、400台限定が、発表から3カ月で完売してしまった。
このクルマも全長5.6m、全幅1.9m、全高1.85mのピックアップだ。エンジンはV6の3.6L、284psのガソリン仕様だが、ジープを生産するステランティスは、3月に450psを発生する「ハリケーン」というハイパフォーマンスエンジンを発表している。
スーパーエンジン投入の理由は、ライバルたちへの対抗策。ピックアップトラックの世界は超絶なパワー競争になっているのだ。
■ブラバスは800ps、対するアメリカ勢もどんどんハイパワーモデルを発売して迎え撃つ
実は、ブラバスのスーパーピックアップもアメリカの富豪たちをターゲットにした展開なのだ。AMG製のV8、4Lツインターボガソリンエンジンは800ps、1009Nmを発生する。これはノーマルのAMG G63のエンジンよりも215ps、156Nmもアップしている。
しかし、アメリカのライバルたちも凄い。ノーマル仕様のモデルでも、フォードF150ラプターは、3.5L、450psの10速ATを備え、FOXレーシングのサスペンションを装備している。ダッジラムTRXは、6.2Lスーパーチャージャーで、702ps、884Nmを得て、サスペンションはビルシュタインを装着している。
シボレーシルバラードトレイルボスも、V8、6.2Lの420ps、624Nmをノーマル仕様で絞り出している。
北米ビッグ3とはボディサイズがひと回り小さい(といっても全長5.6m、全幅2m、全高1.8m)トヨタのピックアップだが、最強モデルの「クルーマックス」はV8、5.7Lの381ps。V6ツインターボは3.4L、389psを用意していた。最新モデルではハイブリッドで437ps、790Nmの仕様を登場させている。
■ピックアップトラックも普通にレースで活躍するのが北米なのだ
なぜ、北米市場ではこんなビッグサイズのスーパーピックアップに次々とニューモデルが登場するのだろうか。
理由のひとつは販売台数だ。北米の販売台数のベスト3をピックアップが占めているということは、ファミリーカーとして認知され、人気があるということ。ユーザーが多ければ当然、いろいろなニーズもある。だから2ドアの2~3人乗りと4ドアの5人乗りがある。
おとなしいエコモデルもあるが、スポーティさを好む人たちもいる。なかにはスーパースポーツを欲しい人もいる。メーカーとしてもイメージリーダーになるようなモデルを設定したくなるわけだ。
もうひとつの理由は、アメリカでいかにピックアップが定着しているかということだが、全米自動車競争協会(NASCAR)が主催するレースは、市販車を改造したストックカーレースなどが人気。全米でレースを行なっている。その3大レースのひとつにトラックレースシリーズが入っているのだ。
レースはフォード、GM、トヨタがワークスチームを送りこみ、激しいポイント争いを繰り広げている。その参加チームに、服部茂章氏というかつてトラックレースに出場していた日本人がチームオーナーになり、現在も参戦している。日本では話題になっていないが、優勝も獲得するなどその名は知られている。
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