なぜトヨタよりも利益が出るのか!? 「テスラ最強伝説」のワケを探る!

■弱点は品質と顧客サポート

テスラは少々の不具合については、まるで電子機器業界のように「それは仕様です」で押し通してきた
テスラは少々の不具合については、まるで電子機器業界のように「それは仕様です」で押し通してきた

 テスラの懸念材料は株価や原材料高騰以外にある。まずは品質と顧客サポート。上海やブランデンブルクなどの新鋭工場が稼働したことでテスラ車の品質は大きく向上しているとの評価が出始めているが、それでも既存の自動車メーカーに比べれば品質安定性はまだまだ低い。

 顧客サポートが不親切というのも国を問わず顧客が品質とともに不満点として挙げるポイントだ。テスラは少々の不具合については電子機器業界のように「それは仕様です」で突っ張り通してきたきらいがある。

 が、昨年に中国で顧客サービスの不備からバッシングが発生した時には実に素直に謝罪した。別に顧客のクレームに耳を貸さないというのが社是というわけではないのならば、中国以外の国でも変に格好をつけず顧客と誠実に向き合う姿勢に転換してもいいはずだ。

 それができるかどうかは将来的にテスラのブランド力の維持拡大を左右する重要なファクターと言える。

■テスラの今後はイーロン・マスクCEO次第?

 そして、テスラにとって思わぬ逆風として浮上しているのが「ESG」。

 この耳慣れない言葉は近年のSDGs(持続可能な開発目標)の流れのなかで生まれたもので、企業を「環境」(Environment)、「社会」(Social)、「企業統治」(Governance)の三点を数値化し、売り上げや営業利益、借金や資産などといった従来の業績指標と同様に投資判断に使われるスコアである。

 そんなもの環境以外は数値化不可能ではないかと思われるかもしれないが、欧米ではすでにこのスコアを折り込んだ投資銘柄の推奨が広がっており、格付け機関にとっては次の金儲けのネタになっている。

 アメリカの株価指数のひとつにESGが優れている企業で構成される「S&P500 ESG」があるが、テスラはそこから「出禁」を食らった。

 指数を決めるBEV100%メーカーとして環境面では高い評価に値するとされる半面、工場での人種差別問題(裁判所に提訴された段階で、実際にあったかどうかは確定していない)、自動運転システム使用中の事故に関するアメリカ運輸省の調査への対応のまずさなどが問題視されたと報じられている。

 マスク氏はこれに「ESGは詐欺だ」などと反発。

 ESGについて評価の恣意性が問題視されているのは事実で、それを内心面白く思っていない多くの人々の喝采を浴びているが、投資に社会正義を折り込むポーズを見せなければならないと考える投資家や投資顧問たちはテスラ株への投資にブレーキをかけることになるかもしれない。

 どんなにテスラが優秀でも投資が集まらなければマスク氏が思い描くような成長は見込めなくなってしまう。

 急成長を遂げる一方、課題も山積という感があるテスラ。どういうクルマを作るかという商品企画やどういうふうにクルマを作るかという生産技術など、本業の足腰の強さについては現時点で折り紙付きという感があるが、企業経営については希代の山師イーロン・マスク氏のセンス頼みという部分が大きい。

 マスク氏の要らない強気が裏目に出たり、次の時代の嗅覚が鈍ったりしたにテスラがどういう局面を迎えることになるのか時は、まだ誰にもわからない。

【画像ギャラリー】イーロン・マスク率いるEVの黒船、テスラがラインナップするスタイリッシュな電気自動車たち(24枚)画像ギャラリー

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