■ドッグクラッチの量産車採用!
つまり、e-POWERのキックスは日本そのほか低速交通環境用で、欧州用のジュークとはっきり作り分けられるわけだ。ルノーはこのEテックハイブリッドを「ディーゼルの代替パワーユニット」と考えている。
と聞いても、日本人としてはややピンとこない部分があった。130km/h以上での高速巡行を得意とする低燃費のハイブリッドなんて、本当にあるのか? と。
スペックを見て、その疑念はますます高まった。Eテックハイブリッドのガソリンエンジンは、最高出力94hp/最大トルク148Nmの日産製1.6L直列4気筒。そこに日産製の駆動用モーター(49hp/205Nm)と、ルノー製のスタータージェネレーター(15kW)が組み合わされる。バッテリーは1.2kWhの水冷式だ。「水冷」はともかくとして、容量はキックスの1.47kWhを下回っている。
しかも、エンジンとモーターのパワー/トルクを合計すると、プリウスのソレと大差ない(スタータージェネレーターは動力源としては使用しない)。これで本当に高速巡行が得意なのか?
ルノーによると、キモはギアボックスにある。エンジン4段とモーター2段のギアを持ち、レーシングテクノロジー由来のドッグクラッチを使用して最適に制御する。なにしろドグクラッチだから滑りはゼロ。低速域ではモーター中心、高速域ではエンジン中心に駆動輪と直結する結果、パワーも燃費も現行のガソリンエンジン車に比べ、大幅アップを実現したという。
■数字で見るEテックハイブリッドの実力
このEテックハイブリッドを搭載したルノーアルカナと、日産キックスのWLTCモード燃費を比較してみよう。
●アルカナ
WLTCモード22.8km/L
市街地モード19.6km/L
郊外モード 24.1km/L
高速道路モード 23.5km/L
●キックス
WLTCモード 21.6km/L
市街地モード 26.8km/L
郊外モード 20.2km/L
高速道路モード 20.8km/L
確かにアルカナは郊外や高速道路モードが得意。さすがに市街地モードはキックスが上だが、総合でもアルカナはキックスをやや上回っている。サイズはアルカナのほうがひと回り大きく、重量もアルカナ(1470kg)のほうがキックス(1350kg)より重い。
それを考えると、Eテックハイブリッドの実力は本物かもしれない……。
■ダイレクト感のある痛快な加減速!
実際にアルカナに乗って見ると、その走りは衝撃だった。
低速域ではほぼEVとして走り、加減速ともかなり痛快だ。さすがに「ほぼEV」のe-POWERには負けるが、遊星ギアを使ったTHSよりもはるかにダイレクト感があり、アクセルを踏み込めば、EV的な加速が味わえる。
そして高速域。これまたルノーの主張どおりだった。日産製の1.6Lエンジンは、ドグクラッチによって駆動輪に直結されている。パワーは94psなので大したことはないが、アクセルを踏み込めば4段ギアのキックダウンが行われるし、2段ギアを持つモーターのアシストもしっかり乗る。新東名の120km/h巡行中でも、アクセルを踏み込めばディーゼルターボのようにググッと加速してくれた。
それでいて、燃費もなかなか良好だ。平均して20km/L弱、新東名の120km/h区間で17km/L。数値自体は驚くようなものではないが、「あの加速でこの燃費!?」という衝撃は充分あった。
コメント
コメントの使い方